モグサはヨモギの葉から作ります。昔,母がそれを作るのを見て,わたしは育ちました。筵(むしろ)の上で乾かして,手で揉んでいた母のすがたがじつに懐かしく思い出されます。
そのモグサが火起こしのたいせつな道具の一つなのです。
ふつう,それを子どもに使わせるだけで,モグサが何からどうやって作られるか,そんなことを丁寧に教えるおとななどまずいないでしょう。それをやるというのですから,おもしろいと自分でも思います。
ものへのはたらきかけ,原材料の調達,そうしたことを子ども自身が行って,ものを多様に認識することは意味があります。なんでもおとなが揃えて,子どもはいわば“よいところ取り”をする,あるいはおとながそうさせてしまっている現状を,わたしはすこしは嘆きたいと思うのです。
それを反面教師にして,自らが子どもが体験で汗を流し,知恵を育むことを重視したくって,今日(4月11日),モグサ作りをしました。
と,えらそうなことを書きましたが,じつは簡略化したやり方です。冬の間に枯れて今も茎に残る葉を集め,それをミキサーにかけて粉砕するのです。つまり,既に乾燥しているものを,機械の力でモグサにまでしてしまうという手法です。
これはわたしの着眼なのですが,昔なら,まず生葉を乾かす,その後手揉みを繰り返す,そうしながら繊維を集め,おしまいに石臼で処理するという段取りになります。わたしのやり方では,当然,繊維が粉砕されますから,石臼法と比べると格段に質は劣ります。マア,これは止むを得ません。
さて,実際の流れは以下のとおりです。
- 乾燥させた葉をみんなで見る。
- 市販のモグサを提示して,解説する。
- 手で揉んで繊維を観察する。(虫メガネを使用)
- 一部に点火して,種火の様子を観察する。
- ミキサーでモグサを作る。
3の段階で,子どもから「こんな荒い繊維でも火が点くの?」と,質問が出てきました。それを4につないだわけですが,モグサ繊維の細かさ・荒さは着火とは関係ないことがわかって驚いていました。
なにしろたくさんの葉でしたから,1時間という決められてた時間では処理し切れませんでしたが,子どもたちには貴重な実体験になったことでしょう。こういう地味な活動を重ねながら,“ほんもの”との出合いを,大きくいえば生き方の糧にしていってほしいなと願っています。