老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1274;昔の石油ストーブは危険がいっぱい(再掲)

2019-11-07 20:00:22 | 老いの光影 第5章
yahooの画像より引用


昔の石油ストーブは危険がいっぱい(一部書き直しをしています)

「アクセスされたブログ」や「このブログの人気記事」に
『昔の石油ストーブは危険がいっぱい』の記事が 静かに読まれている(嬉しいかぎりである)
枯葉散る頃 寒くなり、暖房器具が恋人にように愛しく、暖房器具から離れることができなくなる
しかし 昔の石油スターブは 使い勝手がよく 温もりを感じるのだが・・・・


在宅訪問に行くと
俗に言う昔タイプの石油ストーブが
赤々と点いている
85歳以上のひとり暮らし老人や老夫婦暮らしでは
よく使われている

いまどきの温風ヒーターに比べ
石油ストーブは多機能の特徴性をもっており
便利なのだ

ストーブの上に「やかん」を乗せ
お湯を沸かすことができるし
湯気がでるので、加湿器の働きもする

味噌汁鍋や煮物が入った鍋を乗せたりして
煮炊きもできるのが最高

暮れから正月になると
網をのせ餅を焼いたりする

このように確かに便利であり
重宝がられている一方で
危険も隣り合わせにある


やかんなどが乗っていると
危険がいっぱい
心配が重なってしまう。

足元がふらついたとき
やかんのとってに手が触れ
やかんがひっくり返ったとき
熱湯で火傷! 
その場面を想像してしまうと
いてもたってもいられない

老人につい苦言してしまう
「できればやかんは乗せないほうがいいんだけどなあ~」
でも、その一言で終わってしまう

やかんを乗せなければ、乗せないで別の心配が出てくる
ふらついたときにストーブの熱い天板(上面)に手が着いてしまう
(人間の癖でバランスを崩したとき転ぶのを防ごうと手を着く習性がある)
これもまた大火傷の事故

火傷防止するということで金網で囲いをすると
ないよりは安全だが、それを手すり代わりにつかまると
囲いごと倒れ火傷,骨折の心配は残る

また囲いに洗濯した衣類をかけ
洗濯干しをする老人もいる
これもまた、火災の心配をしてしまう

温風ヒーターの方が危険のリスクはぐ~んと減る
「温風ヒーターに変えた方がいいな~」とは、老人には言えない

息子、娘たちが、ときどき実家を訪れたり、帰省したときに
息子、娘たちは、半ば強引に温風ヒーターを置き
旧式の石油ストーブを引き上げ、持ち返るくらいでないと
昔の石油ストーブは茶の間からは消えない


冬のニュース
それも毎年正月のニュースでは
火事で老人は焼死体として発見され、痛ましい事故に遭遇する
石油ストーブが出火原因であったりする

ひとり暮らしの老人が
石油タンクに灯油を入れるのは
本当に危なっかしい
こぼしたり溢れたり
またストーブを点けたまま灯油を入れたり
想像つかないようなことをしている

在宅訪問のときは
灯油が半分以下になっていたら
おせっかいやきになるが
灯油を入れて帰る

またデイサービスや訪問介護の事業所で協力を頂けるところは
送迎(送ったとき)時や訪問時に灯油の残量を確認し
少ないときは入れて頂いていいる

寒いと人間は 心がわびしく寂しくなるものだ
寒さと飢えほど残酷で辛すぎる

1273;時間がざざらざらと私からこぼれる

2019-11-07 05:11:34 | 読む 聞く 見る
時間がざざらざらと私からこぼれる

高見順『死の淵より』講談社 文芸文庫 の94頁に
「過去の空間」がある。

『死の淵より』に邂逅したのは 32歳のときだった

「過去の空間」の最初の連に

手ですくった砂が
痩せ細った指のすきまから洩れるように
時間がざらざらと私からこぼれる
残り少ない大事な時間が


咽頭癌を患い死を宣告された
作家 高見順

夏 海辺で子どもと砂遊びに戯れたとき
砂山や砂の器など作ったことを思い出す
そのとき指のすきまから砂が洩れ落ちる
何度も何度も手で砂をすくい砂の山をつくり
次に砂山の下を掘りトンネルづくりに挑む


高見順の場合
手ですくった砂が
癌で痩せ細った指のすきまから
ざらざらとこぼれ落ちる

砂時計の砂がさらさらと流れ落ちてゆく様は
指のすきまからこぼれ落ちる風景に似ている

指のすきまから落ちゆく砂も
砂時計の砂が流れ落ちてゆくのも
残り少ない砂は時間を意味する

残り少ない大事な時間が 
無常の潮風となり消えてゆく