皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

佐間天神社

2018-10-04 22:01:13 | 神社と歴史 忍領行田

天神様の御祭神は菅原道真公であるのは有名だが、菅原公の神霊を天満大自在天神といったので、これを略して天満天神といった。佐間の天神社は享保五年(1720)京都吉田家から正一位天満天神の位階を贈られているが、創建は成田氏忍城築城時代に遡る。先述の谷郷春日神社は大きな樋があり、これを閉ざせば忍沼の水が干き、一方佐間口の天神社の地は沼尻の樋がある場所でこちらは開けば沼水が干くとされた。忍城築城の秘密が両社の森によって隠されていたのである。

城の守護として成田家の重臣正木丹波守利英の邸宅があり、石田三成忍城攻めの際にはここ佐間口で奮闘したことが成田記等に記されている。映画「のぼうの城」で正木丹波守を熱演したのは佐藤浩一だった。

東向きの立派な神門が目に留まるが、安政三年の大火で消失している。しかしここで火が止まったとされ再建後火防の門として崇められたという。また神門に掛かる扁額「天満社」の文字は著者不明ながら、東照宮神楽殿の筆勢と同一視され文政年間の家老鳥居強右衛門の書と考えられている。鳥居強右衛門は桑名から忍に移り居を構えた忍藩家老の家柄であったが、その祖先初代強右衛門は、武田勝頼と信長・家康連合軍の戦(長篠合戦)の際、長篠城を死守し、命がけで家康に急を知らせた軍神として語り継がれているという。

境内にある大欅は樹齢4百年を超えるとされ市の文化財にもなっている。『増補忍名所図会』によれば内陣に御神体として天神座像があるという。また境内にあった御神木の梅の古木はいつの頃か雷にうたれ枯れてしまったという。天神社には梅が多い。殊に大宰府天満宮の梅は有名で、一夜にして京からたんだと伝えられ『飛び梅』として名高い。

御祭神菅原道真公が朝廷の権力闘争に敗れ、大宰府に左遷され詠んだ歌はあまりにも有名だ

『東風吹かば 匂いおこせよ 梅の花 あるじなしとて 春を忘るな』

学問の神として祀られる天神社だが、江戸時代には手習いの神として寺子屋へ通う過子供の守り神であったという。

本殿裏には多くの記念石碑が見られ、旧忍沼(水城公園)へと向う道の脇には塞神が祀られている。

 

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風吹けば桶屋儲かる

2018-10-04 21:15:11 | 物と人の流れ

 今年は台風が多い。先週の24号ではJRの計画運休が実施され、ここ北関東でも猛烈な風が吹いた。深夜未明の時間帯で近年にない強風であったため被害も大きかった。風の音で眠れないということはこれまでなかったと思う。関東平野の真ん中で治水も良く、自然災害とは無縁の地域と思い込んでいたが今回庭の松が強風で倒れてしまった。代々手入れをしてきた木でとても残念だったが、災害に対して認識を改める機会となった。

更には物置の屋根も一枚強風で剝がれてしまい、会社も休んで修復した。幸い自力で直すこともできた。

屋根を直すにあたりすぐに向かったのは最寄りのホームセンター。生活用品はもちろん農業用品、資材と何でもそろう。

台風一過の昼前に釘を買いに出ると、売り場は年配者を中心にかなり込み合っていた。業者と思われる人も多かった。住環境に関して修復は早く、また自分でできることは自分でやりたいと思う人が多いのだろう。もちろん自分もその一人だ。まさにDO IT YOUR SELF。ホームセンターのコンセプトそのままに。

諺に「風吹けば桶屋儲かる」とある。意外なところに影響が出る、或はあてにならない期待をすることのたとえとある。江戸時代にできたようで『東海道中膝栗毛』にも表現があるという。『世間学者気質』(明和五年)では「今日の大風で土埃が立ちて世間に目くらが大ぶんできる。そうすると猫の皮が大変といるようになって世の中猫が大分へる。そうなれば鼠があばれだすによって、おのずから箱の類をかじりおる。ここで箱屋をしたらば大分よかりそうなものじゃと思案は仕出しても、是も元手がなくては埒明かず」と記されている。

つまり大風で埃が立ち、埃が目に入り盲人が増える。盲人は三味線を買う。(当時の職による)三味線に使う猫の皮が要り、猫が減れば鼠が増える。鼠が桶をかじると桶屋の仕事が増えるという。

 盲人の三味線や猫皮など江戸期の文化、世相が反映された表現だ。

諺の意味合いとは異なるが、風が吹けば物を介して同じように人が動く。売り場の混雑を見ながらそんなことを感じていた。

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