◎今日の一枚 478◎
The Oscar Peterson Trio
We Get Requests
本棚を整理していて懐かしい本を見つけた。1980年代に流行したドゥルーズ=ガタリの『リゾーム』である。何とも開いたためか、もう本はバラバラの状態だ。帯の宣伝文句には、「80年代の思想シーンを規定した、ドゥルーズ-ガタリの戦闘的パンフレット」とある。周知のように、リゾームとは地下茎のことであり、ツリーの反対概念である。各人が、非統制的、非管理的に、自由にコミュニケーションすることで、権力に対抗するイメージを表したものだ。今振り返ってみると、スマホやPCを使って各人が自由にあるいは偶然性によって繋がることのできる社会にシフトした点では、リゾームの描くイメージは先見性があったといえるかもしれない。しかし一方、その反作用としてあるいはそれへの対抗として、国家権力の統制が強まったこともまた事実であろう。問題は、そうした統制を市民が受け入れ、場合によっては増幅しているように見えることである。
今日の一枚は、オスカー・ピーターソンの『プリーズ・リクエスト』である。1964年録音の作品だ。私はなぜか、オスカー・ピーターソンを聴いてこなかった。LPやCDのコレクションの中にも、持っているのはこの一枚のみである。この一枚も、教養主義的に聴くために買ったような気がする。オスカー・ピーターソンを毛嫌いしていたわけではないが、私が伸ばしていたアンテナには引っかからなかったようだ。私の聴く音楽の傾向とコードが違っていたのかもしれない。今、オスカー・ピーターソンを聴いている。趣味のよい、お洒落なサウンドである。衰えてきた耳にも優しい。ただ、若い頃聴かなかった理由もわかるような気がする。お洒落で美しい演奏だが、予定調和的で、つまらなく感じたのだろう。もちろん、忌み嫌うような演奏ではない。定年したら、肩の力を抜いて聴けるかもしれない。
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