阿武隈川上流
名を知らない野花
野花を知らない無知な私は
名もない野花と呟くけれど
名がない野花はない
名を知らない野花は
名を呼ばれることもなく
岸辺に咲いていた野花は寂しそう
名もない野花としか見られず
人間から疎まれ嫌われ
草刈機で根本から殺戮され
刈り取られたままの野花は悲しそう
岸辺に咲く 名を知らない野花
あなたがそこに咲いているだけで
私の不安、憂鬱な気持ちを癒してくれた
名を知らない野花は微笑んだ
一年後 岸辺を訪れ
名を知らない野花と呼ぶことなく
あなたの真実(ほんとう)の名を呼ぶ
名を知らない野花は「待っているよ」と呟いた