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news commentary

そろいもそろって、脇の甘さよ

2015-06-19 11:55:14 | Weblog

安保法制審議に関連して、自民党側からお粗末な発言が相次いでいる。

①安倍晋三・内閣総理大臣「国際情勢にも目をつぶって従来の(憲法)解釈に固執するのは政治家としての責任放棄だ」(朝日新聞朝刊6月19日付が伝える、6月18日、衆院予算委員会での発言。

②長谷部恭男・早大教授を6月4日の憲法審査会に参考人招致使徒ことについて、自民党の船田元・筆頭幹事が「安心して選んでしまった。正直、我々のミスだ。最初に人選した方が都合が悪く、二番手になって急きょ決めざるをえなかった」とBS日テレで発言した(朝日新聞朝刊6月19日付)

③菅義偉官房長官は「『違憲じゃない』という著名な憲法学者もいっぱいいる」と答えたが、その名前を問われて3人しか挙げられず、「私は数ではないと思いますよ」と答えざるを得なかった(朝日新聞朝刊6月17日付)

発言①については、憲法学者の側から次のような発言が出てくるだろう。「憲法解釈の論理に目をつぶって、国際情勢を引合いに解釈改憲を認めることは憲法学者としての責任放棄だ」。安倍氏の発言は、政治家としての自己の心情と認識をまっとうするためであれば、これまで積み上げられてきた憲法解釈にとらわれるべきではない、と言っているに等しく、憲法順守義務を課せられた内閣総理大臣として、脇の甘さが見える。東方の3賢者ならなぬ、3憲法学者に対する敵意をあらわにする中で、ついもらした本音。

発言②については、長谷部教授はすでに2014年7月6日の朝日新聞で、杉田敦・法政大学教授と対談したさい、「憲法解釈を、閣議決定で変えたことも問題です」「内閣法制局が先頭に立って『違憲』の法律を作るという国は珍しい」と発言している。長谷部教授の人選は自民党のミスだが、船田氏のいうように「想定外のアクシデント」ではなかった。新聞を読んでいなかった船田氏と、自民党の知恵のなさがもたらした当然の帰結だ。それはさておき、長谷部教授の人選が2番手であると楽屋話をテレビで公言するのは、長谷部教授の発言内容を貶める狙いだろうが、失礼な話である。さらに、船田発言は、参考人招致が意見拝聴ではなく、党利党略のための「ヤラセ」であることをも、公言したようなものであった。

発言③については、「問うに落ちず、語るに落ちる」と昔から言うが、不祥事が発生するたびに菅官房長官が繰り返した「問題ない」「問題ない」「問題ない」も、その程度の事実認識にもとづいた発言であったのかと、広く認識させるに十分な脇の甘さであった。

(2015.6.19 花崎泰雄)


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