学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

ゴーゴリ『鼻』

2009-09-03 21:35:36 | 読書感想
ゴーゴリ(1809~1852)の代表作『鼻』です。小説自体は長くない、長くないけれども、謎めいたこの小説の感想を書くのはなかなか骨が折れる(苦笑)

舞台はペテルブルグ。朝、理髪屋イワンが焼き立てのパンを食べようとしたら、その中から「鼻」が出てきます。そう、人の顔にある「鼻」です。あって欲しくはないことですが、現実の世界ならグロテスクで卒倒してしまいそう…。しかし、そこは小説。イワンは「鼻」を捨てるために町中を歩き、そしてとうとう河へ捨てたところへ巡査が来て…ここで話が一度途切れます。今度は、その「鼻」の持ち主であるコワリョフが自分の「鼻」を求めて冒険する話。とうとう「鼻」を見つけたと思ったら、「鼻」はなぜか自分よりも位が上のお偉方になっていて…(もちろん、あの「鼻」に位もなにもあったものではありませんが、この小説では「鼻」が人間のように扱われている箇所があります。しかも「鼻」は会話までします。)

あらすじを少しご紹介しましたが、とても奇妙で滑稽な小説です。『鼻』に作者のメッセージがあるとしたら、小説の最後に注目してみましょう。なんだか、もどかしくて、かなり歯切れが悪いのです(笑)最後の最後まで、読者はぼかされてしまう。それが、もしかするとゴーゴリの狙いだったのかもしれませんね。現実と夢の間に…。

●『外套・鼻』ゴーゴリ作 平井肇 訳 岩波文庫 1938年

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