学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

「川端龍子ー超ド級ーの日本画」展をみる

2017-08-05 21:24:42 | 展覧会感想
私の大学時代のゼミで、川端龍子(かわばたりゅうし)を研究していた同級生がいました。ゼミ内での研究発表会で、彼は龍子の魅力を熱く語ってくれたのですが、彼が具体的にどんなところを魅力として考えていたのかは、もう私の記憶にあらず。彼が発表した内容を知るためには、実家の押し入れにしまってあるゼミのレポート集を読むしかありません。

川端龍子没後50周年の展覧会が、山種美術館で開催されています。龍子の代表作が一同に会するとのことで、見るのを楽しみにしていた展覧会です。私が見たかったのは《香炉峰》(1939年)です。図版で何度も見ているのですが、ぜひ本物を見てみたいと。実際に見てみると、「超ド級」、とにかく大きくて、やはり図版で見るのではインパクトが違う。龍子の爆発的なエネルギーを感じさせる作品です。この作品、中国上空を飛んでいる航空機がスケルトンになっている。航空機の部品が何だかリング状の特殊なビームでも発射しているかのような。日の丸はオレンジ。戦争と関わっている作品なんだけれど、そこまで戦争にこだわっている感じはしなくて、むしろそれを利用して日本画としての新しい試みをやっているように見えます。同作品の前にちょうど椅子が置かれていて、ついつい5分ほどぼんやりと眺めていました。このほか、良かったのは《龍巻》(1933年)。まるで海の底が抜けたかのように落下していくサメやエイ、クラゲなどが描かれています。とても躍動感のある絵なのですが、でもどこか「落下する」というあまりいいイメージを与えないところが妙だなあと。太平洋を舞台に迫りくる戦争に向けての「死」のイメージなのでしょうか。

龍子の絵を見ていて、冒頭に出てきた彼の姿が思い浮かんできました。大学時代の私は、自分の興味のある分野しか突っ込んでこなかったから、龍子にほれ込んでいた彼の言葉があまり頭に入っていなかったのかもしれません。今なら色々な話ができそうなのに。

それはともかく見ごたえアリの展覧会です。前期展示も見たかった!8月20日までの会期です。