WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

過ぎし夏の想い出

2007年06月09日 | 今日の一枚(M-N)

●今日の一枚 172●

New York Trio

The Things We Did Last Summer

Watercolors0003_12  今日は本当にリラックスした一日だった。午前中はひとりで音楽も聴かずに集中して本を読む時間を得、午後はしばらくぶりに子どもたちと思う存分遊ぶことができた。夕食は、ちょっとだけ張り込んで、手巻き寿司をやった。子どもたちも少しは満足したのだろう、いつもより早く布団に入り、すやすやと眠っている。

 そんなわけで、私はちょっとしたポスト・フェストムの状態だ。ポスト・フェストム(宴のあと)ということばから、私はなぜかニューヨーク・トリオの2002年録音盤『過ぎし夏の想い出』というアルバムを思い出して、今聴いている。冷たいビールで火照った心と身体を冷ましながらだ。

 ニューヨーク・トリオの作品はどれも好きだが、いまのところこの『過ぎし夏の想い出』が一番フィットする。私はビル・チャーラップというピアニストの繊細なタッチとタイム感覚がとても気に入っているのだが、それが最良の形で現れているように思うのだ。アルバムタイトルは、二曲目の曲名でもあるわけだが、アルバム全体をとおして「過ぎし夏の想い出」ということばのイメージが感じられるのがすごい。それは過ぎ去ってしまった夏への追憶のイメージであり、熱く燃え上がった宴のあとの静かな感傷のイメージである。それは、皮膚感覚をともなうような種類のイメージなのであり、私はこのアルバムを聴くといつも、火照った身体にあたる風の涼しさを思い出す。


モカ イルガチェフェ G-1

2007年06月09日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 171●

Eddie Higgins

Don't Smoke In Bed

Watercolors0002_10  今日は久々の完全オフだ(といってとも持ち帰りの仕事はあるのだが……)。早めに朝食を済ませ、コーヒーを淹れて、しばらくぶりに静かで穏やかな朝の時間を過ごしている。私は近所のスタンド・コーヒー店で豆を買っているのだが、今飲んでいるやつがなかなかうまい。エチオピア産の「モカ イルガチェフェ G-1」という豆だ。程よい酸味とコクがあり、上品な香りがする。私は決してコーヒー通ではないのだが、一口のんでこれは全然違うとわかるものだ。聞くところによると、エチオピア産のコーヒーの中でも最も品質が高く評価されているものらしい。

 2000年録音のエディ・ヒギンズ・トリオ『ベッドで煙草はよくないわ』だ。ドラムレスのピアノ・トリオで、ベースはジェイ・レオンハート、ギターはジョン・ピザレリだ。もう7年も前の作品なのですね。時間が経過するのは早いものだ。このころのエディ・ヒギンズはヴィーナス・レーベルから続けざまに作品を発表し、どれも好調な売り上げを記録していた。ジャズ雑誌の広告にも頻繁に登場し、一世を風靡したものだ。私もご多分に漏れず、何枚かのCDを購入し、はまったという程ではないにしろ、結構熱心に聴いたものだった。けれども、いつしか流行も終わり、エディ・ヒギンズのCDもトレイにのることは少なくなった。昨日、ジェイ・レオンハートのリーダー作を聴いたのがきっかけで、しばらくぶりに聴いてみようかという気になったのだが、今聴くとこれがなかなかいい。本当に寛いだ演奏だ。ドラムレスの良いところが前面にでている。メロディアスでゆったりと流れるサウンドは、今日のような静かで穏やかな朝にはぴったりだ。

 60年代や70年代なら、軟弱者とかプチブルとか罵倒されたかもしれないが、人生のBGMとして生活のクオリティーを上げ、疲れきった神経を補正して、自分自身を取り戻すのも、Jazzを聴くことの効用のひとつだ、と今は思う。