◎今日の一枚 501◎
Jim Hall
It's Nice To Be With You
先日、内田樹『そのうちなんとかなるだろう』を読んでいたら、内田樹さんの元奥さんの父親(元義父)が、日本国憲法制定時の首相である幣原喜重郎の秘書を務めた人で、幣原本人から「9条第2項を発案したのは私です。あれをマッカーサーのところに持って行って、これを何とか憲法に入れていただきたいということを申し上げたのです。」という話を聞いたことが記されてあった。内田さんの元義父は、亡くなるまでそのことを繰り返し話したという。
GHQが所謂マッカーサー草案を作成する際、参照したものの一つとして日本人の民間団体「憲法研究会」が作成した「憲法草案要綱」があったことはよく知られている。マッカーサー草案との親和性が非常に高く、その"手本"になったとさえいわれるものである。
そういえば、15年程前の映画で『日本の青空』(監督:大澤豊)というのがあった。「憲法研究会」の中心人物である鈴木安蔵を主人公にした作品だった。なかなか、興味深い映画だった。
手続きの問題として、日本国憲法がGHQによる占領下で作成、制定、施行されたことには変わりない。けれども、日本人が憲法制定に際して情熱を傾け、自らの手で自由で民主的な国の枠組みを作ろうとしたことは、明治の自由民権期の私擬憲法とともに、日本人の誇りとして記憶にとどめておくべくだろう。左派や保守派だけでなく、右派も含めてである。それが、ナショナル・ヒストリーである。
今日の一枚は、ジム・ホールの1969年録音作品、『イン・ベルリン』だ。ギター、ベース、ドラムスのトリオ編成による作品である。うまいギタリストだ。パット・メセニーが影響を受けたらしいが、音色に注意して聴くと、その類似性がわかる。エッジを立てないギターなのだ。音の輪郭を敢えて際立たせず、穏やかでマイルドなトーンにしている。その意味では、大人のギターである。心地よさに、眠ってしまう。In A Sentimental Mood に心を奪われる。