自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャコウアゲハ観察記(その318)

2014-06-18 | ジャコウアゲハ

ヨッさんから電話がかかってきました。「あんな大きな幼虫は見たことがあらへんで。一度見に来てないか」という内容。ヨッさんがびっくりされるほどの大きさだから相当なものだろうと思い,見に行くことにしました。

ウマノスズクサに花を咲かせるため,それをネットで覆った特別な区画に,それはいました。屋根部分から突き出た茎につかまっていて,大きいにもかかわらずまだ食欲があるように見えました。確かに大きいのですが,初めて見るといったほどでもありませんでした。


「大きいやろ」とおっしゃるので,「確かに大きいですが,こういう個体が珍しいというほどでもありませんよ。実際,ときには目にしますから。これだけ食べ物があると,グウタラ息子みたいにのんびり,たっぷり食べられますね。競争しなくても食べ物があるんですから」と,わたしは答えました。簡単に片付けてしまったことをすこし後悔しましたが,ヨッさんにすれば珍しい出会いだったのです。 

ヨッさんは「これがどう成長するか,持って帰って見届けてほしい」といわれました。それで,そのとおりにすることにしました。

責任を感じて観察していると,数日して前蛹化。場所は,竹の葉です。


雨が降って,からだがすこし濡れています。 

 
大きな幼虫の前蛹は,やはり大きめです。これが蛹になると,やっぱり大きいのでしょうか。一日経って蛹化しました。見ると,確かに大きめです。下写真は別の蛹を並べて撮ったものです。

 


結局,幼虫にも蛹にも個体差があることがわかります。ヒトにも,十人十色というように,体形に違いがあるのと似ています。つまり,十虫十色です。その大きさは食草の量と密接な関係にあるように思われます。 

 


ベニシジミの卵,こんなに

2014-06-18 | ベニシジミ

道端で,たまたまベニシジミの産卵行動を見かけました。スイバ葉の表側にとまって産み付けたあと,そのまま歩いて葉柄方向に移動していきました。そこでまた,卵を一粒産み付けました。

「それなら,この辺りには他にも卵があるんじゃないか」。そう思って,そこらを見ていくと,はじめに目に飛び込んできたのがなんと卵が集中的に産み付けられた株。もちろんスイバです。近頃はこの卵に目が慣れてきていましたし,株から出た葉が小さくて新しいものですから,よくわかりました。小さくて新しいといっても,生えている一帯が春に焼かれた結果他の草があまり生えていないものですから,とても目立つのです。


一枚の葉に2個も産み付けられた例が二つも! 上写真の一部(①②及び④⑤)を拡大して撮ったものが下写真です。


同じ成虫が産んだのかどうかは不明ですが,たぶん,違う成虫が産み付けたもので,偶然隣り合ったと解釈するのが妥当でしょう。スイバのこの株は,どうやらベニシジミの目にもとまりやすかったに違いありません。

数えてみると,同一株に7個の卵がありました。それもすべて葉の表側にありました。裏側にある場合もあるにはありますが,圧倒的に表側だといっていいでしょう。今回の例もそうでした。

同じときに産卵がなされたわけではないので,孵化の時間帯もずれるでしょう。できれば1個体ぐらいは目撃できないかと,秘かに期待しているのですが。

ベニシジミとのすてきな出会いになりました。 

 


ジャコウアゲハ観察記(その317)

2014-06-17 | ジャコウアゲハ

めったにないことなのですが,時として,幼虫が宙吊りになる場合があります。脚を踏み外すとか,風雨に煽られるとか,そんな非常事態が生じたときと考えてよいでしょう。

そのために,絹糸を吐いて歩いているときがあります。たとえば,横に倒れた細い茎から突然落ちたときを目撃したことがあります。そのとき,糸のお蔭で宙吊りになり,その後,時間をかけて元の位置に上がっていったのでした。ちょうど,それは命綱の役を果たしていたのです。 

元に戻ればいいのですが,そうはいかない例もあります。宙吊りになったまま,死を迎えるほかありません。脱皮の最中に落下しそうになり,そのままいのちを失った個体を見たことがあります。

今回は,幼虫が葉からぶら下がった状態で,力を使い果たした例です。多少の力が残っていましたが,もう,どうしようもありません。


幼虫が無事に大きくなるまでには,災難がいくらでも待ち受けています。98%のいのちを奪う厳しい掟といっていいでしょう。一切の感傷を拒む,小さな世界の掟です。 

 


ジャコウアゲハ観察記(その316)

2014-06-16 | ジャコウアゲハ

今,終齢幼虫がいくつかはいますが,ほとんどが蛹になっています。中には羽化が終わった個体もあります。これは第2世代の締めくくりにあたります。

6月15日(日)。イネ科植物の枯れ茎に付いた蛹を見ると,間もなく羽化しそうな気配。それで,家の中に持ち込んで撮影の準備。

ふしぎなほどタイミングが合いました。10分ほどすると,殻が開き始めたのです。

 
ゆっくり殻から出始めました。何度も見た光景ですが,今回の出方はじつにすっきり,くっきりしていました。

 
大きめの昆虫は,やはり時間をかけて成熟していきます。出方といい,翅の伸ばし方といい,飛翔までの時間といい,みんながそうです。これは,小さなシジミチョウを観察した後に感じた印象です。

数時間して翅が整うと,ヒラヒラ舞い上がっていきました。

 


羽化! なのに,……

2014-06-15 | ベニシジミ

ベニシジミの羽化を見たくって,スイバの株を植えた鉢で飼ってきた幼虫が7個体。そのうち1個体は天敵の被害に遭って蛹化に至らず。残りは6個体。このうち少なくとも1個体で羽化を激写しなくちゃと待ち構えていました。

ところが,そうはうまくいきません。ほんの十数分間目を離しているうちに,なんと羽化済み! それも何時間もじっと見つめていた結末がそうなのです。下写真の下中央に殻が写っています。  

 
別の個体。葉の裏側で「羽化近し」の兆候を観察。色から判断。

 
8時間じっと待ち構えていました。ところが,ほんの数分目を離した隙に出終わって,すでに翅を広げ終わっていました。

 
また,別の個体。やっぱり同じ失敗を繰り返しました。じっと見ているのはほんとうにたいへん。下写真のような場面を見ると,落胆してしまいます。

 
またまた別の個体。2,3分間,見ていなかっただけで絶好のチャンスを見逃しました。翅がまだ縮んでいます。


最後の個体。 


色合いから,羽化はまだだろうと思い込んでいたら,10分後に羽化! もちろん,その一瞬は居合わせませんでした。 

 
翅がもう広がっています。ここまで「残念!」「がっくり!」の繰り返しでした。決定的瞬間を激写できる幸運にはなかなか恵まれません。仕方なしです。先のたのしみに置いておきます。

それで,観察をとおしてとても印象深く感じた点を2つ書いておきます。1つは,ジャコウアゲハのような大きめのチョウと異なり,羽化時の予測が困難なこと。2つには,羽化後,翅が速やかに広がること。つまり,小さい昆虫ほど成長・成熟・変化にかかる時間“生理的時間”が短くなるといえます。そんなわけですから,小さいほど変化が肉眼で確認しにくいことに合点がゆきます。

それにしても,今回の観察は苦労続きでした。

 


キスジトラカミキリの擬態

2014-06-14 | 昆虫

家の中に,ハチと見紛う昆虫が1匹侵入してきました。それを見て,一瞬,これは刺されちゃいけないぞと思いました。見たことのない昆虫だったので,とりあえず慎重に観察容器に入れました。その後,撮ったのが下写真です。中脚の一本が欠けています。


体長は15mm。調べると,正体はすぐにわかりました。キスジトラカミキリです。クリの花とか,切り倒された広葉樹にやって来るのだとか。よくよく見ると,翅の特徴はまさにかみきりであって,ハチのそれではまったくありません。なのに,見た瞬間,ハチと間違いそうになったのです。


解説を見て,納得できました。キスジトラカミキリの,黒と黄色の縞模様はスズメバチの警告色を真似た擬態なのです。スズメバチは毒液を持ち,攻撃的な性質を有する昆虫です。そのことについては,人間のみならず哺乳類・鳥類に広く認知されています。そのからだに,似せて身を守ろうとするかしこいカミキリがこれというわけです。色彩だけでなく,姿格好もなんだかそっくり。

 

このキスジトラカミキリ以外にも,スズメバチに擬態した昆虫はたくさんいます。カミキリムシにも,そのほかの種にもいます。

種間の関わりって,おもしろいものです。それを感じさせてくれる出会いとなりました。

 


初めて見た卵!

2014-06-14 | ベニシジミ

今観察している幼虫を採集したウォーキング道でのこと。ベニシジミの成虫をいくつか見かけました。これまでに卵をできるだけ早く見つけたいと願っていたので,この機会に探してみようと思い立ちました。実物を見たことはありませんでしたが,写真情報をとおして表面の規則正しい凹凸面が脳裏に刻み付いていました。

わたしは,てっきり葉の裏側に産卵しているはずだと思い込んでいて,スイバ・ギシギシの葉の裏を探したのですが,まったく見当りません。結局,思い違いをしていたのでした。たまたま表側で1個見つけ,その美しさにびっくり。そして,次々に見つかりかけ,「ははーん」と納得したのは表側で当たり前だということ。 

 


この葉でも表側です。 

 

 
別の葉でも表側で。卵の直径は0.6mm。

 


部分拡大して,表面の特徴を見てみましょう。 1mmより小さな世界の巧み。

 

  
やっぱり,ここも表側。

 


葉柄にも。 

 


表側で当たり前というのは,ベニシジミのからだの大きさからみれば,裏側に産み付けるのはなかなかたいへんだと思われるからです。ヤマトシジミは同じような体型ですが,カタバミの葉の裏側に産みます。安全対策としてはもっともです。これと比べて,ベニシジミは生存上不利と思える位置に産みます。

ふしぎといえばふしぎですが,理由はベニシジミに聞いてみなくてはわかりません。そうした選択をしたとしかいいようがありません。

思い付いて卵を探した結果,新たな発見に結び付きました。大きな収穫です。 

 


ジャコウアゲハ観察記(その315)

2014-06-13 | ジャコウアゲハ

アゲハの庭園で,下写真の前蛹を発見しました。食草ウマノスズクサのすぐ脇に植えたレモンの木で,こんなふうに蛹になろうと決めたのです。 

 
人工物ではないものに帯糸をくっ付けて蛹になるというのは,貴重な例です。大抵は塀であったり,トタン板であったり,金網であったりします。それで,「これはしめた!」と思い,経過を写真で記録することにしました。

カメラを据え,変化の兆候をときどき確認。やがて表皮に大変化が起こり始めました。

 


頭部・胸部が二つに裂けてきて……。 


瑞々しい蛹が見えてきました。 


帯糸が緩やかに曲がってからだを支えています。


表皮が帯糸の内側をとおって,後方に送られていきました。 

 
蛹は表皮を落とそうと必死になりました。くねくね,くにゃくにゃと,盛んに動き続けました。そうして,そのうちにポトリと落ちていきました。


ここまででたった5分のドラマでした。いのちが絡むドラマは,いつもこころを打ちます。

 


羽化を激写!

2014-06-13 | アゲハ(ナミアゲハ)

たまたま飼育箱に付いた蛹を見ると,羽化直前の様子。殻をとおしてからだの細部に至るまで確認できます。体毛もはっきり!

わたしは,昆虫たちの生態に飼育箱のような人工物が入り込むのはどうも人間臭さを感じて好きになれません。しかし,観察対象にした昆虫がそういう範囲にも棲息域を広げている,あるいはたくましく生きているという意味からすれば,マア,仕方ないのかもしれません。


そういう前置きをして,今回は敢えてそんな場面をご紹介することにします。理由については解説文でご理解いただけると嬉しいのですが。

午前10時に見て,「よし! せっかくなので記録写真を撮ろう」と思いました。

 


正午までには羽化するだろうと思っていました。ところが,どっこい。ピクリと動いて羽化する気配を見せることはあるのですが,羽化が始まる様子はまったくありません。

午後1時。これで3時間,ずっと見つめていました。しかし,まだ。

それから20分が経った午後1時20分。頭部の殻が僅かに割れ始めました。「ヤッター!」と小躍り。とうとう羽化の瞬間を迎えたのです。

 


ゆっくり,成虫が現れました。じつにゆっくりと。折り畳まれた脚が力強く見えました。


このあと,まったく驚くような速さで殻から出て,上に移動していきました。背には,こんなに小さな翅がちゃんと広がるのかと思うばかりの縮れた翅が乗っかっていました。


自然は巧みにできています。驚異的な変化で,翅がどんどん広がっていきました。翅脈に体液が注ぎ込まれて,ごくごく当たり前のように一人前の成虫のからだに変わっていったのです。

いのちの大変化は,観察者の目とこころを魅了します。観察者にとって,いのちのスゴサを感じる時間は至福のひとときです。

 


ジャガイモの真正種子栽培,本実験(その13)

2014-06-12 | ジャガイモ

育苗用平床に密植している株が,それぞれ順調に育っています。といっても,広さと深さが限られているものですから,のびのび成長しているというふうではありません。実験的栽培なので,これも止むを得ないといったところです。

 


さて,茎と葉をかき分けてイモの育ち方を確認しました。前よりも相当大きくなっています。この株も,その株も,あの株も,といった感じです。こうした光景は,ジャガイモの原産地アンデスに行けば,野生種でふつうに見られるのではないでしょうか。

 


やはり,日が当たらないと,ストロンを伸ばす必要がなくなるのでしょう。それで,第1節では地上(地面)すれすれにイモがドカドカとできています。

よくよく見ていくと,第2節にもできているのがわかります。


つまり,茎が暗い環境下におかれると,空中に位置する節にある腋芽がイモに変身し始めるというわけです。

まだ蕾が見えませんから,まだまだ成長して地上イモ,空中イモは太っていくと思われます。この光景を一度でも見たら,「ジャガイモは根が膨らんでできるのかもしれない」なんて,迷う人はまずないでしょう。