自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ビニルで蛹化

2014-06-12 | ベニシジミ

植木鉢にスイバとギシギシを植え,そこにベニシジミの幼虫を7個体おいていました。すると,前蛹期が近づいた個体の一部が植木鉢から出たくなったようで,その行動を見せ始めました。観察する者にとっては困るので,行方不明にならないよう穴開きのビニル袋を被せておきました。

そうしたら,外に出ようとする幼虫がビニルにくっ付いて,そこで前蛹になろうとする動きが見えてきました。これを防ぐために,何度かビニルから離して元の場所に戻しました。

ところがそれでも,ビニルで蛹化しても構わないと決心したらしい個体がそこに付いて前蛹になっていたのです。すでにそうなっていては元に戻すわけにはいきません。これも観察の対象としては楽な事例になりそうだと割り切って,記録写真を撮ることにしました。

帯糸でしっかりからだを固定した跡が窺えます。一本の糸は単なる一本なのではなく,極細の糸の集合体であることがわかります。一体何回頭を往復させて作ったのでしょうか。

 
深夜から未明にかけて前蛹になっていました。下写真は朝写したものです。からだの位置はほとんど動いていませんが,帯糸がはっきり後ろ側に移動しています。皮が相当な力で送られていったのでしょう。この糸でからだを固定・安定させるという意味が理解できます。


12時間後。色が激変。紋様もくっきり出ています。無事に成長していくようです。


この調子で羽化を迎え,その場面をタイミングよく観察できたら,そのときは報告します。 結果はいずれ。 

 


ジャガイモの真正種子栽培,本実験(その12)

2014-06-11 | ジャガイモ

植木鉢及びポットのジャガイモ実験について報告しましょう。今回は開始の話です。

ストロンをわざと切断すると,その先に貯蔵されるはずの養分はどこに貯えられるかという確認実験です。これはもう腋芽しか考えられません。第一節から,ストロンが再生されるかもしれませんが,それをも切れば,ストロンではもう貯蔵できないという筋書きになります。これを強引に確認しようというのが実験の趣旨です。

素焼きの植木鉢に,密植状態になった苗を移植していました。

 
その根元を広げて,一本一本についてストロンを確認し,カッターナイフで切断しました。


一方,ポット植えについても15の苗でストロンを切ることにしました。 


まず根元の土を取り除き,ストロンを見ていきます。そうして,慎重に切っていくのです。ついでに,根も見えている範囲で切り取ります。 


何日かすれば結果が出てくるでしょう。空中イモができたときのことを思い浮かべながら,わくわくしています。 

 


ヨコヅナサシガメの捕食行動

2014-06-10 | カメムシ類

そのときは,初めて見て驚き,大したカメムシがいるものだと感心して撮影しました。あとで正体がわかって,「ほほーっ!」とまた感心。

さて,このカメムシとはヨコヅナサシガメ。大きさは横綱級,口吻を獲物に突き刺して体液を吸うといいますから,たいへん攻撃的な性質の持ち主だといえるでしょう。

このカメムシを見かけたのは我が家の庭で,たまたまダンゴムシに口吻を刺していました。ダンゴムシの鎧の隙間からぐっと刺し込むという感じです。体長2cm! ダンゴムシは,例によって危険から身を守るために団子状に丸まっていました。「大きなからだ! それにしても変だ。口が抜けなくなって困っているのかな」と思ったのですが,違っていました。

こんな場面を見たことがなかったので,とにかくその行動を妨げないように注意しながら写真に収めました。結果,これが貴重な記録写真になったのです。


からだは真っ黒。腹部の縁は白。先は少し赤みがかっています。突き出した頭と目の先に,釣竿のように伸びた口吻があります。この口吻がダンゴムシに刺さっていました。それはまるで釣りでもしているかのよう。


あくまで放そうとしません。脚で抱え込むようなしぐさも見られました。


さながら吸血コウモリそっくり。こんなふうにして体液を吸うカメムシがいるとは!

もともとこのカメムシは東南アジアと中心に棲息する外来種で,昭和初期に我が国に入って分布を拡げているのだとか。さらに,口吻で刺されると,激痛を伴うために要注意らしいのです。

それにしても,こんなに威風堂々としたカメムシがいるなんて,驚きです。 

 


ジャコウアゲハ観察記(その314)

2014-06-10 | ジャコウアゲハ

6月4日付け記事『ジャコウアゲハ観察記(その312)』で触れた,露地植えのウマノスズクサについて報告します。

その後,幼虫に食されないように注意して栽培を続けています。結果,蕾がたくさん付いて,順調に開花しています。

ウマノスズクサは蔓性植物で,腋芽が伸びて枝状になります。その枝に蕾ができるので,自ずと「わあー,たくさんの花だ」と思えてきます。要するに,鈴生り状態なのです。

高さは3mにはなっているでしょう。 

 


茎は支柱に巻き付いています。そこから,腋芽が華やかに伸びていきます。 

 


一本の枝には,葉の付け根ごとに花が咲きます。 

 


ウマノスズクサの場合,ほとんどの花が結実にまでは至らないといわれています。しかし,これだけ花が咲けば,種子がすこしはできるのではないかと密かに期待しています。

この茎だけは食べ尽くされないようにして,観察を続けていこうと思っています。 

 


幼虫に天敵が!

2014-06-09 | ベニシジミ

小さな植木鉢にベニシジミの幼虫を7匹おいていたら,それなりにいろんな生態を見せてくれます。一つひとつがこの昆虫のすがたを紐解くヒントなので,疎かにできません。

7匹のうちの1匹が,無残な死を迎えました。それだって,生態に迫る貴重な手がかりになるでしょう。今回はそれについて報告します。

この個体,前日の夜はまったく異常が感じられませんでした。


翌朝のこと。蛹化を迎えているのにどうも変化の兆しがありません。同時期に同じ進み具合で蛹になった個体があります。それと比べて,とても遅れていておかしいのです。それで,じっくり変化を見届けてみるかという気持ちになって,カメラをセットして観察を続けました。

そのうちに,頭部・胸部辺りに妙な動きが観察できました。体表をとおして,筋肉が複雑に動いて見えるのです。蛹化間近かと思っていたら,そうではありませんでした。続いて,怪しい黒い影が体内を移動したり,影が薄っすら見えたり,消えたりしました。「ヤッパリ変だ!」と感じてようく見ていると,表皮のすぐ内側を黒い昆虫がすばやく歩いていきました。目にも留まらぬ速さ! あれはハチに違いないと思いました。寄生バチです。


そう思ってさらに観察を続けると,複数いることがわかりました。それがほんの一瞬見えるときがありました。しかし,撮影はできませんでした。(後で写真で確認すると,からだに穴が空いて,そこから黒いからだが見えていたことがわかりました)


そんなことが続いているうちに,ほんの数分目を離した後の話。肉眼で幼虫を見ると,状況が激変! 胸部の背辺りにぽっかり穴があいていたのです。そして,皮状のものが垂れ下がっていました。なんと激しい変化でしょうか。寄生バチが出たあとで,正体を見定めることはできませんでした。そんなことってあるのでしょうか。


いったいどんなハチだったのか,今も気になっています。見逃したとはまことに惜しいことをしました。

たぶん,幼虫期に体内に卵が産み付けられ,今こうして体外に出てきたというのが真相なのでしょう。こんな小さな幼虫にも,さらに小さな天敵がいるのです。それも体内で育つ習性を持つハチが。

こんな生態に出くわすとは思いもよりませんでした。

 

【追記】幼虫の天敵について

あの日に見た天敵のことが気になって,文献(『原色日本蝶類生態図鑑(Ⅲ)』保育社刊)で調べました。結果,かなりはっきりわかってきました。以下の記述がありましたので,引用しておきます(赤字)。

成虫は花上でクモに捕えられたり,飛翔中にトンボ類に捕食される。幼虫にはカイコノクロウジバエ,サンセイハリバエ,シジミヤドリバエ,アカシジミヒメバエの寄生やシマサシガメにより体液を吸われた例が知られる。シジミヤドリバエやアカシジミヒメバチの寄生率は高く,越冬幼虫193頭中前者17頭,後者9頭,第2回目の幼虫105頭中前者29頭,後者11頭の寄生があったという報告がある。

結局,寄生率は10%~40%にのぼることがわかります。これで納得です。

                                     (6月10日 記す) 

 


前蛹から蛹へ

2014-06-08 | ベニシジミ

ベニシジミの蛹化を観察撮影していて,「なるほどな」と合点のゆくことが一つありました。それについて触れておきましょう。

わたしの指が触れたために,前蛹がひとつ葉から落下してしまいました。帯糸が切れてしまったのでは,傾斜面にはおけません。それで,葉の表におくことにしました。そこは比較的水平に近い面です(下写真)。

12時45分。幼虫から前蛹になって,一定時間が経ちました。間もなく蛹化が始まりそうです。帯糸がないことで,なにか不都合が生じないかと思いながら,観察を続けました。帯糸はからだを固定するものです。なければ,動きが生じた場合,「トラブルが起こるのではないか。落ちるかな」というのがわたしの単純な思いでした。


14時50分。蛹化への大変化が始まりました。表皮が薄く剥がれる兆候が見えてきました。


14時55分。表皮が脱がれていきます。同時にからだが前に移動して,ほんとうに葉から落ちそうになりました。それで,わたしは軽く元に戻しました。あとはそのままにしておきました。やはり,帯糸がなければからだがとても不安定になります。今回の事例をとおして,とてもはっきりわかった点でした。


14時56分。脱がれた皮は尾部にかためられていきます。


15時45分。完全に脱皮が完了した後,薄緑をした蛹が静かに横たわっていました。


17時07分。4時間が経ちました。時間の経過とともに,黒っぽい斑点・紋様が表れてきました。


21時19分。蛹化後8時間が経ちました。薄い緑色よりも黒い紋様の方が目立っています。


やはり,しくみというのは合理的・論理的に仕上がっているものだなあと舌を巻いた次第です。 

 


ジャガイモ,株ごとおもしろ実験

2014-06-07 | ジャガイモ

ジャガイモの芋は,地中に伸びたストロンの先が肥大化したものです。ストロンは第1節から四方に広がり出た,茎の一種です。つまり茎の先に養分が貯えられて芋になるわけです。

もしも第2節から上部にある腋芽を,同じように太らせることができれば,空中イモが生った状態だといえます。畑で自然にできた空中イモについては,ずっと前に記事にしました。

では,自然に任せるのでなく,意図的に空中イモがつくり出せないか,と考えてしまいます。それは,地中に養分が運ばれないようにストロンを切断することでも可能ですが,その他の方法でもできます。要は環境を制御すればいいのです。

この方法とは,空中の茎が地中にあるのと同じ環境をつくる手です。伸びている茎を,段ボール製の暗箱である程度の高さまですっぽり覆ってしまえばいいでしょう。箱の中が真っ暗になって,ジャガイモはそこが地中だと勘違いするはず。つまり,第2節ならそこの腋芽が,第3節ならそこの腋芽が,地中にあることになって,ストロンのように伸びることなく肥大化し始めるのです。

では,この実験を始めましょう。できる方は,同じ要領で試みてください。今の時期が最適です。わたしの場合は,暗箱の内側を黒塗装する代わりに紺色の色画用紙を貼りました(黒色がなかった!)。そして,雨対策として黒ビニル袋で包んだのです。


この観察実験を進めながら,ふと思い付いたことがあります。それは,こんなに厳密にしなくても,大きな植木鉢をひっくり返して被せ,底の穴から頂芽を出しておいたらいいのではないか,ということです。まったく簡単な話です。さっそく,この実験も開始しました。


さて,結果は3,4週間ぐらいで現れ始めるでしょう。1カ月以上も経てば,はっきりした結果が得られると思うのですが……。

 


卵に異変!

2014-06-06 | アゲハ(ナミアゲハ)

アゲハの孵化をたのしみに観察を続けていましたが,結局,孵りませんでした。それもすべての卵が。どうなっているのか,どうしたのか,とてもふしぎです。

殻をとおして中が見えそうになっていたのに,黒くなって順調に孵化を迎えると思っていたのに,まったく外れてしまいました。

なぜか,卵がしわしわになっています。明らかに成長が止まったことを物語っています。何かが起こったとしか思われません。

なぜか,卵に小さな穴が開いています。これは寄生バチが出ていったものか,あるいはハチが中に入って食したか,いずれかでしょう。直径1mmの卵にぽっかり開いた真ん円の穴!


これだけ期待が外れたのは初めてです。孵化するまでにも災難が待ち受けている,というふうに解釈するほかありません。

 


尺取虫の格好

2014-06-06 | 昆虫

シャクトリムシは,いうまでもなくシャクガの幼虫の総称です。尺を取るように歩く様から,こんなぴったりの名を与えられて,喜んでいるように思えます。

シャクガの種類は多く,その幼虫も長い,短い,太い,細い,というようにいろんなタイプがあります。総じて,枝状の体型から擬態によって自己防衛を心得ている昆虫だといえます。そのしぐさは,観察する者の目をたのしませてくれます。「ほほーっ!」と,好奇心をくすぐってくれます。

スミレの葉を観察しているとき,葉の裏にシャクトリムシが一匹付いているのを発見。細くって,長くって,じつに美しい格好をしているので,思わず撮影することにしました。10mmほどの体長でしょうか。成虫はなにか,さっぱりわかりませんし,何齢幼虫かも定かではありません。ともかく,ふしぎなほどのその姿に魅了されたのです。 

見つけたとき,ピンと一直線の姿勢を保っていました。これでは,天敵に見つかりにくいはず。なにかの枝かなと見誤ってしまいそう。 

 



軽く指を触れると,緩やかに,そしてピンと曲線を描くように変形。 「外敵が来たな」という格好です。そうして,それ以上動こうともせず,そのままの姿勢を保ち続けました。

 

 
それで,また指を触れてみました。今度は,前より大きく曲がりました。

 


再び触ると,頭部を葉に付けて,ゆっくりと移動を始めました。例の動作である“尺” を取りながら。

 

 
ほんの体長分ぐらい動くと,そこで静止。そうして,からだをぐーっと伸ばしました。

 


悪戯好きなわたしは,頭をちょこっと触ってみました。すると,からだを反転させて後方に向きました。尾脚はそのままです。つまり,反り返りが180度ということになります。大した柔軟度です。 

 


もっと触ると,迷惑に思ったのでしょう,動く気配です。尾脚を反対方向に向け,尺を取りかけました。 

 


しかし,結局動かずに,またからだをピンと伸ばしました。お蔭さまで,下写真が撮れました。からだの線がなんと見事なこと! 尾脚のスゴサが伝わってきます。この格好で姿勢を保てるしくみはどうなっているのでしょう。まことに驚異的。 

 


なんだか,すっかり愉快な気持ちになりました。  

 


ジャコウアゲハ観察記(その313)

2014-06-05 | ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハの,今季第1世代はまったく姿を見せなくなりました。幼虫たちはどんどん成長しています。アゲハの庭園では食草ウマノスズクサがどんどん食べられ,肝心の幼虫が淘汰されています。

わたしが棲息地に移した幼虫は数百匹。それだって,たった2%を残して生存できないのです。それが自然界における摂理なので,淡々と受けとめるほかありません。

そんな中,ヨッさんもたいへん,たいへん。根っから,いのちを慈しむタイプなので,なんとか幼虫を守ろうと必死です。家で保護できる範囲で全力を尽くす,最大棲息地に持って行って食草におく,そこがダメと見れば第二,第三の棲息地におく,といった具合なのですから。

 


ヨッさん宅でもらってきた前蛹が二つ。それらが変化していく様子を見ながら,撮影することにしました。


何度か見ているうちに,そのうちの1個体で筋肉の弛緩が激しくなり,そのまま脱皮開始! そのときの一コマが下写真です。 支柱は自然の枯れ草で,ヨッさんが河原で刈り取って来られたもの。

 

 
ヨッさん宅の敷地はとても環境がいいみたいで,前蛹になる個体が続いています。どうも,ヨッさんのこころが通じているような気がしてなりません。