(1)イラスト、似顔絵、装丁、映画、作曲などに手を染める多芸多才な和田誠は、俳人でもある。
その句集『白い嘘』(梧葉出版、2002)は、現在入手しがたい。本体2,000円(税別)の本が、アマゾンに8,799円もの高価格で出品されている。
復刊ドッコムのリストに名を連ねているが、復刊されるのはまだ先だろう。
したがって、当面は引用された句から句集『白い嘘』の雰囲気を察するしかない。
(2)大岡信は、「折々のうた」2002年5月1日から2003年4月30日までの1年間に、和田を2回選んでいる。
岩波新書の『折々のうた』『新折々のうた』は、四季別に編集されているから、朝日紙に掲載された時期はわからない。しかし、本文からすると、最初に採られた句は、次のものらしい。
食欲を振り捨てて蛇穴に入る
評語にいわく、「白い嘘」はホワイト・ライ(英語でいう「他愛もない嘘」)から借りたもの(和田自身の弁)。<「ことば」が好きなのである。さまざまなイメージを喚起させる言葉の力が。これは嘘ではありません。>と後記から引く。さらに数句を引いて、「真に迫る面白さ」と評している。
ムー大陸行きの切符や四月馬鹿
竹光を抜けば黴散る舞台かな
佃煮の蝗食ふ人食はぬ人
「折々のうた」が採るもう一句は、
花の名でしりとりをせむ苗木市
この句も、<いかにも白い嘘の感じ。が、少し大規模な苗木市だったら、まさに句のような楽しい情景が目の前に拡がりそうだ>。
<軽やかさにおいて現代俳句界に異色の伸びやかさを持つ>というのが、句集『白い嘘』に対する大岡信の総評だ。
(3)なお、「折々のうた」がとりあげていない『白い嘘』作品で、ネットで散見されるものに次のようなものがある。
パレス座の跡の空地や母子草
少女の日の君を立たせよ青芒
冬の月天動説を疑はず 【注1】
春光や家なき人も物を干す
人形も腹話術師も春の風邪 【注2】
風車草の匂ひの幼年期
蛍籠覗けば近 し天の底
ハンカチに海のかけらをくるみけり
昭和色した卓袱台や菜飯食ふ
秋茄子をデニムの膝で磨きけり 【注3】
ひもとけば句集の余白に秋来る 【注4】
【注1】以上、梧葉出版による広告「近刊 和田誠第一句集『白い嘘』」。
【注2】以上、検索エンジン「増殖する俳句歳時記」。
【注3】以上、「読前読後]句集ふたつ」。
【注4】以上、「[読前読後]和田誠さんと俳句」。
□大岡信『新折々のうた7』(岩波新書、2003)
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その句集『白い嘘』(梧葉出版、2002)は、現在入手しがたい。本体2,000円(税別)の本が、アマゾンに8,799円もの高価格で出品されている。
復刊ドッコムのリストに名を連ねているが、復刊されるのはまだ先だろう。
したがって、当面は引用された句から句集『白い嘘』の雰囲気を察するしかない。
(2)大岡信は、「折々のうた」2002年5月1日から2003年4月30日までの1年間に、和田を2回選んでいる。
岩波新書の『折々のうた』『新折々のうた』は、四季別に編集されているから、朝日紙に掲載された時期はわからない。しかし、本文からすると、最初に採られた句は、次のものらしい。
食欲を振り捨てて蛇穴に入る
評語にいわく、「白い嘘」はホワイト・ライ(英語でいう「他愛もない嘘」)から借りたもの(和田自身の弁)。<「ことば」が好きなのである。さまざまなイメージを喚起させる言葉の力が。これは嘘ではありません。>と後記から引く。さらに数句を引いて、「真に迫る面白さ」と評している。
ムー大陸行きの切符や四月馬鹿
竹光を抜けば黴散る舞台かな
佃煮の蝗食ふ人食はぬ人
「折々のうた」が採るもう一句は、
花の名でしりとりをせむ苗木市
この句も、<いかにも白い嘘の感じ。が、少し大規模な苗木市だったら、まさに句のような楽しい情景が目の前に拡がりそうだ>。
<軽やかさにおいて現代俳句界に異色の伸びやかさを持つ>というのが、句集『白い嘘』に対する大岡信の総評だ。
(3)なお、「折々のうた」がとりあげていない『白い嘘』作品で、ネットで散見されるものに次のようなものがある。
パレス座の跡の空地や母子草
少女の日の君を立たせよ青芒
冬の月天動説を疑はず 【注1】
春光や家なき人も物を干す
人形も腹話術師も春の風邪 【注2】
風車草の匂ひの幼年期
蛍籠覗けば近 し天の底
ハンカチに海のかけらをくるみけり
昭和色した卓袱台や菜飯食ふ
秋茄子をデニムの膝で磨きけり 【注3】
ひもとけば句集の余白に秋来る 【注4】
【注1】以上、梧葉出版による広告「近刊 和田誠第一句集『白い嘘』」。
【注2】以上、検索エンジン「増殖する俳句歳時記」。
【注3】以上、「読前読後]句集ふたつ」。
【注4】以上、「[読前読後]和田誠さんと俳句」。
□大岡信『新折々のうた7』(岩波新書、2003)
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