WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

批判できないことば

2015年02月07日 | 今日の一枚(A-B)

●今日の一枚 416●

Blossom Dearie

Blossom Dearie (Verve jazz Masters 51)

 批判できないことばというものがある。最近よくきく、「テロとの戦い」というのはそのひとつだ。テロが我々の市民社会に害悪を与えることは事実であるし、もちろんそれを肯定する者などめったにいないだろう。ただ、青臭いことをいうようだが、テロとは何かということが十分に吟味されずに言葉が流布していく。そのことが問題だ。それはやがて肥大化して拡大解釈を許し、社会に大きな問題を残すだろう。

 被災地にも批判できないことばがある。例えば、「復興」がそれだ。あの大災害からの復興をのぞまない者などいない。しかし、ことばが吟味されず、肥大化して流布した結果、「復興」ということばのもとに、何でもありになってしまう可能性がある。実際、無計画な乱開発や、土地所有権の軽視あるいは事実上の略奪が「復興」のことばのもとに顕在化してきている。「復興」を隠れ蓑に、諸勢力が利益を獲得するために暗躍する。「復興」のことばの前に、誰も大きな声では批判することができない。それが被災地の現実だ。

 元祖カマトトボイス、ブロッサム・ディアリーのverve時代のベスト盤である。彼女がverveに在籍した1950年代及び1960年代初頭の録音を集めたものだ。この時期のブロッサム・ディアリーは好きだ。何といっても声が可愛らしいが、歌がうまく、独特の穏やかな世界を作り上げているところがいい。すっと以前に取り上げた、『マイ・ジェントルマン・フレンド』や『ワンス・アポン・ア・サマータイム』は特に好きだ。ブロッサム・ディアリーのベスト盤はいくつか持っているが、このCDを一番よく聴く。2つのアルバムの曲がいくつか取り上げられていることと、何より、大好きな「やさしき伴侶を」が収録されているからだ。

 このベスト盤のライナーノーツを読んで今日はじめて知ったのだが、あのトニー・ベネットがブロッサム・ディアリーを称賛する文章を書いているのだという。

ディアリーの才能と歌声は、なぜ時を経ても色あせないのか。それは彼女が鍛え抜かれたミュージシャンだからだ。彼女は、ナット・キング・コールと同じぐらい素晴らしいピアノを弾く。ディアリーは決して自分のテイストに妥協を許さず、常に聞き手に最高品質の音楽だけを提供する。

なるほど・・・・。