講談社文芸文庫の中村真一郎『雲の行き来』の表紙を眺めていたら、昔のことがふいに思い出されました。
1997年のある日の夕方。まだ宮城県に住んでいた私は、母と2人で地元のニュースを見ながら、夕食をとっていました。そこで流れてきたのが仙台駅前に大型書店出店のニュース。仙台随一の取扱本を要し、書店内には座って本が読めるように椅子も設置、しかもちょっとしたカフェまであるという!本好きな母と私は歓喜したのでした(笑)それがイービーンズに開業したジュンク堂です。
それからというもの、私はずいぶんジュンク堂にお世話になりました。品揃えは素晴らしかったし、各棚に専門の書店員が居て、質問があるといろいろと答えてくれるのです。上のフロアは洋書と岩波書店を取り扱っていて、英語の教材はここでずいぶん買いました。
店内でも特に輝いていたのが、講談社文芸文庫の棚。この文庫は一冊ごとに表紙の色が違うので、集合体になるととてもカラフルなのです。ジュンク堂でも一際目立ち、そこだけ別にスポットが当たっているのではないかと思うほどきらびやかだったように記憶しています。あまりにもそのフロアが好きすぎて、いつしか、友達との待ち合わせ場所は講談社文芸文庫の棚の前に!(笑)
それから、私が仙台を離れてからも、帰省のたびにジュンク堂を利用し、前と変わらない店内の雰囲気に安心したものです。しかし、東日本大震災後はジュンク堂の様子がよくわからず、落ち着いた時にはすでにジュンク堂はそこから撤退していたのでした。
ジュンク堂開業に一緒になって喜んだ母もすでに亡く、書店に通い詰めた日々がずいぶん懐かしく思われます。私の思い出になってくれたジュンク堂に感謝をしたくて、今日はこのブログを書きました。記憶を蘇らせてくれた『雲の行き来』にも感謝ですね。