老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

主体者は誰か

2022-03-11 07:28:58 | 老いの光影 第7章 「老人のねがい」


早朝風景

1840 手につかまり歩く

老いて足元がふらつき転倒してしまうのではないかと
娘は老母の手首をつかみ足速に歩く

母親に比べ歩幅の小さい幼児は
歩幅が合わず走り歩きのようになり
阿吽の呼吸がとれず 躓き転んでしまい
路端にしゃがみ込み泣いてしまう

老母も同じく娘の足に追いついていけない
幼児と同じく「ゆっくり歩いて」、と訴えることもできない
手首をつかまれた人に合わせて歩かねばならない

老母が娘の手を握る
娘の足が速くなり、自分の足が追いついていかなくなり
転びそうになる前に、老母は娘の手を離す

歩行介助の主体者(主役)は誰か
(介護の主体者は誰か。利用者(老人)であると介護のテキストに書いてある)
老母や幼児が主体者
歩行の場合、手を握るのは老母である

介護者に手をつかまれ、転びそうになり「危ない」、と思っても
自分の身体を守ることができない
娘(介護者)先に歩いているので、後ろの状況がわからない
転ぶ音がしてはじめて振り向く

手を引かれるときは、相手に命を預けるのではなく
自ら相手の手を握り歩行の助けを願う

些細なことのように見えるが
実は大切なことなのかもしれない