語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

書評:『兵役を拒否した日本人』

2016年04月17日 | ノンフィクション
 ドストエフスキーの一登場人物はいった、「イエスが現代に甦ったならば、今の教会から異端と宣告されるであろう」と。
 原点に立つ宗教者は、現実と対峙する。制度化され、社会体制に組みこまれた宗教組織とも鋭く対決する。

 戦前、無教会主義キリスト教の一派、ワッチ・タワーの初代日本支部長をつとめた明石順三も現代に甦ったイエスの一人であった。
 明石は1889年生、18歳で渡米した。ロサンゼルスやサンフランシスコで邦人向け新聞の記者として働くうちにワッチタワーの運動にふれ、入信。帰国して灯台社を設立し、1926年から精力的に伝道した。最初は神戸に拠り、ついで本拠を東京へ移した。

 記者の経歴からもわかるように、明石は広い社会的視野の持ち主であった。その伝道は、既成宗教団体の腐敗を批判するだけでなく、ファシズム批判や戦争批判におよんだ。
 当然ながら当局ににらまれ、1933年に最初の弾圧を受けた(大本教弾圧に先立つ)。
 明石は屈せず、2年後に再建する。当時、組織的に戦時下抵抗をおこなっていた共産党は壊滅状態にあり、まさにその名のとおり、灯台社の活動は暗夜の灯であった。

 折しも徴兵された社員の3名が兵役を拒否する。
 銃器を返還したときの上司の反応は、周章狼狽、動転、畏怖であった。
 事態を重視した当局は、1939年、第二次弾圧に踏みきる。支部長の明石から奉仕員の少女まで130余名の社員を連行して、数年間にわたる拷問、暴行、迫害のかぎりをつくした。
 弾圧は朝鮮や台湾(高砂族)の信者にもおよび、とりあつかいは苛酷であった。
 その結果、明石の妻をはじめとする多くの社員が獄死、病死、発狂する。

 兵役を拒否した村本一生は、獄中手記で、中国侵略の不当性を衝き、日本の敗戦を予言した。村本は生きのびて、戦後、栃木県の鹿沼に居を定めた。
 明石も生きながらえて敗戦をむかえ、村本と合流した。戦後、新たに手にしたワッチ・タワーの文献をむさぼるように読んだが、失望する。
 明石は、米国の総本部へ7か条にわたる長文の批判書を送った。米国のワッチ・タワーが国旗を掲げたのは信仰への裏切りではないか、戦争に協力したのは単に組織拡大に窮々としただけではないか、云々。
 そこには、教義に忠実に非戦を貫いた自信があふれている。
 総本部は応えず、除名の処置をもって対処した。思想の正邪を問わず、組織による物理的的排除をおこなったのである。

 ワッチタワーとの関係を断たれてからは、明石は伝道に従事していない。
 晩年、執筆に没頭したが、その立場は戦前から変化していない。村本一生も静かに市井に生き、あえて戦時下抵抗を誇ることはなかった。

□稲垣真美『兵役を拒否した日本人 -灯台社の戦時下抵抗-』(岩波新書、1972)
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【地方】財政破綻から10年目の夕張 ~「一億総活躍」の近未来~

2016年04月16日 | 社会
 (1)2016年3月、日本で唯一の財政再建団体、夕張市は、財政破綻から10年目を迎えた。
 1990年代、国のエネルギー政策の転換と炭鉱事故の中で、夕張市の経済の柱だった炭坑も閉鎖した。「炭坑から観光へ」を掲げ、過大な観光投資に打って出た夕張市は、2007年、巨額の財政赤字を抱えて財政破綻した。
 小泉政権以降の「小さな政府」「自己責任」の流れの中で、市民はその返済を一身に負った。毎秒67円ずつ2026年度まで続く返済のため、税は引き上げられ、公共サービスは引き下げられ、国の承認がないと新しい政策を立てられない管理状態に置かれた。

 (2)破綻を招いた観光業への転身は、実は当時の通産省(現・経産省)がレーガン政権下の米国にならい、製造業空洞化への対抗策として強力に推進したものだった。借金による過剰投資のおかげで、夕張市は一瞬、通産省の成功モデルとなった。その挙げ句の果てが財政破綻で、次には財政を切り詰めない自治体への懲罰モデルとなった。
 地域再生の頭脳ともいえる市役所の職員が半分に削られ、賃金の大幅カットで生活が維持できず、市外へ転職する職員も増えた。
 公務員の顧客の減少が、商店の閉店を一段と促した。
 温水プールや美術館も、雪下ろしに手が回らない中、雪の重みでつぶれた。かくして、再生へ向けた資源となり得た公共施設が消えていった。
 
 (3)明るい要素もある。
 夕張市を支えようと、市外から「よそ者」「若者」が集まる。
 鈴木直道・市長、30代、元都職員が奔走し、炭坑住宅や炭坑史跡を生かしたまちおこしや、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭に取り組む若い世代も目立つ。
 新千歳空港、苫小牧港に近い利便性が着目され、シチズンやツムラなど大手企業も進出している。

 (4)一方では、公共サービスの低下に不安を抱く子育て世代は流出を続け、ピークの1960年に11万人だった人口は1万人を切った。
 少子化率、高齢化率は日本一だ。
 働き盛りが少なく、進出企業の労働力は近隣自治体頼み。これでは市の経済活性化に直結しない。

 (5)経費削減の中、
  (a)公衆トイレの一部は、「ネーミングライツ」方式(企業がスポンサー)となった。
  (b)地域の集会場は、町内会が「指定管理者」になった。支えるのは高齢者が大半を占める地域のボランティア活動だ。

 (6)だが、「民間の知恵と工夫」で基本的な生活条件は守ろうと奮闘してきた(5)-(b)の彼らにも9年間のボランティア疲れが広がる。
 公共サービスを住民が懸命の無償活動で埋める姿は、安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」の近未来図だ。
 地域に必要なのは、「希望出生率」のような目標設定ではない。
 働いて生きるためのインフラ整備だ。
 10年目の夕張市は、生活への公的資金を削り、新幹線や軍備などの「国力」へ回しているアベノミクスへの警鐘だ。

□竹信三恵子「財政破綻から10年目の夕張に「一億総活躍」の近未来が見える ~経済私考~」(「週刊金曜日」2016年月8日号)
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【教育】文科省記者クラブに協力・加担の責任 ~検定の情報隠し~

2016年04月15日 | 社会
 (1)3月18日、教科書の検定結果が公表された。例年より約半月早い。主に高校1年生用で、現行版の部分改定に当たる。

 (2)2014年1月、文部科学省は多くの反対意見を押し切り、新検定基準を定め、政府の統一見解に基づく記述を義務づけた。さらに学習指導要領の解説で、竹島と尖閣諸島を「日本固有の領土」と明示することを要求した。
 日本政府の立場ばかり際立たせた検定指示に、多くのメディアが疑問を示した。当然だ。
 一方で、「産経新聞」と「読売新聞」は肯定的だった。

 (3)今回の検定では、加筆ではなく現行版で認められている記述が、書き換えさせられた例が続出した。
 「日本史A・B」では検定意見206件のうち73件、「現代社会」でも66件に達している。
 そのようなことになった理由を、文科省は「これまでが寛容すぎた」からだと説明した、という(3月18日のNHK)。
 この理由づけこそ、検定が恣意的に実施されていることを如実に物語っている。
 前回2011年度の検定は民主党政権下で、今回は安倍自民党政権下だ。
 だが、このコメントを引き出したNHKを始め、主要メディアは淡々と事実を伝えるばかりで、政治状況に迎合している検定の、この不当性を追求していない。3月19日付け「中国新聞」などが、社説で厳しく批判した程度だ。

 (4)さらに、情報だけ伝えて、問題意識をまったく示していない記事がある。文科省が、今回の検定の関係資料を「6月から公開」すると伝えた記事だ。
 検定期間中、文科省は検定申請本(白表紙本)や検定意見一覧、修正表(書き換え記述の一覧)などを外部に漏らすことを厳禁している。
 それらは、報道解禁(今回は3月18日)のほぼ半月前に記者クラブに渡される。解禁までの期間い記者たちが取材の過程でそれらの情報を部外者に示すことは黙認されているが、重要な事例や記述を見落としていることが少なくない。
 今回も、「請願権(憲法16条)」の記述をほぼ正しく記述したのは、「現代社会」と「政治経済」の合計12冊のうちで2冊だけだった。だが、その点を指摘した報道は皆無だった。
 その他の重大な誤記や注目すべき記述の存在を、関心を持つ者が知るには、6月以後の資料公開を待つしかない。情報開示請求では、膨大な量の資料を相手に、手間ひまがかかる。

 (5)検定資料の公開開始は、
   以前・・・・4月26日までに
   2009年・・・・5月25日から
   2014年・・・・6月3日から
 今回も6月2日の鹿児島市会場から。
 関係者が最も多く、来場最多の東京会場は6月7日から。
 文科省は、書き換え後の見本本が揃うのを末ため、という。しかし、見本本の提出期限は5月の連休前後だ。以前は、「提出があり次第順次公開する」とされた。
 文科省は、国会での論議を嫌い、会期末頃まで情報を隠すことが多い。
 記者クラブでは、結果として文科省の情報隠しに協力・加担している。
 情報独占の厚遇に惑わされ、権力監視の役割を忘れたのでは、自殺行為だろう。

□高嶋伸欣(琉球大名誉教授)「検定の情報隠しで文科省記者クラブに協力・加担の責任!」(「週刊金曜日」2016年4月8日号)
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【原発】は仮処分で1勝すれば止まる(2) ~福島原発告訴団~

2016年04月14日 | 震災・原発事故
 (6)福井地裁・高浜原発3、4号機運転差し止め仮処分決定(樋口英明・裁判長、2015年4月14日)や今回の大津地裁決定【注1】にしてもそうだが、原子力規制委員会の再稼働許可が下りていないと保全(保護して安全であるようにすること)の必要性がないと裁判所が判断するのは、「共通ルール」みたいになってきている。その証拠に、高浜原発3、4号機に原子力規制委員会の再稼働許可が下りる前の大津地裁決定(2014年11月27日)では、脱原発弁護団の仮処分申し立ては却下されている。
 だから、今後は原子力規制委員会の再稼働許可が下りた原発に対し、どんどん仮処分の申し立てをしていく。
 直近では、福島第一原発事故5周年の節目の日である3月11日に、すでに再稼働許可が下りている四国電力伊方原発3号機の運転差し止め仮処分を広島地裁に出した。この仮処分申請は、同原発1~3号機の運転差し止めを求める本訴と同時に行われた。

 (7)ここにきて、司法を舞台とした仮処分申請が非常に有力な手段であることがわかってきたわけだが、政治の舞台では、自治体の首長たちが原発の再稼働に反対し始めている。そうやって再稼働する原発を1基でも減らし、また、再稼働を先送りにさせている間に、自然エネルギーを増強していく、というのが河合弘之・弁護士の戦略だ。
 自然エネルギーは儲かる・・・・ということに気付けば、大企業も中小企業も、一斉になだれこんでくる。そんな自然エネルギーのブレイクスルーを河合弁護士ら市民の力で引き寄せなければならない。それができれば、ドイツみたいにかっこよく、凜として脱原発できる。
 ドイツが脱原発に踏み切れたのは、ドイツ国民とドイツ経済界が自然エネルギーを信用しているからだ。日本でもそこまで持っていければ、市民たちは勝てる。

 (8)原発を動かしながら、徐々にフェードアウトさせていくのではなく、原発はもう動かさない。事故を起こせば破局的損害を破局的損害を招く原発は、即、全部止める。
 自然エネルギーに移行していく過程のつなぎは、発電効力を高めたコンバインドサイクル発電や天然ガス(LNG)のコージェネレーションだ。石炭、石油、天然ガスといった化石燃料を、改良された最新技術で使いながら、なるだけ早く自然エネルギーに移行していく。
 そのため「原動力」となる3作目の映画を、河合弁護士らは制作中だ。タイトルは「自然エネルギー 未来からの光と風(仮題)」だ。

 (9)放射能汚染を太平洋に垂れ流し続ける「公害犯罪処罰法違反」の疑いで書類送検された東電と新旧役員32人に対し、福島地検は3月29日、「立証が困難」として不起訴処分とした。
 東電は汚染水管理を怠り、汚染水タンクから高濃度の放射能汚染水を漏洩させる一方、地下水や海洋いんまで汚染を拡大させた。
 しかも抜本的な汚染水対策を講じると1,000億円の費用がかかり、東電が債務超過に陥って経営破綻するとして、意図的に汚染水対策が先送りにされたことを示す証拠まであった。
 海洋汚染はれっきとした事実だ。原因企業も特定できている。それなのに、誰も海洋汚染の責任を取らなくていいのか。
 今回の不起訴処分は、東電を助長させ、「何をやっても許される」という慢心を与えるだけだ。検察の責任は重大だ。

 (10)福島原発告訴団【注2】が、東電と役員らを同法違反の疑いで福島県警に刑事告発したのは2円前の2013年9月3日だった。
 申立人が、6,000人以上に達したこの告発は、正式受理されたものの、捜査は2年間にわたり、ダラダラと続けられた。そして、2015年10月、同県警はようやく書類送検した。
 今回、福島地検が公表した不起訴理由を見ると、福島沖の海水や海産物から検出される放射能は、2011年3月の大事故発生時に漏れ出した放射能なのか、それともその後の過失によって漏れ出した放射能なのか区別がつかないので、公衆の声明に危険を生じさせたかどうかを立証するのは「困難」だという。
 すべてがこの調子だ。はじめに「不起訴」の結論ありきで、屁理屈を並べたものでしかなかった。
 むろん、福島原発告訴団は、処分を不服として、福島検察審査会に対して、審査を申し立てる。

 【注1】
【原発】画期的な大津地裁の仮処分決定
【古賀茂明】【原発】再稼働の愚 ~事故頻発~

 【注2】
【原発】「5年目のフクシマを忘れないで」集会
【原発】福島原発告訴団の第2回総会/ふくしま集団疎開裁判の二審判決
【原発】福島原発告訴団、地検に東電本店の強制捜査を申し入れ
【原発】福島原発事故に係る集団訴訟の現在 ~2013年2月~
【原発】集団告訴団14,586人の「次の標的」 ~NHK、東大の学者~
【原発】集団告訴第二陣、ただ今7,600人 ~受付締切は10月末~
【原発】紫陽花革命が大手メディアを揺さぶる ~正しい報道ヘリの会~
【原発】「さようなら原発」17万人集会の記録
【原発】福島県民、東京電力を集団告訴 ~勝俣東電会長の逃げ切りを阻止~ 

□河合弘之/聞き手・まとめ:明石昇二郎「脱原発弁護団全国連絡会共同代表/河合弘之弁護士に聞く 仮処分で1勝すれば原発は止まる」(「週刊金曜日」2016年4月8日号)
脱原発弁護団全国連絡会
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 【参考】
【原発】は仮処分で1勝すれば止まる ~河合弘之弁護士に聞く~


【原発】は仮処分で1勝すれば止まる ~河合弘之弁護士に聞く~

2016年04月14日 | 震災・原発事故
 (1)2016年3月9日、大津地裁が関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止め判決を下し、原発が再び稼働できなくなった。【注】
 動き始めたばかりの高浜原発3号機を止められたことには、非常に大きな意味がある。今後の戦略を考える上でも、非常に重要だ。
 動いていない原発を「動かすな」という裁判所命令と、動いている原発を「止めろ」という裁判所命令では、世論や電力会社に与える心理的影響もまったく違う。
 今まで「動かす前に止めよう」「再稼働させないことが勝負だ」と言ってきたが、今回の運転差し止め仮処分決定で、動いてからでも仮処分を勝ち取れることがわかった。スピードは大事だが、「再稼働されたら終わりだ」などと思わなくていい。諦めなくていいし、焦る必要もない。

 (2)電力会社としては「動かしてしまえばこちらのものだ」とばかりに、再稼働を既成事実化してしまおうと考えていたのだろうが、それが今回の仮処分で通用しなくなった。さらに、動かしたばかりの原発を止めるとなれば、手間や費用が余計にかかる。
 だから、電力会社は仮処分がかかっている限り、枕を高くして眠れない。
 今回の差し止め仮処分決定では、原発立地県外の裁判所で仮処分を申し立てるのが大変有効であることがわかった。
 その地域の社会や経済の真ん中にいる裁判官は、そうしたものからの影響と無縁ではいられない。そこに原発があれば、影響を受けてしまうし、遠慮も働く。
 でも、県外であれば、事故が起きれば被害だけ受ける「被害地元」なので、私の故郷をどうするつもりだという思いに、裁判官も共感できる。特に大津は、市民も裁判官も皆、美しい琵琶湖を見ながら暮らしているわけだ。要するに、「被害地元」にある裁判所での申し立てが大変重要であることがわかった。
 最初の裁判所で1敗しても、次の裁判所で1勝すれば、原発の運転は差し止められるのだということが、事実として広く世間に示されたことも大きい。1回目は負けても、別の裁判所で改めて勝負できる。
 一方、電力会社は全勝しなければならない。

 (3)もうひとつ、仮処分の申し立てのいいところは、短期にやることができることだ。そのため、裁判所が策動しにくい。最高裁が介入しづらい。
 今まで、何百人もの原告で本訴を行い、何年もかけ、いいところにまで訴訟を持って行っても、最後の段階になって「国や電力会社が負けそうだ」と最高裁が察知すると、裁判官を替えられ、負けたことがある。
 ところが、短期間で結論を出す仮処分では、裁判官を替えにくい。スピードの速い仮処分は、その動向も察知しにくい。
 ただ、今後は、関西電力が大津地裁に申し立てた仮処分決定への異議(異議審)と執行停止の審理で、最高裁が人事介入してくる可能性がある。
 大津地裁での異議審は、運転差し止め仮処分決定を出した山本善彦・裁判長が担当することが決まった。裁判官の少ない地方の裁判所では、同じ裁判官が異議審も担当することが多い。
 異議審では、山本裁判長と右陪席の裁判官が引き続き担当して、左陪席の裁判官だけ替わる。山本裁判長の任期はあと1年あるので、常識的に考えれば、山本裁判長たちがその任期中に異議審の決定を行う。人事異動のルールは、基本的に3年に1度とされているからだ。
 しかし、裁判長クラスとなると、「玉突き人事」という例外がある。誰かの昇格人事に合わせ、玉突き式に早めに異動するケースだ。最高裁がそれを装って、山本裁判長をはじめとした大津地裁の合議体を替えてくる恐れがある。
 そうされる前に、脱原発弁護団全国連絡会は今、最高裁に対して「そんな策動をするなよ」という声明を出し、牽制することを考えている。

 (4)八木誠・関西電力社長/電機事業連合会会長が、3月18日、「上級審で逆転勝訴した場合、(仮処分を申し立てた住民への)損害賠償請求は検討の対象になりうる」と、電事連の定例記者会見で語り、動揺を露わにした。脅しだ。角和夫・阪急電鉄会長/関西経済連合会副会長に至っては、「なぜ一地裁の裁判官によって、国のエネルギー政策に支障をきたすことが起こるのか」「こういうことができないよう、速やかな法改正を望む」と、さらに踏み込んだ発言をしている。
 角関経連副会長の発言は、本当に軽蔑すべき言いぐさだ。無知蒙昧のかぎりだ。司法と三権分立の原理をまったく心得ていない。行政が行き過ぎた時、誰が止めるのか。司法だ。
 八木関電社長の発言は、スラップ訴訟(恫喝訴訟)をやるぞ、どいう脅かしだ。社会的責任がある大企業の経営者として、あるまじき態度だ。
 福島第一原発が証明しているように、原発は本当に危険だ。きちんとした証拠に基づいて申し立て、それを裁判所が認めた結果、出た決定だ。

 (5)しかも、今回の決定文を見ると、
「主張及び疎明を尽くすべきである」
「根拠、資料に基づいて疎明されたとはいい難い」
「相当な根拠、資料に基づき主張及び疎明をすべきところ--十分な資料はない」
「十分な主張及び疎明がされたということはできない」
「主張及び疎明は尽くされていない」
 と「疎明」という言葉が何度も登場してくる。
 「疎明」は裁判用語の一種で、裁判官が「そうだ」と確信するには至らないまでも、係争事実の存否について一応「確からしい」という推測を裁判官が得られる状態、あるいはそのために当事者(ここでは関電)が裁判所に証拠を提出する行為のことだ。
 決定文は、その「疎明」が足りないので、原発の運転を差し止める、と言っている。疎明が足りないのは誰のせいなのか。疎明を尽くさなかった関電自身のせいだ。文句があれば自分に言え、ということだ。
 八木発言については、住民側弁護団と脱原発弁護団全国連絡会の連名で、発言の撤回を求める抗議文を出した。仮処分を申し立てた住民にしてみれば、心穏やかでいられないからだ。
 ただし、今回のケースで裁判所が住民に対し、関電の損害を賠償するとう命じることなど、まずあり得ない。嘘だとわかっていながら仮処分を申請したり、偽造した証拠を出したり、偽の証言をして勝ったというような、裁判官を騙すという違法行為がないと、認められないだろう。
 しかも、本件では4回も審尋が行われ、その際の口頭弁論で激しいプレゼンテーションの応酬をやっているのだ。およそ1年をかけ、十分な審理を経た上で裁判官が出した結論が、今回の運転差し止め仮処分決定なのだ。

 【注】
【原発】画期的な大津地裁の仮処分決定
【古賀茂明】【原発】再稼働の愚 ~事故頻発~

□河合弘之/聞き手・まとめ:明石昇二郎「脱原発弁護団全国連絡会共同代表/河合弘之弁護士に聞く 仮処分で1勝すれば原発は止まる」(「週刊金曜日」2016年4月8日号)
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【経済】企業の賃上げに国家は関与するな ~「官製春闘」は尻しぼみに~

2016年04月14日 | 社会
 (1)3月16日は、春闘の集中回答日だった。賃上げ相場に大きな影響力を持つトヨタ自動車のベアは、労組要求額の半分の1,500円で昨年比2,500円となった。
 トヨタは、2016年3月期決算で過去最高を更新し、2兆8,000億円の営業利益を計上する見通しで、業績は堅調だ。しかし、豊田章男・社長は、労使交渉で、「経済の潮目が変わった」と訴えた。
 トヨタの2016年3月期第3・四半期決算(2015年4月~同12月)の連結販売台数は、前年同期比3.7%減の649万台。北米を除く全地域で軒並み販売が落ちている。特にこれまで成長市場と言われた東南アジアや南米などでは景気の悪化から販売が苦戦している。

 (2)自動車、電機、鉄鋼、重工といった主要企業の回答状況を見ても、ベア満額回答だったのは日産自動車だけだ。他社はトヨタと同様に、軒並み要求の半分以下だった。
 中国経済の減速、新興国の景気低迷など、世界経済には不透明感が漂っている。事業展開がグローバル化した中、日本の主要企業が下方硬直性の高いベアアップに慎重になるのは当然の流れだ。

 (3)特に世界経済の先行き不透明感を増長させているのが米国大統領選挙の行方だ。
 トヨタに限らず、自動車メーカーを中心とする日本の製造業は、北米市場で稼いでいる。2015年の米国の自動車市場は、リーマンショックから完全に回復し、過去最高を更新している。ドルに対する円安効果も大きい。
 しかし、
 「民主党のクリントン氏、共和党のトランプ氏のどちらが大統領に就いても自国の産業を守るために、米国は今までのような円安ドル高を容認しない」【トヨタ関係者】
との見方がある上に、米国で儲けている日本企業に対して何らかの圧力がかかってくるとも見られている。
 特にクリントン氏が強いと見られていたミシガン州において、予備選に予想外の敗北を喫したことで、一部の日本の自動車メーカーには警戒感が強まっている。デトロイトがある同州は、自動車産業の集積地だ。労働者からの支持を得られなかったクリントン氏が、保護主義に走る可能性が高まっているからだ。グローバル企業は、米国の政治情勢に敏感なのだ。

 (4)榊原定征・日本経団連会長は、2015年11月の官民対話で、前年超えの賃上げを早々と宣言。デフレ脱却のために企業に対して、法人税率引き下げと引き換えに賃上げ圧力をかけてくる安倍晋三・首相に媚びる姿勢を示した。
 そもそも民間企業の賃上げは、個別の業績や将来戦略に応じて決めるものだ。共産主義国でもないのに国家が関与すべきものではない。経営者であれば、そんなことは「常識」のはず。だのに政権に媚びる経団連も情けない。

 (5)鈴木修・スズキ会長は、「企業の体力を超えるこんな賃上げをしていては、いずれ自滅してしまう」と政府主導の春闘に異議を唱えていた。その鈴木会長も、「今年はやっと正常の春闘に戻った」と語ったそうだ。
 結局、多くの企業がベアを縮小したことで、「官製春闘」は尻すぼみに終わった。
 ただ、業績に応じて支給額を変動させやすいボーナスについては満額回答した企業が多い。企業は健全で合理的な判断をしたとも言える。 

□井上久男「「官製春闘」は尻しぼみに 企業の賃上げに国家は関与するなかれ ~経済私考~」(「週刊金曜日」2016年3月25日号)
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【古賀茂明】亡国の農政 ~安倍政権の選挙対策~

2016年04月13日 | 社会
 (1)TPPの国会審議が始まった。
 TPPについて、「米国の言いなりになった亡国の条約だ」と批判する声も少なくない。
 元々はTPPに賛成の議員が多い民進党も、こうした批判を気にして、TPPに反対であるかのようなイメージ作りに余念がない。
 民進党の反対理由は、「TPPは農業の重要5品目の聖域確保を目指す国会決議に違反するから」という取って付けた内容だ。

 (2)日本の農政は、まともな政策議論がのぞめる状況からはほど遠い。<例>日本の農業の「聖域」であるコメ。
 安倍政権の進める農政は、「コメを輸出産業に」という掛け声とは正反対の方向に向かっている【注】。日本のコメは、価格は高いがおいしいと言われる。しかし、コメの国内消費量は年々減少し、生産も減っている。産業としてはジリ貧だ。
 これを輸出産業として発展させるには、
  (a)価格を下げて競争力を高める。
  (b)品質を上げて付加価値を高め、海外のコメ農家の追い上げに対抗する。
  (c)十分な輸出量を確保するために生産量を増やす。
 以上の3点が重要だ。

 (3)安倍政権は、2018年度に減反政策を廃止すると発表したにもかかわらず、一方で、今夏の参議院選挙対策として、米価を何としても上げろという厳命を下した。農水省は、これを受けて、農家に主食用のコメを作らせないようにするため、飼料用米への補助金を大幅に増やした。さらに、農水省の幹部が各地を行脚して、減反を徹底させ、2015年、史上初めて減反目標を達成してしまった。その「おかげ」で、コメの価格は去年より上がった。【注】
 しかし、値上がりで消費者のコメ離れが進み、今年のコメ需要は例年の倍のペースで落ち込むと見られている。
 現行の政策は、価格を上げるため、そしてそのために付加価値の低い飼料用米にシフトさせ、生産量も下げる。(2)の、コメの輸出産業化に必要な3点すべてに逆行する「トンデモ農政」だ。

 (4)もう一つ。年中行事の感が強くなった念間tのバター不足騒動。
 2015年5月下旬、こんな報道があった。
 「(2014年)12月にスーパーなどに置いてあるバターが少なくなった。2015年度もバターが7,100トン足りなくなりそうだ。このため、農林水産省はバターの輸入を1万トン増やすことにした」
 しかし、結果はご存知のとおり、2015年末には再びバターがスーパーの店頭から消えた。
 今年もまったく同じことが繰り返されている。今年1月、農水省は2016年度のバター輸入を7,000トンと決めた。
 乳業団体の2016年度のバター不足見通しは、8,200トン。輸入しても1,200トン足りない。常に不足気味にして価格が下がらないようにしているのだ。
 一方、世界中で乳製品価格は暴落している。バターの輸入を国家貿易の対象にしている先進国など聞いたことがない。もちろん、農水官僚と族議員の利権のためだ。

 (5)こうした「亡国の農政」の抜本的改革をしなければ、日本の農業は確実に、衰退への道を歩むだろう。
 そして、消費者は常に高い農産物を押しつけられて、莫大な犠牲を払い続けるのだ。

 【注】「【アベノミクス】似而非改革 ~「減反廃止」~

□古賀茂明「亡国の農政 ~官々愕々第195回~」(「週刊現代」2016年4月23日号)
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【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 ~北方領土返還の可能性~

2016年04月12日 | ●佐藤優
 (1)3月31日、モスクワを訪問した林肇・外務省欧州局長は、ロシア外務省でヴォロビヨヴァ・第3アジア局長と会談した。
 <5月の大型連休に予定されている安倍晋三首相の訪ロについても、協議したとみられる>【注1】
 ということだが、安倍首相は5月6日にソチ市(ロシア南部)でプーチン大統領と会談するという方向で最終調整が行われているらしい。
 2月中旬から3月初旬まで、外務省内では、安倍訪露の是非をめぐる暗闘が繰り広げられていた。

 (2)2月23日に、オバマ・米国大統領が安倍訪露に強い懸念を表明した、という情報が、組織的に流された。
 <今月9日に行われた日米首脳電話会談時に、オバマ大統領が安倍晋三首相のロシア訪問に懸念を伝えていたことが23日、分かった。複数の日米外交筋が明らかにした。首相は5月上旬にロシアを非公式訪問し、プーチン大統領と会談する意向だが、米国が日ロの接近を警戒していることが改めて浮き彫りとなった形だ。
 電話会談は、北朝鮮による長距離弾道ミサイル発射を受けて行われた。関係者によると、オバマ大統領は首相の訪ロについて、5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)での結束を重視し、「ロシアに行くなら、サミット後にしてほしい」と迫った。これに対し、首相は「日ロ間には重要な問題がある」と説明した。
 首相は4月下旬からの大型連休に、サミットに参加する欧州各国への歴訪を予定。欧州から日本への帰途に、ロシア南西部の都市ソチに立ち寄ることを検討している。政府関係者は「首相の訪ロ方針は変わらない。米国には引き続き、理解を求めていく」と強調。首相は、ロシアへの非公式訪問を通じて、停滞している北方領土問題の進展を図りたい考えだ。
 首相はプーチン大統領との会談で、ウクライナ問題の平和的解決に向け、ロシアに自制を働き掛ける方針。核実験などを強行した北朝鮮情勢をめぐっても協力を求める>【注2】

 (3)(2)の情報は、対露関係の発展に慎重なグループが流したものだ。なぜなら、オバマ大統領は、電話会談の最後で
 「あなたが日本の首相として、日本の国益の観点からロシアに行ってプーチンと会うならば、それはそれでいいんじゃないか。じゃあな」
と言ってガチャンと電話を切った、という最重要情報が欠けているからだ。
 この電話会談については、オバマ大統領から安倍訪露について「それでいいんじゃないか」という了解の言質を取った、と解釈する人が多数だ。
 しかし、外務省の一部には、普段は丁寧に電話を切るオバマ大統領が「ガチャ切り」をしたのは。相当強い懸念表明なので、少なくとも5月末の伊勢志摩サミット前の安倍訪露は断念すべきではないか、と考える幹部がいて、そのような幹部が米国の意向(とその幹部が考えるもの)をリークすることで、安倍訪露延期の方向へ世論を誘導することを考えたのだ。
 しかし、国民の対露外交に対する関心が低いので、外務省内の対露強硬派が期待したような世論の反応はなかった。

 (4)3月下旬に訪日したロシアの日本専門家が興味深い情報を提供してきた。
  (a)ロシアのG8復帰に関する誤解・・・・日本の首相官邸や外務省の一部にロシアがサミットに復帰し、G8を復活させるために安倍首相が尽力すればプーチン大統領が喜ぶ、という見方があるが、完全にピントがずれている。プーチン大統領は、G7は単なるおしゃべりクラブで、国際政治にも経済にも実質的な影響を与えることはできない、と覚めた目で見ている。ロシアはG8に復帰する意思はないので、このようなカードを切ってもプーチン大統領の心証を悪くするだけだ。

  (b)ウクライナをめぐる日本の制裁解除にもロシアは無関心・・・・日本政府が、ウクライナに対する制裁を解除すれば、ロシアはもちろん口先では歓迎するが、それで日露関係が改善することにはならない。
   ①そもそも日本の対露制裁は、名ばかりのものなので、それを解除しても実質的にロシア経済にプラスの影響を与えることが期待できないからだ。
   ②4月5~7日にポロシェンコ・ウクライナ大統領が訪日することについても、ロシアはそれほど神経質になっていない。安倍首相のソチ訪問で、日本が米国との関係でリスクを負う以上、ウクライナ・カードを切ってバランスを取る必要があるからだ。
   ③ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州の停戦に関する「ミンスク合意」を双方が遵守し、問題を平和裏に解決すべきだという立場を日本が崩さなければ、ウクライナに対する外交辞令で日本の政府がロシアを批判しても、ロシアは大人の対応をする。
   ④日米軍事同盟という大枠の中でしか日露の外交ゲームができないことをプーチン大統領はよくわかっている。

  (c)ロシア側が関心を持つ案件・・・・日本は、ロシアが石油と天然ガスを日本に売りつけることだけを考えている、と誤解しているようだが、ロシアの関心はもっと幅広い。
   ①もっとも有望なのは、宇宙分野での協力だ。宇宙分野に関しては、米国との間でも順調な協力が進んでいるので、この分野に日本が踏み込んでも米国は介入できない。
   ②さらに、原子力協力、円借款などにロシアは関心を持っている。
   ③さらに、日露の2+2(外務・防衛)協議の再開も、両国の信頼関係改善に貢献する。

  (d)北方領土問題・・・・プーチン大統領は、北方領土問題でロシアが譲歩しなければ、日本との関係を改善することはできないことはよく理解している。しかし、プーチン大統領は。日本との交渉にトラウマがある。
   ①イルクーツク日露首脳会談(2001年3月)で、プーチン大統領は、日ソ共同宣言(1956年)を出発点とする決断、つまり平和条約締結後、ロシアが歯舞群島と色丹島を日本に引き渡す決断をした。
   ②もちろん、日本としては2島返還では十分ではない、ということはわかっている。したがって、歯舞群島と色丹島の具体的な引き渡しに関する協議と、国後島、択捉島が日露のいずれに帰属するかについての協議を同時並行的に行うことに同意した。
   ③しかし、その後、小泉純一郎政権が成立し、田中眞紀子氏が外相に就いたことで、日本の対露外交が大混乱を来した。
   ④さらに、それまで北方領土交渉に大きな影響力を持っていた鈴木宗男氏が失脚した後、川口順子・外相(当時)がハードルを上げ、イルクーツク会談における森喜朗提案を事実上反故にした。
   ⑤④で、プーチンは面子を潰された、と思っている。現在でも、プーチン大統領が日ソ共同宣言を基礎とした歯舞群島、色丹島の2島を日本に引き渡すことを前提とし、それに何らかのプラス・アルファを加えるという譲歩を行う可能性は十分にある。
   ⑥⑤のためには、日本が北方領土問題に関して一度行った約束を二度と反故にしないという信頼が必要だ。ソチでプーチン大統領と安倍首相の間でこのような信頼関係が構築されれば、今年中にプーチン大統領が訪日し、北方領土交渉が動き出す可能性がある。

 【注1】記事「外務省の欧州局長、ロシアで外相会談にむけ意見交換」(朝日新聞デジタル 2016年3月31日)
 【注2】記事「オバマ氏、安倍首相訪ロに懸念=電話会談で伝える」(時事通信(時事ドットコム) 2016/02/23)

□佐藤優「ソチでの日露首脳会談で外務省がなすべき仕事 ~飛耳長目 第118回~」(「週刊金曜日」2016年4月8日号)
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【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~

2016年04月11日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)この数年、血圧の管理目標値が緩くなっている。
 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」の降圧目標値は、
   2009年版 135/85mmHg未満
   2014年版 140/90mmHg未満
 ただし、糖尿病患者については、
   2009年版 130/85mmHg未満
   2014年版 130/80mmHg未満
へとさらに厳格な降圧目標値が課せられている。日本人は、糖尿病に関連した脳卒中が多いから、という理由だ。

 (2)一方、欧米では糖尿病患者を対象とした試験の結果から、
   「130/80mmHg未満に積極的に降圧すべき理由が見つからなかった」
ため、糖尿病患者の高圧目標値は、
   140/80~85mmHg未満
に緩和されている。

 (3)さらに先日、糖尿病患者への「厳格な降圧」は、逆に心血管死を増大させるという解析結果が報告された。
  (a)研究者は、これまで世界で報告された49試験(被験者総数73,738人)を解析。その結果、
  (b)試験登録時に上の血圧が140mmHg未満に保たれていた糖尿病患者に対して、さらに「厳格」な降圧治療を行うと、心血管死リスクが1.15倍に上昇し、全死亡リスクも増加することが示された。
  (c)しかも、降圧治療開始時点の血圧が低いほど、心血管死リスクや心筋梗塞発症リスクが増加し、降圧治療の悪影響が認められた。
  (d)一方、上の血圧が140mmHg超の患者の場合、降圧治療によって全死亡リスクや心筋梗塞、脳卒中リスクが有意に低下することも示された。

 (4)研究者は、「上の血圧が140mmHg未満の糖尿病患者に対する降圧治療は、心血管死を増大させるだけで利益は認められない」と結論している。

 (5)降圧目標値が130mmHg未満だと、複数の高血圧治療薬に頼らざるを得ないが、140mmHg未満なら単剤で対応できる可能性が高い。食事や運動で血圧値を改善しようという希望も持てる。
 要するに、医者のやる気より、患者本人のやる気を引き出す
   「達成可能な目標値」
が望ましいのだ。

□井出ゆきえ(医学ライター)「糖尿病患者の降圧目標は? 140mmHgが良いらしい ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.2~」(「週刊ダイヤモンド」2016年2月20日号)
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【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
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【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」

2016年04月10日 | ●佐藤優
   
 ①大原悦子『フードバンクという挑戦』(岩波現代文庫 860円)
 ②佐藤優『動因を探せ 中東発世界危機と日本の分断』(徳間書店 1,200円)
 ③佐々木信夫『地方議員の逆襲』(講談社現代新書 840円)

 (1)①は、ラベルの印字ミスや規格品に合わないなどという理由から大量に生まれる食品ロスを、困窮する人びとに分配するフードバンク活動の重要性を明らかにする。
 <日本のフードバンクは、どちらかと言えば「もったいない」、つまり食品ロス削減の立場からスタートすることが多かった。ハンガー(飢え)を前面に押し出すアメリカとは対照的だ。しかし、2008年以降は日本のフードバンクでも困っている人たちへの関心が高まり、「食のセイフティーネット」としての役割がいっそう注目されるようになってきた。食べ物を必要としているのはホームレス状態の人たちだけ、と以前は思われていたが、必ずしもそうではないこともわかった。フードバンクに助けを求める人たちは増える一方だ>
 特に子どもの貧困問題を緩和する上で、フードバンクは大きな役割を果たすことができる。

 (2)②は、内外情勢を鋭く分析する。<例>米海兵隊の普天間飛行場移設問題については、次のように分析する。
 <「万策尽きた」場合、すなわち司法判断で辺野古新基地建設が是認された場合、沖縄側は翁長(雄志沖縄県)知事を先頭に、工事を中止するための「実力行使」に出るということだ。その過程で、万単位の人が集まり、数千人が工事現場を占拠する動きに出た場合、通常の警察力(機動隊を含む)では、対応できなくなる。警察もしくは米軍が発砲し、流血が生じるようなことになれば、沖縄の日本から分離運動が本格化する。中央政府は沖縄の状況をまったく理解していない>
 
 (3)③は、政府の地方政策が破綻していることを明らかにする。
 <戦後70年、わが国の政治は公共事業を中心につねに地方創生を内政の柱にしてきた。それは自民党政治の得意技でもあった。田中角栄の「日本列島改造論」を下敷きに高速道路網、新幹線網、航空網を整備し、高度情報通信網も出来上がった。しかし、狙いとした国土の均衡ある発展、職住近接を実現する「地方重視」の日本は生まれていない。(中略)逆にストロー効果が働き、人、モノ、カネ、情報が東京に吸い寄せられている。ここで地域主権型地方創生、道州制移行に大胆に舵を切らずして、その流れを断ち切ることはできない。選挙優先、景気優先のバラマキ政治を止め、地域、国民が元気を取り戻し、真に豊かになる「新たな国のかたち」に向けた大改革から始めるべきではないか。若者が夢を持てる日本づくりこそ、真の地方創生ではないのか>
 その通りだ。地方議員の力を国政に活かすことが喫緊の課題だ。

□佐藤優「正真正銘の「地方創生」 ~知を磨く読書 第145回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年4月16日号)
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【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
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【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが ~辺野古新基地建設~
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【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~
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【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
 ★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数
【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 ~知を磨く読書~
【佐藤優】すべては国益のため--冷徹な「計算」 ~プーチン~
【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 ~ソ連の手口と酷似~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書
【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 ~日本でも衝突~
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 ~昭和史(10)~
【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 ~昭和史(7)~
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~
【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 ~同性愛~
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 ~公約撤回~
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~
【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
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【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
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【食】市販の「塩こんぶ」のうまみは昆布のうまみとは別もの

2016年04月09日 | 医療・保健・福祉・介護
 ①フジッコ「美味しい塩こんぶ 減塩ふじっ子」・・・・調味料(アミノ酸等)
 ②くらこん「くらこん塩こんぶ」・・・・甘味料(ソルビトール、甘草)、調味料(アミノ酸等)、カラメル色素、増粘多糖類

 (1)塩こんぶは、昆布の加工食品だ。
 「細切りや角切りの昆布を、水・醤油・みりん・砂糖などをあわせ長時間かけて煮て、最後に塩などをまぶ」すという工程で作られている【くらこんのサイト】。
 原材料の昆布は、「だし」として利用されるうまみ成分のグルタミン酸を含有していて、塩こんぶも当然うまみ成分たっぷり、かつ、簡単便利だとして愛用者は多いのではないか。
 実際、賞品のパッケージにも、①は「混ぜるだけでおいしい 簡単野菜炒め」、②は「塩こんぶで簡単!肉豆腐」と売りにしているし、浅漬け、炊き込みご飯、お茶漬けなどへお利用法も紹介されていて、忙しい主婦の強い味方などとも言われている。
 しかし、塩こんぶのうまみは、天然のうまみではないし、体に悪い。

 (2)塩こんぶの原材料を工程から考えると、必要な材料は、「昆布、醤油、みりん、砂糖、塩」だが、蛋白加水分解物、調味料(アミノ酸等)、甘味料、カラメル色素、増粘多糖類などが原材料名に記されている。
 加工食品を作る際に欠かせないスター的存在が、次の二つ。
  (a)蛋白加水分解物
  (b)調味料(アミノ酸等)

 (3)(2)-(a)は、比較的単純な加工で製造されるため、「食品」に分類され、危険認識が低い成分だ。独特のコクやうまみが添加されている調味料の味を引き立たせる働きを持っている。味が単一になりやすい化学調味料に比べて、精製されていない(a)は、独特の味を出しやすく、さらに安価なため多くの加工食品に利用されている。
 蛋白質を分解して作られ、多くの場合、コストの安い脱脂加工大豆(大豆油などの油を搾った後のカス)が使われている。
 脱脂加工大豆を酵素or塩酸で加水分解→中和→脱色→脱臭→精製→濃縮して使いやすい形状にするという工程で製造される。
 問題点は、加水分解時に使用される塩酸だ。
 塩酸分解は、酵素分解より早く分解でき、安価なため主流となっているが、処理の段階で蛋白質に含まれるグリセリンと塩酸が反応して、発癌性の高いクロロプロパノールが生成されてしまう。
 むろん、製造過程で検査されていて、残留の可能性は低いが、ゼロではない。事実、農林水産省の検査で、(a)が多く使用されている一部の醤油から高濃度のクロロプロパノールが検出されている(平成16~18年度の実態調査)。
 また、大豆のほとんどを輸入に頼る現状では、遺伝子組み換えの問題も無視できない。

 (4)(2)-(b)は、一括名表示が認められている合成食品添加物だ。グルタミン酸ナトリウム(MSG)を主体にイノシン酸などと混ぜて使用され、過剰摂取の問題点として次のような諸点が指摘されている。
   ・胎児に影響を与える・・・・分子が小さいため簡単に胎盤を通過し、脳の発育遅延や脳血液中関門を傷つける。
   ・味覚障害や痛風の原因につながる・・・・MSGと一緒に核酸系調味料を加えることによりうまみが増大する半面、体質によっては痛風を引き起こす。
   ・高温の調理で発癌物質が生成される。
   ・MSG3gは食塩1gに相当するため塩分過多につながる。

□沢木みずほ「市販の「塩こんぶ」のうまみは昆布のうまみとは別ものでした」(「週刊金曜日」2016年3月25日号)
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【古賀茂明】武器輸出大国を目指す安倍政権 ~豪州政府との商談~

2016年04月08日 | 社会
 (1)3月29日、ついに、あの「安保法」が施行された。
 昨夏から秋にかけて、人びとはこの法案が憲法違反であることetc.を理由に、強い反対の声を上げ、国会前には数万人が押しかけた。
 この法律は、集団自衛権行使を容認し、自衛隊の海外派遣も歯止めが不十分なまま拡大させるものだ。
 施行によって、その具体的危険性がさらに高まった。

 (2)安倍政権はしかし、5月から6月に予定される南スーダンへの派遣部隊の交代に合わせて、自衛隊に駆けつけ警護などの新しい任務を与えることを「十分な準備が必要」という理由で見送った。
 「安保法」が施行されても何も変わらないかのように時が過ぎ、衆参の選挙が行われるころには国民の間に危機感は薄れている。争点化を避け、選挙に勝つという安倍政権の戦略だ。
 むろん、選挙後には一気に自衛隊の海外派兵や任務拡大を大々的に進める腹だ。

 (3)実は、安保法施行の陰で、国民が油断しているうちに、もう一つ大変な事態が進んでいる。
 武器輸出だ。
 憲法9条で戦争放棄をうたう日本は、他国への武器輸出を原則として禁止してきたが、安倍政権はその国是を転換した。2014年4月、閣議決定で、それまでの「武器輸出三原則」をなくし、武器や軍事技術を海外に輸出できる「防衛装備移転三原則」に変えてしまった。

 (4)(3)から2年。国民は、何も変わってない、と思っているかもしれない。
 しかし、日本がいきなり武器輸出大国に躍り出るような話が進んでいて、もはや止めようもない段階になっている。
 すなわち、オーストラリア政府との商談だ。潜水艦を12隻、共同開発・生産するパートナーとして、豪政府が日本の三菱重工を選び、「そうりゅう型」潜水艦を採用する可能性が高まっている。受注額は、設計・建造・メインテナンスを含めて4兆4,000億円。「超巨大案件」だ。

 (5)「防衛装備移転三原則」の閣議決定当時、「輸出するのは、救難飛行艇や軍用救急車など、人命救助任務に使う装備が中心」などと言って、「戦争目的の武器ではない」というイメージ作りで国民を油断させていた。ところが、いざふたを開けてみると、初の大型受注案件として浮上したのは、戦略兵器の最新鋭潜水艦だった。
 その裏では、2015年10月に「防衛装備庁」が新設され、官民で開発した武器を海外に売る窓口ができた。
 武器輸出ビジネスに貿易保険が適用できるよう、政府内での調整も進んでいるらしい。
 むろん、経産省や防衛省の官僚の天下り利権も拡大するから、官僚たちは大喜びだ。

 (6)中東空爆のおかげで、フランスの「ラファール」戦闘機がバカ売れしてフランス国民は喜んだ【注】。そこには、自国の武器が他国の人びとを殺傷しているという罪悪感はほとんど存在しない。
 武器ビジネスがもたらす利益は巨額だ。
 その利益に目がくらみ、他の武器輸出大国のように、日本も官民ともに人びとが心のどこかで戦争や紛争が起きることを望むような国になってしまうのだろうか。

 【注】「【古賀茂明】シリア空爆の裏にある真実 ~軍需産業の大儲け~

□古賀茂明「武器輸出大国を目指す安倍政権 ~官々愕々第194回~」(「週刊現代」2016年4月16日号)
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 【参考】
【古賀茂明】民進党綱領の茶番 ~原発推進政策~
【古賀茂明】バカじゃねえのか、この国は ~被災者が見る原発推進~
【古賀茂明】【原発】再稼働の愚 ~事故頻発~
【古賀茂明】岩盤規制に負けた「安倍ドリル」
【古賀茂明】一線を越えた高市早苗総務相の発言
【古賀茂明】シャープ救済劇と官僚の思惑
【古賀茂明】ルールが守られない国、日本 ~途上国体質~
【古賀茂明】争点化すべき企業献金問題
【古賀茂明】基地をめぐる二つの選挙
【古賀茂明】前半がバラマキ政策、後半が憲法改正 ~「先楽後憂」の今年~
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【古賀茂明】シリア空爆の裏にある真実 ~軍需産業の大儲け~
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【古賀茂明】空虚な「日本再興戦略」 ~成長戦略の挫折~
【古賀茂明】「なかったこと」にされた議事録 ~閣議決定の記録~
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【古賀茂明】勝っても負けても安倍自民には得 ~大阪ダブル選
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【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
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【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
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【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
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【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~


【政治】国家中心は時代に逆行 ~「トランプ現象」の読み解き~

2016年04月07日 | 社会
 (1)世界政治における「トランプ現象」を理解するには、世界の人口の流れ、とくに国境を越えた人口移動と結びつけて考えねばならない。
 現代の世界を動かしているのは、個々の主権国家よりは国際的な人間の動きだ、と言えるからだ。

 (2)シリア、イラク、アフガニスタンなどから難民がトルコ、ギリシャ、マケドニア、オーストリアなどを経てドイツに流入する、といった現象はこの地域に限られた単発的なものではない。
 メキシコなどの中南米諸国から米国へ流入する移動者も同じ現象の一部だ。
 日本にもフィリピンなどから定住する人が増加しているようだが、国境を越えたトランスナショナルな動きは止まるまい。

 (3)グローバル化とは、モノやカネが世界中に流れる現象だが、そのような時代に人間だけが一つの国に定住して動かない、ということはあり得ない。主権独立国家という存在が、すべての人間の生涯や運命を決定する時代ではないのだ。
 その意味でも「現代」は「近代」とは異なっている。
 「近代」とは、国家という政治集団が個々の人間にとって根本的要素だった時代だ。世界がいくつかの主権国家に分岐され、国内政治や国際関係が人類の運命を決定した時期・・・・それは欧米で18世紀に出現し、20世紀に他の地域でも普及していった。
 しかし、その意味での「近代」はもはや存在しない。

 (4)それにもかかわらず、国家を中心に据え、自分の国を通して個人や世界を考える習慣が、依然として一般的だ。歴史の流れを無視して。
 逆説的に言えば、個々の国の相対的重要性が低下しているからこそ、愛国主義的な言動にこだわる者も多いのだろう。
 この現象は、トランプ氏を支持する米国人のみならず、アラブ移民を排斥するフランス人、ユーラシア大陸制覇の夢を追うかのようなロシアの指導者にも見られることだ。それは、国家中心主義が時代に逆行するものであることを無視しているのだ。

 (5)現代の世界を動かすものは、国ではなくて個人だ。国家としての米国ではなく、個々の米国人、アジア大国としての中国では無く世界中に拡散している中国人だ。
 それはアジア大国としてではなく、 世界中に「拡散」している中国人だ。

 (6)トランプ氏は、「米国を再び偉大な国にしよう」と呼びかけるが、そのような国家主義は過去のものになっていることを認識すべきだ。
 個人個人の存在感を定めるのは、国籍や市民権だけではなく、性別、年齢、教育水準、健康状態などでもある。
 このような要素は、国境を越えたトランスナショナルなものであり、その意味でも国というアイデンティティが持つ意味は減少している。

 (7)日本では自国の特殊性にこだわり、「日本的」なるものを強調する政治家や論客が多いようだ。しかし、もともと日本文化は世界各地の文化と交流、合流して作りあげてきた「雑種的」なものなのだ。
 諸文化を受け入れ、そのすべてに対して寛容さを示してきたのが日本の魅力であり、「日本的」なるものにこだわるのは、実際には「非日本的」なのだ。
 その点、日本人は現代世界の特徴を極めて鮮明に反映しているとも言える。
 中国人、インド人、メキシコ人、その他の人びとと比べて、海外に出かけ、定住する日本人は限られている。しかし、世界に孤立した存在である、ということにはならない。
 肉体的には自分の国から離れなくても、精神的に国際人であることは可能だからだ。

 (8)国家中心主義(トランプ氏らによって代表される)に代わる人類主義とでもいうべき視野を持たなければ、世界を理解することにはなりえない。そのような視野を育成するためには、教育が大切になる。
 世界各地で偏狭な愛国主義ではなく、国境を越えたトランスナショナリズムが育成されることを期待したい。
 その仕事を個別の国に委ねることは、もともと不可能であろう。
 したがって、非国家組織の役割が重要になる。国とか市民権とかではなく、年齢、趣味、問題意識などを共にする人たちの国境を越えた集まりが、新しい秩序を作っていくのではないか。  

□入江昭(ハーバード大学名誉教授)「人類主義の視野持とう ~現論~」(「日本海新聞」 2016年4月3日)
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【メディア】放送の「自由」と「公平・公正」とは ~停波問題~

2016年04月06日 | 社会
 (1)放送にとって公平とは何か。
 日本では放送法によって、放送事業者は番組編集に際し政治的な公平と論点の多角的解明が要請されているが(4条1項)、欧米でも公平原則は一般に放送規制の一環として維持されてきた。
 しかしながら、これだけが唯一の方式というわけではない。
 公平原則を制度化し、維持する欧米でなお普遍的な伝統的モデルがある一方で、1980年代後半に規制緩和の流れの中で「公正原則(フェアネス・ドクトリン)」という公平原則に匹敵する規制原理(連邦通信委員会(FCC)の規則による)を撤廃してしまった米国に典型的な別のモデルも生まれたからだ。

 (2)二つのモデルの背景には、
   公平(公正)原則
   放送の自由
についての理解の違いがある。欧米での支配的な方向では、多様な言論の確保を重視する放送の自由観から公平原則を原則的に擁護する一方、米国では政府からの介入、規制の排除を本質とする放送の自由観から公平原則は放送の自由を侵害するものとみなされることになる(ただし、法的なルールが撤廃されたからといって、放送局が自主的、主体的ルールとしての公正さを投げ捨ててしまったわけでは、むろん無い)。
 どのように放送の自由像を構築し、その中に公平原則をどう位置づけるべきか。

 (3)このような原理的、理念的モデルとは別に、欧米の経験を踏まえると、公平原則が制度化され、維持されるためには、多くの条件が満たされねばならない。例えば、
  (a)公平性を制度化し、執行するためには、少なくとも「公平とは何か」についてある程度明確な、具体的な規定が不可欠だ。
  (b)違反した場合の制裁の種類や手続きが法定される必要がある。
  (c)特に、政府の恣意的な介入を避けるためには、公平原則の判定、制裁する機関は政府から独立した機関であることが不可欠だ。
  (d)さらに、番組への過剰な萎縮を避けるべく、過度に詳細で厳格な規制は許されず、放送局の番組全体をではなく、個々の番組に即して公平原則を適用することは認められない。

 (4)いずれにしても、公平原則はどのように制度化されても、本質的に不確定性を免れず、実質的にはメディアの自律によって実現していくほかなく、現に各国とも免許取り消し等の重大な制裁は発動してこなかった、と言われている。

 (5)日本では、独立的な規制機関を欠くなど、公平原則をまっとうに支える条件を満たしていない。
 高市発言等の放送介入がいかに不当であるかは、以上からも明らかだが、これを超えて、公平原則の将来像をどう構築するか、議論が求められるのも確かだ。【注】 
  
 【注】記事「放送法とは」議論に熱 総務相の「停波」発言めぐり」(朝日新聞デジタル 2016年4月2日)

□田島泰彦(上智大学教授)「放送の「自由」と「公平・公正」とは? 求められる将来像」(「週刊金曜日」2016年4月1日号)
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 【参考】
【メディア】安倍首相のメディア対策に高まる国際的批判 ~停波問題~
【メディア】自民党のテレ朝への圧力が契機に ~停波問題~
【メディア】安倍政権による行政指導の誤り ~放送電波停止発言~
【メディア】高市総務相は「脅し」の政治家、報道は「健忘症」
【メディア】総務大臣には、停波命じる資格はない ~放送電波停止発言~ 
【メディア】や高市発言にみる安倍政権の「表現の自由」軽視
【古賀茂明】一線を越えた高市早苗総務相の発言
【メディア】政治的公平とは何か ~「NEWS23」への的外れな攻撃~
【NHK】をまたもや呼びつけた自民党 ~メディア規制~
【テレビ】に対する政権の圧力(2) ~テレ朝問題(9)~
【テレビ】に対する政権の圧力(1) ~テレ朝問題(8)~


【メディア】安倍首相のメディア対策に高まる国際的批判 ~停波問題~

2016年04月05日 | 社会
 (1)メディアの政権批判に対する安倍政権の不寛容は、ここ数年顕著になっている。毎月のように閣僚や与党議員から問題発言が飛び出している。
 海外メディアの論調が変わりつつある。大手海外メディアでさえも、このような憂慮すべき傾向を認識するようになっている。
 安倍政権のニュースメディアに対する威嚇に対し、海外から批判がたかまっており、その言葉づかいも激しさを増している。これはかなり異例のことだ。

 (2)米国の主要紙の紙面は、全世界の出来事に焦点を当てている。最近では、シリアなどの国での悲惨な暴力、欧州の難民危機、世界経済の低迷、ドナルド・トランプ氏の大統領選挙運動における「米国型ファシズム」の台頭などが見出しを飾っている。
 それに比べて、比較的平和で豊かな日本のニュースが注目を集めるのは難しい。
 だが、実際、米国や英国の主要紙のほとんどが、安倍晋三・首相のメディア対策にスペースを割いているのだ。
 <例1>2016年3月5日付け「ワシントン・ポスト」電子版。
 同紙は、「ニューヨーク・タイムズ」と並んで米国の二大高級紙の一つとみなされている。
 「抑圧される日本の政権批判報道」と題した同紙の社説は、安倍首相のメディア対策に対し、明らかに反対の立場を示している。ただし、若干手加減して痛烈な非難は控えている。
 同紙は、安倍政権の戦争法と日本の再軍備化の方向に賛同したことから政権寄りと目されたが、それでも以下のように断言している。
 <それにもかかわらず、日本が第二次世界大戦後、最も誇るべきなのは経済の「奇跡」ではなく、メディアの独立性を含む自由主義制度の確立であった。安倍氏の掲げる目標がたとえ立派なものであっても、そのような自由を犠牲にして追求すべきではない>

 (3)<例2>2016年2月17日付け「ガーディアン」電子版。 
 同紙は、英国の主要紙。ジャスティン・マッカリー氏による記事は、安倍政権のメディア対策をもっと徹底して批判している。
 記事は、安倍首相とその同僚の問題発言と行動の数々を紹介しているが、その主眼は古館伊一郎氏、国谷裕子氏、岸井成格氏の3人のニュースキャスターの降板にある。
 <3氏が夜の報道番組を間もなく降板することは、ジャーナリストという職業にとって損失であるだけではない。3氏は、メディアに苛立ちを強める安倍晋三・首相とその支持者によるメディア弾圧によって降板させられたとの批判がある>
 安倍政権が3氏を狙い撃ちにしたのは、
 <3人とも皆、権力の濫用から公益を守るというジャーナリズムの使命を信じていた>
からだ、と同記事は示唆している。

 (4)未来に目を向けると、二つのシナリオが考えられるだろう。
  (a)国際的批判の高まりを受けて、日本のメディアが盛り返し、民主主義における自らの役割をよりよく果たせるようになる。
  (b)右翼主義者が勢いづき、現在のソフトな脅しからあからさまな抑圧へとシフトする。
 (b)の、暗い未来の格好の例が、エルドアン・トルコ大統領の卑劣な政権批判抑圧だ。

□マイケル・ペン「安倍首相のメディア対策に高まる国際的批判 ~マイケル・ペンのペンと剣~」(「週刊金曜日」2016年4月1日号)
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 【参考】
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【NHK】をまたもや呼びつけた自民党 ~メディア規制~
【テレビ】に対する政権の圧力(2) ~テレ朝問題(9)~
【テレビ】に対する政権の圧力(1) ~テレ朝問題(8)~