こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

ふるさと

2015年11月10日 00時59分39秒 | 文芸
播州歌舞伎発祥の地、わが町加西市。播磨風土記に記された歴史を彩るヒロイン根日女。古墳に眠る美女伝説を芝居にしたのは、四十代後半。市外で三十年近くアマチュア劇団活動に没頭した私は、故郷に錦を飾ったのだ。
 声をかけたのは、地元の活性化に励む青年会議所のメンバー。「ぜひ、あなたの故郷に演劇文化を根付かせて頂きたい」と懇願された。
 実は生まれ育って四十数年の故郷だが、播磨風土記や歴史ある古墳群など郷土の知識は皆無だった。あろうことか、演劇に打ち込みながら、播州歌舞伎発祥の地に住んでいることすら知らずにいた。情けない限りである。
 一念発起、加西の地を自分の五感で確かめ、その魅力を発掘することから芝居作りをスタートさせた。文献をあさり、古跡を巡る。昔をよく知る古老を訪ね歩き、話を聞いた。
 驚きの連続である。わが故郷に、これほど豊かで素晴らしい歴史と伝承があった!
「わしらの王女さまを、お願いしますわ」
 ある古老の言葉。古代の美しきヒロイン『根日女』へ地元民の素朴な慕情。熱く強い。
 半年近く『根日女』と向き合った。脚本を書き、演出に全精力を注ぐ。集った市民メンバーは二十数人。他に「何でもいいから、ぜひ手伝いたい」と五十人近い参加者。その熱気の凄さ。溢れる郷土愛に呑みこまれた。
 知れば知るほど、やればやるほど、加西の魅力は無限に思えた。故郷を愛する熱い自我が、ようやく芽生えはじめるのを悟った。
「……この賀茂(大和朝廷時代の加西市)の大地を、豊かな山里を、住む民人を愛することから、すべてを始めましょう!」
 大和の皇子に向ける愛より、身近にある故郷のすべてを愛する大事さを、『根日女』に語らせた瞬間、加西は私の『故郷』となった。
 万雷の拍手の中、降りた幕の向こう。演じた者、裏方に徹したもの、誰も彼も、新たに得た郷土愛の感動を共有する最高の日だ。
古里は近くにありて、つかむものだった!

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