1869 オムツはしたくない
93才のおばあちゃんが腰椎圧迫骨折をした。
4週間の入院予定だったが、
「病院に長く居ると歩けなくなる」、と息子に話し
20日間で退院した。
家(隠居宅)の玄関を入ると
「家はいいなぁ」、と呟いた。
入院中は紙オムツをさせなかった。
「オムツは嫌だ」、と頑なに拒んだ。
看護師は車いすに乗せ、トイレまで連れて行った。
用足しを終えると「ありがとう」、と看護師に礼の言葉を告げる。
家に帰っても床から手すりにつかまり自分で立ち上がる。
炬燵のある居間からトイレまで
息子は手すりをつけた。
手すりを伝いながらトイレまで行く。
「夜は、トイレまで行くのは大変だからオムツにしたら」、と息子夫婦は話すも
「オムツはしたくない、トイレに行く」、と言い張る。
介護用ベッドを降りたら2mほどの平行棒があり
両手で平行棒につかまり寝室の出口まで歩く。
介護用ベッドから襖までは畳であり、手すりがつけられない。
そこで浮かんだのがリハビリで使う平行棒を置いた。
福祉用具貸与により手すり(平行棒)を利用
寝室の先の廊下を渡りトイレのドアに辿り着く。
夜は足元が薄暗く、転んでは大変ということで、
息子は母屋では寝ず、おばあちゃんが寝る隣の部屋で寝ている。
深夜から明け方までの間に5回起きだし、トイレに向かう。
息子はその都度起き、後ろから見守りをしている。
なかなかできないことである。
「夜は大変だから、転んだりして寝たきりになったら、それこそ大変」、と
心配した言葉で紙オムツをさせようとするのが普通である。
頑として「歩けるうちは、トイレに行く」、というおばあちゃんの生きる姿勢に脱帽してしまう。
老母の思いを受け止め、夜トイレにつきあう息子は、そうはいない。