自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ホウレンソウから紙!

2015-04-24 | 随想

この程,ある方に見本として差し上げたくってホウレンソウ紙を漉きました。別にホウレンソウでなくてもよかったのですが,手っ取り早く紙料にできるということ,畑にたくさんホウレンソウができているということで,これを材料にしました。


アクセスされている方の中に,紙漉きについて興味をお持ちの方があるかもしれません。それで,参考までに作業手順を解説しておきます。

【工程1】ホウレンソウは直立形の植物です。品種改良が重ねられて,繊維がか弱くなっています。この繊維をうまく取り出すのが,ホウレンソウ紙を作るコツです。紙は植物繊維を水で溶いて,絡ませて作るものですから,繊維を取り出すことができたら紙が100%作れるわけです。まず採集した葉(葉柄付き)と茎をきれいに水洗いします。

【工程2】鍋に入れて煮ます。アルカリ剤である炭酸水素ナトリウム(重曹)を少しだけ入れて,からだの分解を助けます。30分も煮れば,セルロース,ヘミセルロース(半セミロース),リグニンが分離します。紙成分として必要なのはこのうちのセルロースです。いくぶんヘミセルロースも入りますが。リグニンは必要ありませんから,できるだけ流し去るように煮ます。しかし,煮過ぎてセルロースが壊れると元も子もありません。わたしたちが漉く紙にリグニンがある程度混ざるのは止むを得ないと心得,繊維をうまく取り出すためにアルカリ強度と煮沸時間を匙加減することになります。


【工程3】
箸でかき混ぜたときに,繊維が絡みつくようになれば火を止めます。水を入れてセルロース繊維を揉み洗いし,バラバラにします(軟らかいのでミキサーを使う必要はありません)。長めの繊維が残っていれば,丈夫な紙になります。

【工程4】バラバラになった繊維をふるいに入れて,流水できれいに洗います。


【工程5】
繊維を水に溶いて紙料とします。このとき,粘剤があれば加えると厚みが均一な紙ができます。なければ何も入れる必要はありません。合成洗剤を入れる例がありますが,大丈夫。入れなくても繊維同士は水の力(水素結合)によって,自ずと密着し合う性質をもっています。溜め漉きの場合,漉き舟に置いた木枠に流し込んで湿紙にします。なお,木枠は2つ必要で,重ねた木枠の下側のものにはステンレス網を張っておきます。

【工程6】ステンレス網に載った湿紙を斜めにしておいて,水切りをして乾かします。やや湿っているときに,刷毛を使って薄い膠液を塗ります。このことで,腰の強い紙になります。もちろん塗らなくても大丈夫です。


【工程7】乾いたら(夏なら2,3時間で十分),カッターナイフで剥がします。その後,紙を板に載せて,ガラス瓶をローラーにしながら両表面を圧縮処理します。そうすると,表面が滑らかな紙ができます。


こうしてでき上がったのが,下のホウレンソウ紙。


裏面も見ておきましょう。


下写真は表面を接写撮影したものです。こんな繊維がわたしたちの食材となってからだの中を通過しているのです。草食性と肉食性を併せ持つヒトの一端が窺えて,愉快になってきます。

 


以上の手順は,子ども,あるいは親子でできる作業です。夏休みになると,ときどき問い合わせが寄せられることがあります。自由研究の材料にしたいという話にかかわる内容です。スイカ紙や象糞紙に発展した例もあります。質問には,基本的には上記の手順に基づいてお答えすることにしています。

さてさて。「このホウレンソウ紙,文字が書けるでしょうか」。もちろん,書けます。「さて折り曲げられるでしょうか」。ウーン,どうかな。弱い繊維だと折れて(割れて)しまうでしょう。「食べられるでしょうか」。もちろん食べられます。ただし,衛生面を考えると,粘剤・膠液を使わなかった紙に限ります。

このホウレンソウ紙,乾いたら元の緑っぽい色が褪せてきました。このまま置いていたら,色はどうなるでしょうか。時間の経過とともに,どんどん褪せていきます。つまり,緑っぽさが失われていくのです。それには紫外線や空気(酸素)が関係しています。

「材料にするホウレンソウを煮ず,生のままミキサーにかけて繊維を取り出して紙が作れないでしょうか」。もちろん作れます。しかし,質は低下します。だって,紙成分としては無駄なリグニンがどっさり含まれているからです。それに,繊維が短くなり過ぎたり,うまく分離できないままだったりしますから。

ホウレンソウをはじめとして野菜を素材にして野菜紙を作るのは,台所の科学として魅力を秘めています。どんな野菜からも,どんな草からも紙が作れるっていう原点に立ちさえすれば,紙の世界はどんどん広がっていきます。

 


ジャコウアゲハ観察記(その335)

2015-04-24 | ジャコウアゲハ

4月24日(金)。晴れ。最低気温6.9℃,最高気温24.7℃。

アゲハの庭園に,ジャコウアゲハが訪れるようになりました。メスは幼虫の食草ウマノスズクサを探す行動を続け,オスはメスを探します。敏く2頭が会うと,もつれ合うようにして空に舞い上がることも。

産卵行動をするメスを目撃。その後,そこを見たのですが,卵は見つかりませんでした。


メスはすぐそばの葉にとまって,しばらく休んでいました。


夕方,近くの葉で卵を1個見つけました。これが我が家で見た,初めての卵です。探せば,まだあるはずです。

さかのぼって,昼間の話。棲息地に行きました。うれしいことに,数個体の成虫を見かけました。産卵行動の後,卵を確認すると一粒。


アゲハの庭園も棲息地も,活気に満ちています。