10月17日に発売された新刊です。
著者、夏井陸は東北大学出身の形成外科医で、現在は練馬光が丘病院「傷の治療センター」長です。
”傷は消毒するな、乾かすな。”という、”湿潤療法”の提唱者で、”新しい創傷治療”というホームページを立ち上げておられます。
夏井先生は一昨年の暮れに江部先生の”糖質制限”に出会い、すぐに自分で実践されました。
そして、その素晴らしい効果に感動して自分のホームページで紹介を始められました。
現在でもそうですが、そのホームページには糖質制限の成功者達からの投稿が絶えません。
糖質制限を広く世に知らしめた、陰の火付け役とも言われています。
この本は8つの章で構成されています。
第1章:やってみてわかった糖質制限の魅力
第2章:糖質制限の基礎知識
第3章:糖質制限にかかわるさまざまな問題
第4章:糖質セイゲニスト、かく語りき
第5章:糖質制限すると見えてくるもの
”歯に衣着せぬ”と表現したくなるような、素晴らしい文章力に惚れ惚れとしますが、ここまでは単なるプレリュードに過ぎません。
第6章:浮かび上がる「食物のカロリー数」をめぐる諸問題
この章から生物学、栄養学、動物の進化など糖質制限からは逸脱してしまいます。
しかし、面白さは加速していきます。
第7章:ブドウ糖から見えてくる生命体の進化と諸相
この章では地球の生命体の起源と進化が記されますが、かなり仮説的になってきます。
しかし、ダイナッミックで簡潔な文章に引き込まれてしまって、難解な内容ですが、読み止めるのは不可能です。
第8章:糖質制限から見た農耕の起源
夏井節とでも呼びたくなるようなパワー全開の最終章です。
最後の数ページは、科学ではなくて、”文学でしょう”と評価したくなる文章がでてきますので、一部をアップしてみます。
私たちはそろそろ、穀物という老俳優が「神」という配役名を捨てて、「美味だが摂取しなくていい食材の一つ」
という本来の配役名に戻り、舞台から静かに消えていくのを、感謝の念を持って拍手で見送るべき時期に来ている。