秋に掘り取った球根は、秋の状態である。
春に芽を出すまでには晩秋、初冬、冬、初春とそれぞれの温度を体験させないと球根の持つ力は引き出せない。
りん片を順に剥いていくと十数枚程度で茎を抜いた部分にたどり着く。
そこまでが去年の球根のりん片だ。
ひときわ大きなりん片から内側が今年のりんぺんだ。
枚数と球根の大きさから今年の気象変化が伺える。
写真のように少し伸び上がったところからが来年の芽である。
茎の先の葉を一枚一枚むいていく。
ピンセットでむく。
最後は顕微鏡を見ながら針の先で剥く。
葉が100枚で1m伸びたゆりと80枚で1m伸びたゆりでは、茎の硬さが違う。
葉枚数が適度に分化するまで晩秋の温度にしておく。
顕微鏡で成長点の成熟状態を見つめる。
芽の長さ、太さ、形状、芽の色が十分と判断したところで初冬の温度にする。
初冬の温度を一定期間体験させると芽は完成して発芽可能となる。
しかし春まで貯蔵しなくてはならない。
成熟した芽は発芽しない温度にしない限り、発芽してくる。
冷凍休眠させなくてはならない。
しかし球根は澱粉だ。凍らせると芋と同じで腐る。
冬、しかも雪の下の凍らないぎりぎりの温度を体験させると澱粉が糖に変わる。
雪の下でキャベツが甘くなる。にんじんが甘くなる。
野菜と同じ原理だやや凍らせた位では腐らない、糖度の高い水分の球根になる。
ここまでの過程でもう2月も終わり頃となる。
それから細胞破壊限界のマイナス温度の中で眠らせる。
自然界ではこれが土の中、雪の下で勝手に行われているのだ。
掘り上げる事によって人工的作業が必要になる。
凍らせた球根は、冷蔵期間を長くすれば秋まで順々に出荷が可能になる。
解凍する時は初春、積雪の下で地表の氷が解けて、土中で発芽するような状態にしてから徐々に畑に出してやる。
自然の状態にかなうものはない。
人工的作業をいかに自然と同じようにしてやるか。
園芸とは園の中の芸だ。
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