はせがわクリニック奮闘記

糖質制限、湿潤療法で奮闘中です。
パーキンソン病にはグルタチオン点滴を
癌には高濃度ビタミンC点滴も施行中です。

月下上海

2013年10月01日 | 読書


最近売り出し中の山口恵以子の作品で、松本清張賞を受賞しています。
財閥令嬢で長身の美人、才気煥発で職業は画家という、スーパースター的な女性が主人公です。
舞台は昭和17年から終戦後までの上海です。
まあ、面白く読み終えることができたのですが、この作品をどのようなジャンルに入れるのか迷ってしまいます。
帯の宣伝には悲恋歌(エレジー)とありましたが、内容はかなり複雑です。
どの男性とのエレジーなのかも、よく分かりません。
ネタバレは避けますが、男と女が愛し合ったが結局は結ばれずに終わったなどという単純なストーリーではありません。

この作品の面白さは、ヒロインに与えられた魅力的なキャラクターにつきると思います。
理知的で意志が強く、正義感と公平さを持ち、自分の気持ちを客観的に分析できるという男性的なキャラと、
女としての、嫉妬や独占欲といった愚かなキャラがあいまっているのです。

写真は表紙のイラストですが、これで随分とイメージが作られて助かりました。
ヒロインが衣装を替えるたびに、その説明が何度も繰り返されるのですが、男性読者としては、いちいちイメージするのは面倒です。
和服以外は表紙のイラストを連想することで代用させていただきました。

作者は女性ですが、男尊女卑の傾向が見え隠れします。
ヒロインの女性的な魅力は、その美貌以外にはとくに強調されません。
性格的な女性らしさは、どちらかと言えばマイナス的な意味合いで表現されます。

また、作者は美男を好み、ブスを嫌います。
ヒロインの別れた夫はフランス女性とのハーフの美男子ですし、つきまとってくる憲兵隊員にいたっては、
美貌を隠すために、髪も髭もボサボサにして、ダサいメガネをかけているという設定です。
父親の後妻は宮家から嫁いできたのですが、その顔を、”べったらづけ”と表現します。
また、夫の浮気相手を、”焦げたジャガイモのコロッケみたい”と表現します。

お薦め度は80%くらいでしょうか.....