●今日の一枚 53●
John coltrane Blue Trane
やはり、こういう音楽をたまには聴くべきだ。私のJAZZの原点とはこういう音楽をいうのだ。
いわずと知れたジョン・コルトレーンの名盤『ブルートレーン』。1957年録音のコルトレーン唯一のブルーノート、リーダー作である。初期のコルトレーンの代表作といっていいと思う。
ケニー・ドリュー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)というしっかりとしたリズム隊をバックに、コルトレーン(ts)、カーティス・フラー(tb)、リー・モーガン(tp)という三管フロント陣がアンサンブルを繰り広げ、コルトレーンは"シーツ・オブ・サウンド"といわれる一瞬の間もなく音が連続するようなソロを展開する。実にスリリング、かっこいい演奏だ。
この作品を聴くといつもある男を思い出す。学生時代、行きつけの酒場で知り合った男だ。哲学科に所属しているくせに歴史学にも興味をもつその男は、私と酒場で会えば、いつも中世史や哲学・思想について議論した。議論は多岐にわたり、しばしば激論となることもあったが、酒が回って酔っ払うと、その男はきまってBlue Traneを口ずさむのだった。それはテーマからはじまり、ソロをへてフィナーレにいたるまでほとんど一音も間違えることなく完璧に歌われた。いつのころからか、私がカーティス・フラーとリー・モーガンのパートを担当してハモり、トレーンのソロパートではリズム隊を担当するようになった。それが結構面白かったらしく、よく他のお客さんものってくれたものだ。おかげで私はいまも、Blue Traneのソロパートをほぼ完全に口ずさむことができる。一回性のアドリブにかける音楽としてのJAZZを聴く姿勢としては正しいものではないのだろうが、私にとってはかけがえのない楽しい日々であった。
彼は今頃どうしているだろうか。彼とはもう20数年会っていない。
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