老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1285;弄便(ろうべん)

2019-11-16 05:11:38 | 老いの光影 第8章 認知症老人の世界
弄便(ろうべん)

弄便(ろうべん)という言葉は
日常生活のなかで使わない
「弄便」は読んで字の如く 便を弄(いじ)る、あるいは弄(もてあそ)ぶ、ということになる

認知症老人にしてみれば
便を弄ったり弄んだりしている訳ではなく
それぞれの行為には意味があるのかもしれない


90歳を越えた千代婆さんは
掌に便をのせ 上手にまるめ”おはぎ(ぼた餅)”を作り、
どうぞ、と差し出してくれる


精神障害と認知症のダブルの三重婆さんは
洋式便器に坐り
肛門近くまで便が来ている
なかなか出そうで出ない
これほど落ち着かないものはない

八重婆さんは自分の指を肛門に突っ込み
便を取り出す(摘便)
指や肛門の回りや便器など
そこらじゅう便だらけ

介護職員をトイレのなかに入れさせてくれない
きれいにしようと思っても
抵抗、拒否するから困ってしまう


平三爺さん
軟便が多く
長男夫婦と同居をしているのだが
あまり面倒を見ない
実質的ひとり暮らしにある彼

傷んだおかずや変な臭いがしたおかずも食べてしまうため
下痢することもある

トイレに間に合わず便付着のまま車に乗る
排便した後 お尻を拭かないでてくる
拭くよう、言葉をかけるも
排便後に拭くということを忘れてしまったのか


トイレに行くのが面倒な怠け者婆さん
元小学校の先生をしていた都志婆さんは
仰向けの状態で排便をする
畳、蒲団の上は便だらけ
背中まで便が付着

便が着いた指で 冷蔵庫を開け食べ物を取り出し食べている

弄便(ろうべん)は手がかかり 
どうしたら弄便がなくなるのか
悩みは続く