医療法人徳洲会グループから現金5千万円をもらったか、借りたか、していた猪瀬東京都知事が辞任することになった。5千万円で知事の職を棒にふったとはわりのあわぬ話だ。
5千万円は知事選出馬を表明した猪瀬に対する日本風歓待精神に満ちた徳洲会の「お・も・て・な・し」だったが、思いがけない風の吹き回しで猪瀬は知事の職を棒に振ることになった。
戦後日本の政治史は疑獄の歴史でもあるので、半世紀以上にわたって日本の新聞を読んできている我々の世代は、この程度の腐敗ではびっくりしない。
田中角栄のロッキード汚職のさいの現金授受は億単位だったし、自民党のボス・金丸信は佐川急便から5億円の政治献金を受けた。別の脱税容疑で家宅捜索を受けたとき、金丸邸の金庫から金塊や数十億の債券が出て来た。
猪瀬に5千万円を現ナマで手渡した徳洲会は、これまでの新聞報道によると、徳田虎雄前理事長の息子で衆院議員の徳田毅を通して、2012年には、自民党議員93人を含む、少なくとも97人の国会議員に、献金やパーティー券購入、貸付金の形で計1000万円以上を提供していた。ただし、この金額は政治資金収支報告書に記載されている金額で、猪瀬に手渡された5千万円のような金の記録は当然のことながら記載されていない。
自民党の陣笠議員だった徳田毅が先輩・同僚議員に金を配るというのも妙な話だ。自民党の派閥では、餅代などと称して、ボスが子分の議員に金を配るのがならいだった。
これは徳田毅の職業を国会議員だと考えるから変に見えるのであって、徳田毅が医療法人徳洲会グループの権益を守り、拡大するためにグループによってよって国会に送り込まれたメッセンジャーと考えればすんなり理解できるだろう。
政治をクリーンにしようと政党交付金の制度がつくられたが、どうやら泥棒に追い銭だったようである。
司直の手がいつごろ猪瀬にのびるのか、徳洲会グループの現ナマ攻勢の実態がどこまで解明されるのか、来年の楽しみである。
(2013.12.22 花崎泰雄)