老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

トイレに行く!

2022-03-27 07:36:19 | 老いの光影 第7章 「老人のねがい」


1869 オムツはしたくない

93才のおばあちゃんが腰椎圧迫骨折をした。
4週間の入院予定だったが、
「病院に長く居ると歩けなくなる」、と息子に話し
20日間で退院した。

家(隠居宅)の玄関を入ると
「家はいいなぁ」、と呟いた。
入院中は紙オムツをさせなかった。
「オムツは嫌だ」、と頑なに拒んだ。

看護師は車いすに乗せ、トイレまで連れて行った。
用足しを終えると「ありがとう」、と看護師に礼の言葉を告げる。

家に帰っても床から手すりにつかまり自分で立ち上がる。
炬燵のある居間からトイレまで
息子は手すりをつけた。
手すりを伝いながらトイレまで行く。

「夜は、トイレまで行くのは大変だからオムツにしたら」、と息子夫婦は話すも
「オムツはしたくない、トイレに行く」、と言い張る。
介護用ベッドを降りたら2mほどの平行棒があり
両手で平行棒につかまり寝室の出口まで歩く。

介護用ベッドから襖までは畳であり、手すりがつけられない。
そこで浮かんだのがリハビリで使う平行棒を置いた。
福祉用具貸与により手すり(平行棒)を利用


寝室の先の廊下を渡りトイレのドアに辿り着く。
夜は足元が薄暗く、転んでは大変ということで、
息子は母屋では寝ず、おばあちゃんが寝る隣の部屋で寝ている。
深夜から明け方までの間に5回起きだし、トイレに向かう。
息子はその都度起き、後ろから見守りをしている。

なかなかできないことである。
「夜は大変だから、転んだりして寝たきりになったら、それこそ大変」、と
心配した言葉で紙オムツをさせようとするのが普通である。

頑として「歩けるうちは、トイレに行く」、というおばあちゃんの生きる姿勢に脱帽してしまう。
老母の思いを受け止め、夜トイレにつきあう息子は、そうはいない。