WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

チャーチルのVサイン

2021年05月22日 | 今日の一枚(A-B)
◎今日の一枚 505◎
綾戸智恵
Life
 ある俗説の話だ。第二次世界大戦期にイギリスを率いたW.S.チャーチルはよくVサインをしたが、戦後、その意味を問われてこう答えたというのだ。《このサインは、victry(勝利)の意味でもあるが、peace(平和)の意味でもある。一本の指は広島、もう一本の指は長崎。2つの原爆で世界は平和になった。》
 これは全くの俗説のようだ。チャーチルがよくVサインをしたことは事実であるが、あくまでvictry(勝利)の意味で使っていたのであり、戦時中から勝利への意志を示すために使っていたものだ。Vサインがピース(平和)と結びつくのは、60年代にベトナム反戦運動を展開した、ヒッピー文化の中でのことだったらしい。広島や長崎については後付けされたものではないかと考えられる。
 どのような経緯でこの俗説が流布したのかはわからない。ある予備校教師の本などに出てくるようであるが、典拠は示されておらず、この予備校教師が単独で考えたホラ話なのかどうかわからない。恐らく、元ネタがあったのだろう。悪意を感じる俗説である。
 今日の一枚は、綾戸智恵の『ライフ』である。1999年の作品である。つい最近のことような気がしていたが、綾戸智恵が旋風を巻き起こしたのも、もう20年も前の事なのだ。感慨深い。綾戸智恵がジャズではないといわれれば、それでもよい。事実、綾戸はジャズ雑誌にはほんんど取り上げられなかった。ただ、それまでの日本にはほとんどいなかったような種類の、ソウルフルでスピリチュアルでアグレッシブな歌唱だったことは間違いないだろう。所有する数枚のアルバムの中では、この作品が一番好きだ。ソウルやゴスペル、ブルース、そしてジャズなど、多彩なバックボーンを感じさせられる、歌心溢れる歌唱が展開される。しばらくぶりに手に取ったが、やはり、折に触れて時々聴きたい作品だと改めて思った。⑬夜空ノムコウは、日本に存在するこの曲の演奏の中で、最高の名唱だと思う。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿