●今日の一枚 174●
Paul Chambers
Bass On Top
ハード・バップ時代の超売れっ子ベーシスト、Mr.PC、ポール・チェンバースの1957年録音作品『ベース・オン・トップ』。彼のリーダー作としては最高傑作といわれる作品だ。タイトルにも自信の程がうかがえる。それにしても、1957年の録音だなんて信じられないほど音がいい。① Yesterdays から弓プレイ(ちょっとイヤラシイ言い方でしたね。アルコ奏法っていうんですよね。)の音の生々しさに耳が釘付けだ。低音の重厚感、音が空気を伝わって届くアコースティックな感覚がたまらない。私は24ビットのCDで持っているのだが、LPで聴いてみたくなる一枚だ。
ポール・チェンバース(b)
ケニー・バレル(g)
ハンク・ジョーンズ(p)
アート・テイラー(ds)
④ Dear Old Stockholm にくびったけである。Mr.PCのベースももちろん素晴らしいが、ケニー・バレルのギターがほんとうによく歌っている。ケニー・バレルというギタリストをテクニック的にすごいと思ったことはないが、時としてあるいはしばしば、たまらなく味のあるプレーをする。この美旋律のスウェーデン民謡 にはいうまでもなくいくつかの名演があるが、私としてはスタン・ゲッツやマイルス・デイビスやバド・パウエルの演奏と肩を並べるものといってもいいほど気に入っている。ケニー・バレルのブルージーな音の振るわせ方、スライド奏法による音の流し方が、他のミュージシャンの演奏とは一味もふた味も違うテイストをこの名曲に付与しているように思う。Mr.PCの太くたくましいベースもよく歌っているが、それをサポートするギターの控えめなバッキングがまたたまらない。唯一の不満は、曲の終わり方があまりに唐突で、サウンド的にもスカスカな感じを受けることだろうか。