老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

「徘徊」老人の思い

2022-03-05 08:37:57 | 老いの光影 第7章 「老人のねがい」

春陽

1834 戻ることができない

人間は外に出たがる生き物
コロナウイルス禍は老人にも大きな影を映し出している
家族から「外に出てはいけない」、と話され
「閉じこもり」の状態が続いている。

そのせいか、言葉を忘れ、足の筋力は衰え
うつ的傾向や認知症の症状が出てきている

人混みのなかでなければ、外へ出よう
春の風が吹き始め
福寿草が咲き始めた。

認知症老人も外にでたがる。
出たがるときは、一緒に外へ出て春の風を感じてみようか。

認知症老人は「徘徊」する、と言われる。
「徘徊」という言葉は、自分は好まない。
徘徊の意味は、目的もなく歩く。
目的のない歩きはない。

認知症老人は路に迷って、家に帰れなくなり
予想もつかない処で発見されたりする。

認知症老人は、路を真っ直ぐ進むか、左右に曲がり歩き進むが、
戻る、引き返すことができない。

時間も人生も戻ることができない。

路に迷い、歩けども歩けども家につかないとき
不安が募り、どうしていいのかわからなくなってしまう。
発見され、見覚えのある家(施設)に帰ってきたときは、ホッとするのもつかの間
家族や施設職員から「心配したよ。何処歩いていたの」、と叱られてしまう。

認知症老人はこころのなかでは、申し訳ない、と思っている。
冬ならば、「寒かっただろう、お茶でも飲みな」、とお茶を差し出すだけでいい
夏のときは、暑さで喉が乾いている。「冷たい水」を出す。
それだけで、認知症老人の気持ちは落ち着く。