WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

トシコ-マリアーノ

2010年08月13日 | 今日の一枚(A-B)

●今日の一枚 280●

Toshiko Mariano Quartet

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 今日は車で1時間程の妻の実家で家族と合流する予定だったが、疲れが溜まったせいか身体全体がだるく、予定をキャンセルした。QPコーワゴールドを飲み、昼間から熱い風呂に入ったら、身体の方のコンディションもだいぶ改善された。したがって、必然的に、今宵も「ジャズ喫茶ごっこ」第2夜である。

 何を聴こうか迷った挙句、たまたま目についたのは秋吉敏子&チャーリー・マリアーノの1960年録音作品『トシコ・マリアーノ・カルテット』である。チャーリー・マリアーノと結婚したばかりのトシコが発表した初期の快作である。ベースの柔らかい音がとても気に入っており、以前はよく聴いたアルバムである。愛聴盤だったといってもいい。最近はなぜか聴く機会が少なくなってしまった。

 やはり、名曲⑤ Long Yellow Load が印象深い。トシコが生まれ育った満州の長い黄色い道と、アメリカのジャズの世界で黄色人種の演奏家として歩き続けていく長く険しい道をシンクロさせたこの名曲は、それ自体素晴らしいが、チャーリー・マリアーノの哀愁のアルトがそれを際立たせている。正直いえば、この演奏におけるトシコのソロはやや凡庸なものに思え、チャーリー・マリアーノのソロもやや冗長で、意味不明のことをだらだらと長くしゃべる頭の悪さ(ちょっといいすぎ?)を感じてしまうのだが、美しく印象的なテーマ部のアレンジと演奏のまとまりは、やはり出色である。素晴らしい。感動的な演奏だ。

 これまで⑤ Long Yellow Load の印象が非常に強く、この曲だけを繰り返し聴くことの多かったこのアルバムであるが、今回の「ジャズ喫茶ごっこ」で大音響で全5曲を通して聴いてみると、そのどれもが中々に素晴らしい演奏であることを再認識した。やはり、「ジャズ喫茶ごっこ」は時々やってみるものである。


バードランドの夜

2010年08月13日 | 今日の一枚(A-B)

●今日の一枚 279●

Art Blakey

A Night At Birdland

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 本当にしばらくぶりのオフだ。ああ疲れた。温泉にでも行きたい。昨日まではHCを務める高校バスケットボール部のサマーキャンプに付き合い、今日からやっと3日間休みだ。妻や子どもたちはすでに妻の実家に帰省しており、昨夜はしばらくぶりに「ジャズ喫茶ごっこ」(だいぶ飲んだので「ジャズバーごっこ」といった方がいいだろうか……)をした。

 暑い日々が続いていたので、ここは思いっきり汗をかこうと、昨夜のジャズ喫茶ごっこで取り出したのがこのアルバムだ。アート・ブレイキー・クインテットの1954年録音作品、『バードランドの夜』第1集・第2集、ハードバップ誕生の歴史的瞬間を記録したといわれる作品である。第1集・第2集を通して聴いたのは何年ぶりだろう。もう記憶にすらないが、10年あるいは20年ぶりかも知れない。

 録音の古さからホレス・シルヴァーのファンキーなピアノがサウンド的にいまいちビンビン響いてこないのがたまにきずだが、クリフォード・ブラウンのはちきれんばかりの明快なトランペットの響きが生き生きと伝わってくる。アルトのルー・ドナルドソンもなかなかがんばっており、安酒のまわった私は、年がいもなくひとりで悦に入り、身体を揺さぶりリズムを取ってしまう有様だった。

 ところで、ちょっと前にさかんに売り出されたRVG(ルディー・ヴァン・ゲルダー)リマスタリングと銘打ったCDで聴いてみたのだが、以前聴いていたレコードの方がより生々しく感動的に思えるのはどういうことだろう。RVGは、アルフレッド・ライオンとともにBlue Noteの音をつくりあげた稀代の名エンジニア、ルディー・ヴァン・ゲルダーの手でLAの倉庫に保管されていた最良のマスタへテープをリマスターしたものだが、不遜な物言いだが、ちょっと違うんだよなと思ってしまう。もちろんそういう試みがジャズのひとつの楽しみだということを否定するわけではないのだが、やはり演奏や録音というものはその時代の雰囲気と熱気とともにあるのであり、ジャズを聴く楽しみの中にはそういう時代精神にひたることもあると思うのだ。もちろん、そのCDを購入し、聴いたのはこの私であり、市場経済の中での選択の自由を謳歌している私の責任なのだが……。いずれにせよ、私はRVGには懐疑的である。この次は、レコードを聴こう。