WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

「被災地」がいっぱい

2021年07月10日 | 今日の一枚(E-F)
◎今日の一枚 517◎
Eddie Higgins Trio
Dear Old Stockholm
  各地で大変なことが起こっているようだ。「線状降水帯」のことである。テレビで見た静岡県熱海の土石流は、まさしく「山津波」だ。いまも、鹿児島・宮崎・熊本に大雨特別警報が発令されている。昔から、日本は災害列島だ。4つのプレートの境界にある上、毎年台風が襲うモンスーン気候帯なのだから仕方ない。けれどやはり、ここ数年はいろいろな災害が多すぎる気がする。加えてコロナ禍だ。まさに、「末法」の世である。一昔前なら、新興宗教の予言者が跋扈しそうな状況ではないか。
 十年前は、「被災地」といえば三陸地方だった。考えてみれば、三陸地方=「被災地」だったのは東日本大震災後数年のみで、その後毎年のように、全国各地に「被災地」が増殖していった。もはや、「被災地」がいっぱいである。
 かかる状況下、時代遅れの新自由主義に基づく「自助」を標榜し、一部経済界の利益のみを擁護する勢力が政権を握っていることは、日本の不運であり、皮肉であるというべきだろう。彼らに権力を委ねたのは、他ならぬ国民なのであるから。「末法」の世だ。

 今日の一枚は、エディ・ヒギンズ・トリオの2002年録音盤『懐かしのストックホルム』である。ヴィーナス盤だ。今は無き『スウィング・ジャーナル』誌の読者リクエストに応えて、エディ・ヒギンズがスタンダードナンバー14曲を録音した作品である。いい曲目白押しである。エディ・ヒギンズの熟練した技が、ゆったりとしたくつろぎの空間を創出する。ゆったりとしてはいるが、流麗なアドリブが随所に登場し、退屈なカクテルピアノとは一線を画する。
 私の住む街も今日は雨である。「線状降水帯」の地域の方々には申し訳ないが、窓の外の雨を見ながら、コーヒーをすすりつつ、エディー・ヒギンズを聴いている。