ふいに足が止まった。
なにか目に入ったのだ。
見やると、
カラフルな観光旅行のパンフレットを、
差し込んだスタンドがある。
京都・嵐山の観光案内が、私の目を奪った。
懐かしい気持ちにそそられ手に取った。
京都観光名所のカラー写真が、
記憶にある光景と重なる。
冬枯れた嵐山・渡月橋を、
寄り添い寒さをしのぎ、
黙々と歩く二人……。
付きあっていた彼女が妊娠したので、
周囲が奔走、
結婚が急遽決まった。
当時、
ちいさな喫茶店を営んでいた私は、
常に商売優先。
結婚式も新婚旅行も、
考える余裕はなかった。
「奥さんのために、
結婚式も新婚旅行もやってあげなきゃ駄目だ。
それが男の責任だぞ」
昔気質な父の言葉。
無視はできなかった。
結婚式は父が急遽見つけた古い神社で済ませ、
新婚旅行は、
それでも妻と二人で決めた。
決めたというより、
親や友人たちの手前、
旅に出たと繕うためだったのだ。
盛大な見送りを受け、
新幹線で出発。
近場の神戸ポートピアホテルに落ち着いた。
「もう帰ろうか?」
私の気持ちを気遣う妻の顔を見ると、
とてもそんな気になれなかった。
愛する妻なのだ。
「京都へ行こう。
嵐山は君が行きたがってたとこだから。
それに二人一緒だと楽しいよ」
足を向けた京都嵐山は、
寒々としたシーズンオフのさなか。
寒い中、
身重の妻と歩いた。
ただひたすら、
人影のない名所旧跡を……。
(あいつ、
何も言わず笑顔でいたけど、
きっとわびしい思いしてたんだろうな……)
もう一度パンフレットに目を移した。
そして決めた。
妻と桜満開の嵐山を歩こう。
三十六年目、
新婚旅行をやり直すのだ。
寒さが厳しい中、
京都観光(?)を我慢強く共にしてくれた妻。
おなかの赤ちゃんと親子三人、
初めての旅だった。
あの日に知った妻の優しさと思いやりが、
四人の子に恵まれた幸福な家庭を、
身勝手な男にくれたのだ。
今度は私。
愛をこめたふたり旅を贈ろう!
なにか目に入ったのだ。
見やると、
カラフルな観光旅行のパンフレットを、
差し込んだスタンドがある。
京都・嵐山の観光案内が、私の目を奪った。
懐かしい気持ちにそそられ手に取った。
京都観光名所のカラー写真が、
記憶にある光景と重なる。
冬枯れた嵐山・渡月橋を、
寄り添い寒さをしのぎ、
黙々と歩く二人……。
付きあっていた彼女が妊娠したので、
周囲が奔走、
結婚が急遽決まった。
当時、
ちいさな喫茶店を営んでいた私は、
常に商売優先。
結婚式も新婚旅行も、
考える余裕はなかった。
「奥さんのために、
結婚式も新婚旅行もやってあげなきゃ駄目だ。
それが男の責任だぞ」
昔気質な父の言葉。
無視はできなかった。
結婚式は父が急遽見つけた古い神社で済ませ、
新婚旅行は、
それでも妻と二人で決めた。
決めたというより、
親や友人たちの手前、
旅に出たと繕うためだったのだ。
盛大な見送りを受け、
新幹線で出発。
近場の神戸ポートピアホテルに落ち着いた。
「もう帰ろうか?」
私の気持ちを気遣う妻の顔を見ると、
とてもそんな気になれなかった。
愛する妻なのだ。
「京都へ行こう。
嵐山は君が行きたがってたとこだから。
それに二人一緒だと楽しいよ」
足を向けた京都嵐山は、
寒々としたシーズンオフのさなか。
寒い中、
身重の妻と歩いた。
ただひたすら、
人影のない名所旧跡を……。
(あいつ、
何も言わず笑顔でいたけど、
きっとわびしい思いしてたんだろうな……)
もう一度パンフレットに目を移した。
そして決めた。
妻と桜満開の嵐山を歩こう。
三十六年目、
新婚旅行をやり直すのだ。
寒さが厳しい中、
京都観光(?)を我慢強く共にしてくれた妻。
おなかの赤ちゃんと親子三人、
初めての旅だった。
あの日に知った妻の優しさと思いやりが、
四人の子に恵まれた幸福な家庭を、
身勝手な男にくれたのだ。
今度は私。
愛をこめたふたり旅を贈ろう!
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