春陽
1834 戻ることができない
人間は外に出たがる生き物
コロナウイルス禍は老人にも大きな影を映し出している
家族から「外に出てはいけない」、と話され
「閉じこもり」の状態が続いている。
そのせいか、言葉を忘れ、足の筋力は衰え
うつ的傾向や認知症の症状が出てきている
人混みのなかでなければ、外へ出よう
春の風が吹き始め
福寿草が咲き始めた。
認知症老人も外にでたがる。
出たがるときは、一緒に外へ出て春の風を感じてみようか。
認知症老人は「徘徊」する、と言われる。
「徘徊」という言葉は、自分は好まない。
徘徊の意味は、目的もなく歩く。
目的のない歩きはない。
認知症老人は路に迷って、家に帰れなくなり
予想もつかない処で発見されたりする。
認知症老人は、路を真っ直ぐ進むか、左右に曲がり歩き進むが、
戻る、引き返すことができない。
時間も人生も戻ることができない。
路に迷い、歩けども歩けども家につかないとき
不安が募り、どうしていいのかわからなくなってしまう。
発見され、見覚えのある家(施設)に帰ってきたときは、ホッとするのもつかの間
家族や施設職員から「心配したよ。何処歩いていたの」、と叱られてしまう。
認知症老人はこころのなかでは、申し訳ない、と思っている。
冬ならば、「寒かっただろう、お茶でも飲みな」、とお茶を差し出すだけでいい
夏のときは、暑さで喉が乾いている。「冷たい水」を出す。
それだけで、認知症老人の気持ちは落ち着く。