老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

いちばん大切なものは何か

2022-03-18 16:45:20 | 読む 聞く 見る
1849 人間死んだら☆彡(星)になるんだよ

いちばん大切なものは何か

子ども心にまだあの世に逝っていない大人から「人間死んだら☆彡(星)になるんだよ」と。
本当にそうだったら素敵な話です。
死んだら星となって輝き 天から大切な人を見守り続けることができたらどんなによいか。



「星の王子様」(新潮文庫)は 大切なものを失ってはじめてわかります。
あなたにとって“いちばん大切なものはなんですか。
病気になってはじめて健康のありがたさがわかります。
大切な人を失ってはじめてかけがえのない人だったことが身に染みてわかります。

自分という人間が死んだら、棺に収められます。
棺はダンボール製がいいな、そのときは納棺師をお願いし 人生の最期においても取繕い美しく逝きたいものです。

白髪の女性老人と一緒に茨城県の笠間焼を見に行ったときのことです。
彼女は湯呑茶碗を手にし、「陶芸の窯で骨を焼いたら何色になるのかな」と話されたとき、
傍らにいた私は「ドッキ」としたことをいまでも覚えています。
同時に、凄い発想! 認知症老人は、思いもつかない言葉が出てきます。



渡辺淳一の小説『泪壺(なみだつぼ)』(講談社文庫)のなかで、
妻の愁子(36)が乳癌を患い肺に転移し、若さ故に癌の進行を早め桜の咲く頃に「あと1月」と宣告されたのです。
愁子は夫雄介に『いつまでも忘れないように・・わたしの骨でつくった壺を・・・・あなたの側にいつもおいていて欲しいの』とお願いをします。

雄介は、妻の遺骨の一部を乳鉢で骨粉にしました。
会津に窯場をもつ知人の陶芸家 斯波宗吉にお願いし、妻の遺灰と粘土を半々に混ぜ、白くたおやかな壺を造ってもらいました。
その白い泪壺を床の間に飾りました。

火葬場で焼いた骨は 白い煙となって 青空に向かって消えて逝きます。
大切な故人は この世にはもういません。
その寂しさは 心では推し量ることのできない無量の世界にあります。

だから大切な人は星となって光り輝きながら 家族や大切な人を見守ってくれています。
夜空に輝く星の天空の向こう側は 遥かなる宇宙であり それは限りなく無辺の世界にあります。
宇宙には無数無名の星が無量ほどあり 
そのなかにある”地球“という惑星(ほし)のなかに70億の人間が棲んでいます。
わたしという人間は独りしかいないのです。
宇宙からみたら ・ (点)のような存在ではありますが 星のように光り輝く存在で有ることを。
自信をなくしたときや悲しいときは 星を見上げ元気をいただきます。

生命の終焉から”蝉“のことが思い浮かんできました。
蝉の地上生活はたったの7日間しかありません。
それ故、蝉の生活は儚い と云われますが・・・。
真夏にミンミンと鳴く蝉の響く声は 「我此処に生きていますと・・・」。

宇宙からみたら人間の生命の時間は本当に儚いひと握りの”砂の星“かもしれません。
人間の内なる世界は、宇宙のように無量無辺であり 内なる可能性を秘めています。

だからこそ 侵略戦争で子ども、老人、父母、今日だ姉妹、祖父母、隣人を亡くなること、
それは人間のもつ無限の可能性を奪うことなのです。

老人に在っても同じであり 人間最期の瞬間まで生命の光(あかり)が灯って(ともって)いることを、
人間は 星のように光り輝く存在なのです。