WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

梅はまだか

2022年03月21日 | 今日の一枚(A-B)
◎今日の一枚 572◎
Alan Gorrie
Sleepless Night
 庭の梅がまだ咲かない。いつもならもう咲いている頃だ。私の住む宮城県気仙沼市は、風はまだ冷たいが、それでも日差しはだいぶ暖かくなってきた。梅にはやっと小さなつぼみができたが、まだまだ硬いようだ。咲くまでには、もう2週間以上はかかりそうだ。梅だけではない。花桃も花海棠もハナミズキも、今年はまだまだかかりそうだ。
 庭が色付かないと寂しい。春が来た感じがしない。
 今日の一枚は(といっても3枚目だが)、アラン・ゴリーのデビュー作、1985年作品の『スリープレス・ナイト』である。レコード棚を整理していて発見した一枚である。その存在は知っていたし、何度か聴いたことも覚えている。しかし、どんな経緯で買ったのか、全く思い出せない。アラン・ゴリーがどんな人なのかも知らない。このアルバムがリリースされた1985年前後は、私がAORを聴きはじめた時期なので、その流れでどこかで知ったのだろう。webで検索すると、アラン・ゴリーという人は、スコットランドのミュージシャンで、ソウル、ファンク系バンド「アヴェレージ・ホワイト・バンド」の中心メンバーの一人ようだ。 ②Diary of A Fool は佳曲である。この曲を聴いて、当時の情景が何となく蘇ってきた。

八重姫

2022年03月21日 | 今日の一枚(O-P)
◎今日の一枚 571◎
Peter Allen
Bi-Coastal
 『鎌倉殿の13人』の話題である。
 ガッキー演じる八重姫のことが気にかかっている。八重姫は伊東祐親の三女とされるが、wikipediaによれば、延慶本『平家物語』、『源平盛衰記』、『源平闘諍録』、『曽我物語』などの物語類にのみ登場し、古記録などの同時代史料や『吾妻鏡』などの編纂史料には見えないという。 源頼朝の最初の妻であり千鶴丸を生んだとされるが、史実かどうかはわからない。大河ドラマの脚本はそれら物語類に立脚したもののようだ。
 ドラマでは、頼朝の最初の妻だった八重姫に、小栗旬演じる北条義時が思いを寄せる筋書きとなっているが、中世史家の坂井孝一氏は、八重姫が北条義時と再婚して、北条泰時を産んだのではないかとの仮説を提示している。北条泰時の母は、出自不明で「御所の女房」とのみ記される人物であり、ありうることかもしれない。『鎌倉殿の13人』の時代考証を務めているのは坂井氏その人であり、ストーリーはそういった方向に進むのだろう。

 今日の一枚は、ハリー・アレンの1980年作品、『バイ・コースタル』である。先日、「ひまわり」のテーマの入ったレコードを探そうと、レコード棚を物色中に目にとまった。買ったことは憶えており、その存在も認識していたが、思い起こすと聴いた記憶はほとんどない。
 帯には、「ピーター・アレンは、洗練されたアメリカン・ポップ感覚の持ち主であるとともに、私の最も好きなソングライターの1人です。今回はデヴィッド・フォスターをプロデューサーに迎え、まさしくバイ・コースタルな雰囲気で一杯の素敵なアルバムを作ってくれました。」という竹内まりやの推薦文が載っており、参加ミュージシャンにも有名どころのミュージシャンが名を連ねている。
デヴィッド・フォスター(key)
ジェイ・グレイドン(g)
スティーヴ・ルカサー(g)
ジェフ・ポーカロ(ds)
マイク・ポーカロ(b)
 悪くない。なかなかいいアルバムだ。特に、②Fly away は印象深い佳曲である。2回繰り返して聴いているうちに、何だかサウンドに同化してきた。同時代に聴いていたら、お気に入りの一枚になったかもしれない。


ひまわり

2022年03月21日 | 今日の一枚(E-F)
◎今日の一枚 570◎
Best Of Screen 
 ~Love Theme
 ロシアによるウクライナ侵攻事件が起きてから、ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが共演した映画『ひまわり』のことが時折頭をよぎっていた。好きな映画の一つだったのだ。『ひまわり』の再上映が広がっているというニュースにも接し、もう一度見たいという思いが高まった。ところがである。探してみてもnetflixにはなく、近隣のレンタル店にもなかったのだ。仕方なく通販で廉価版のDVDでも購入しようかと考えていた矢先に、この間の地震があった。
 家には被害がなかったが、私の書斎は例のごとく棚から本やCDが落ち、メチャメチャになってしまった。数日間放置して、片付けに取りかかったのは土曜日である。ところが、落下物の中から『ひまわり』のDVDを発見したのだ。昔、TVで放映されたものを録画したもののようだ。ちょっとした幸運である。
 しばらくぶりに見た『ひまわり』は新鮮だった。ストーリーは大体知っているので、ディテールに目が行ったのだ。ひまわりは現在ウクライナの国花らしいが、花言葉は《あなただけを見つめる》だ。映画のソフィア・ローレンのようだ。あの印象的なウクライナのひまわり畑の下には、ロシア兵やドイツ兵やイタリア兵が眠っているという話が出てくる。映画の最後には、一本のひまわりがアップで撮られ、そこからカメラは引いていき、広大な領域に広がる無数のひまわりが映し出される。恐らくは、最初の一本のひまわりはソフィア・ローレンとその悲しい物語の象徴なのであり、広大なひまわり畑はそのような悲しい物語が無数に存在することを表しているのだろう。陽気で明るいイメージのひまわりに悲しい物語を投影することで、その対比によって深い悲しみが静かに広がっていくのだ。

 今日の一枚は、『愛の映画音楽全曲集』である。演奏者はThe Film Symphonic Orchestra とあるが、どのようなオーケストラなのかわからない。企画物なのであろう。レコード棚にあった古いLPである。『ひまわり』のテーマが聴きたくて取り出してみた。いつ買ったのか全く記憶にない。自分で買ったことは憶えている。『ラスト・コンサート』のテーマ曲を聴きたくて買ったのだ。ロックやジャズしか聴いてこなかった自分が、ある時点で映画音楽のレコードを買っていたことはちょっとした驚きだ。
 『ひまわり』のテーマはいい曲だ。映画のいたるところに効果的に配され、強く印象に残る曲だ。映画を見た後に聴いた所為だろうか。ここ数日、耳にこびりついて離れない。