WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ソードフィシュ・トロンボーン

2007年03月12日 | 今日の一枚(S-T)

●今日の一枚 137●

Tom Waits     Swordfishtrombones

Watercolors0004_5  私の住む街では今日一日雪だった。といっても、そんなに積もったわけではないが……。毎年思うのだけれど、雪の日には暖かい部屋で、雪景色でも見ながら、一杯やるに限る。そう考えて飲んでいたら、やや深酒してしまった(いつもだが……)。おまけに、CSの日本映画専門チャンネルでたまたまやっていた映画『トニー滝谷』を見て、妙にしんみりした気分になり、もう少し酔いたい気分になってしまった。そんな心持ちでしばらくぶりに取り出したのが、酔いどれ詩人トム・ウエイツだ。

 トム・ウエイツの1983年リリース作品『ソードフィシュ・トロンボーン』。数あるトム・ウエイツの作品の中でも私が最も好きな、かつ印象深く忘れ難いアルバムである。考えてみれば、このアルバムが真にリアルタイムで聴いたトム・ウエイツの最初の作品である。全編が素晴らしい。ただ、そのメロディーと詩に酔いしれるのみである。しかしやはり、⑥活気のない町、⑦イン・ザ・ネバーフット、⑫兵士の持ち物、などは格別である。メロディーが琴線に触れ、卒倒しそうである。そして、物悲しく美しいインストロメンタル曲⑮レインバーズで終わる構成は秀逸である。伝えたいこと、伝えるべきことをインストロメンタルで暗示して作品は唐突に終わる。

 1980年代前半、貧乏学生の私はこのアルバムを何十回聴いたことだろう。アルバイトで稼いだ小銭をもとでに、この作品を録音したテープをポケットに入れ、よくバーにいったものだ。安酒をなめながら、青臭い議論をした。背後にはいつも持参のこのアルバムが流れていた。

 1983年……、我らが時代……。


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