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合衆国憲法修正第2条

2024-07-15 23:53:42 | 国際

「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保蔵しまた携帯する権利は、これを侵してはならない」。この条文が米国の憲法修正第2条に入れられたのは1791年のことである(『世界憲法集第3版』岩波文庫)。

1791年は日本の年号でいうと寛政3年、11代将軍徳川家斉の時代である。米国でも日本でも先込め式の単発小銃が使われていたころだ。米国で連発式の小銃が使われるようになったのは19世紀に入ってからである。

2024年7月13日の米国ペンシルベニア州バトラーで、元合衆国大統領で11月の大統領選挙の共和党候補者であるドナルド・トランプ氏が狙撃された。銃弾はトランプ氏の顔をかすめ、同氏は耳にけがをした。選挙集会に参加していた1人が巻き添えで死亡、2人が重傷を負った。使われた銃は殺傷能力の高いセミオートマチックのAR-15型ライフル。短時間に複数の銃弾を放った。狙撃者とトランプ氏の距離は100メートル以上あった。

この「7月の銃声」がこれから先の世界にどんな悪夢を呼び込むことになるのか。誰にもわからない。

トランプ氏の政治の舞台への登場が米国の分断をもたらしたのか、米国の分断を利用してトランプ氏が上昇気流に乗ったのか。歴史家の綿密な資料収集と分析が待たれる。

さて、ケネディ大統領が暗殺され、その弟のロバート・ケネディ氏も銃撃されて死んだ。レーガン大統領も銃撃されたが、負傷で済んだ。キング牧師も銃で撃たれて死んだ。ジョン・レノン氏も銃撃されて死亡した。2022年5月に米テキサス州ロッブ小学校で生徒19人と教師2人が殺された銃撃事件をはじめ、公共の場所での銃乱射事件がアメリカでは多発している。

アメリカの銃撃事件の最大の原因は銃が身近なところにあることだ。そしてアメリカ人の相当部分が、銃撃による流血と死は合衆国憲法の1791年の修正条文を尊重し維持するための犠牲であるとの考え方を受け入れているからである。

(2024.7.15 花崎泰雄)

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