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2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】開発独裁とは違う明治維新 ~目的は複数、リーダーも複数~

2017年12月27日 | ●佐藤優
 (1)岩倉使節団【注1】は大胆な試みだった。まだ草創期の国家で2年近くも主要指導者がいなくなったのだから。そのおかげで、大久保利通、伊藤博文という近代化を主導するリーダーが得がたい知見、体験を持ち帰ったのだが、なぜそんな離れ業ができたのか。【山内】
 第二次世界大戦後、アジア諸国が経済的な発展をみせ、「アジアの奇跡」と世界を驚かせた。このとき、成長の鍵は強いリーダーシップにあるとする「開発独裁」論が盛んに唱えられ、明治維新こそその嚆矢であると論じられた。しかし、これは正確ではない。蒋介石と蒋経国(台湾)、鄧小平(中国)、リー・クアン・ユー(シンガポール)、マハティール(マレーシア)など、アジアの開発独裁の特徴は大きく六つ。
  ①国内外の危機を契機として成立した。
  ②強力な一人のリーダーが独裁的リーダーシップをとった。
  ③それをエリート集団が支えた。
  ④開発イデオロギーが存在した。
  ⑤必ずしも民主的手続きではなく、経済成功で独裁を正当化した。
  ⑥その体制が数十年続いた。
 これを明治維新と比べると①以外にはほとんどあてはまらない。一人のカリスマによる上意下達の独裁でもないし、革命指導者の支配が何十年も続くことはなかった。【山内】
 維新の三傑(西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允)は明治10年前後に相次いで世を去っている。【佐藤】
 そもそも「三傑」という言葉が示すように、明治政府のシステムは、はじめから薩長を中心とした合議体だった。それが旧幕府も含めた超藩的な岩倉使節団を可能にした理由でもある。【山内】
 もし明治政府が、例えば大久保利通の独裁体制だったら、彼が長期海外視察を行うことなど不可能だ。連合政権だったから、権力機構の半分が外遊し、後の半分が国内統治を進めるという離れ業が可能だった。【佐藤】
 留守政府の意味と存在も大きい。西郷をはじめ、長州では財政通の井上馨や陸軍建設者の山縣有朋、土佐の板垣退助、肥前の大隈重信、江藤新平、副島種臣、大木喬任といった代表的な人材が日本に残り、学制発布、初の全国戸籍調査、太陽暦への切り換え、徴兵令、地租改正といった実務的な改革を着々と行っていた。田畑永代売買禁止令を解いて、正式に土地を私有できるようにしたのもこの時期だ。【山内】
 ただ、留守政府の内実は、西郷が残った薩摩は統制がとれていたが、木戸、伊藤を欠く長州はやや弱体化していた。その間隙を縫って巻き返しを考えたのが肥前の江藤新平で、司法卿としての井上馨の汚職を暴いたり、山城屋事件【注2】が起きて山縣有朋を失脚させたりと反薩長の派手な動きを見せた。そこで、山縣や井上を救うことで政府のバランスを維持させたのが西郷だった。【山内】

 【注1】「【佐藤優】岩倉使節団が使った費用、100億円 ~明治初期~
 【注2】長州出身商人が無担保で陸軍省から巨額の資金を借り、投機に失敗した事件。

 (2)なぜ明治維新においては圧倒的な指導者が出てこなかったのか。【佐藤】
 幕末から明治維新にかけて重要な政治思想として公議輿論という考え方が出てきた。徳川幕府だけに任せていても駄目だから、みんなで話し合って決めよう、というのがそもそものスタートだった。参与会議がその例だ。文久3年の8・18クーデターで長州藩など尊王攘夷派が朝廷から追放され、公武合体派の土佐藩主山内容堂が熱心に推進し、有力諸侯が朝議参与として、隔日に京都で国政を議した合議体会議だった。徳川慶喜はこの会議の主導権を握りたかったのだが、特に薩摩の島津久光の反発があってうまくいかず、約2ヵ月で解体した。そこで徳川を棚上げにして、山内と島津のほかに福井の松平春嶽、宇和島の伊達宗城を含めた四候会議ができあがった。ここで大事なのは、この時点ですでに誰か一人の独裁者が治めるという考えは消え、集団的リーダーシップが前提になっていることだ。参与会議も四候会議も、形式だけみれば19世紀後半のムハンマド・アリー朝の「諮問会議」にも通じるが、エジプトではあくまでも君主が超越的に権威を行使し、幕末日本と比べると独裁度が高い。【山内】
 チェチェンの長老会議は、いまでも多数決ではなく、満場一致方式の、長老によるコンセンサスで決定する。外敵が迫ったときだけ、征夷大将軍的なリーダーを置く。その場合、腹の中は反対でも、自分が少数意見だと分かったら黙ったまま、多数派に同意を表明して満場一致に持っていく。しかし、この方式だとどこに権力の中心があるのか分からない。【佐藤】
 四候会議も穏やかな集団的リーダーシップをめざしたが、外圧の厳しさが高まる中で、公武合体や幕権尊重といった曖昧なやり方では処理しきれなくなる、。さらに変革運動の担い手が下級武士に移っていく中で、はからずも倒幕、廃藩置県のような過激な変革に導かれていったというのが実像だろう。では、島津や毛利など雄藩の諸侯たちが実権を失い、西郷、大久保、木戸らに主導権が移ったときに、彼らが強権的なリーダーとなったかというと、そうでもない。むしろ西郷ら政権を主導するリーダーと、その配下に位置するはずの実務エリート、肥前の大隈や江藤、長州の井上馨ら、少し世代を下って伊藤博文や山縣有朋らとの差がはっきりせず、藩間や藩内のグループ間での合従連衡が行われていく。【山内】

 (3)組織論として興味深い話で、
  ①第一段階・・・・雄藩の諸侯たち、合議志向の強い殿様がリーダーとして現れる。
  ②第二段階・・・・本来なら諸侯たちを補佐するエリートだったはずの西郷、大久保ら下級武士がリーダーとなる。ところが、新しくリーダーとなった下級武士たちは、きちんとしたキャリアシステムを経ていないから、リーダーとエリートの境も曖昧だし、エリートを育成する仕組みも整っていない。【佐藤】
 だから岩倉使節団においても、実務は幕府系のエリートに頼らざるを得なかったのだが、面白いことに、岩倉使節団に同行した多くの留学生から「次世代」のエリートが育っていった。金子堅太郎や牧野伸晃、米国で鉱山学を学び、三池炭坑の経営に成功して三井財閥の総帥となる團琢磨、「東洋のルソー」と呼ばれる民権思想家となる中江兆民、腹心として山縣有朋を支えた平田東助、女性教育をリードした津田梅子。さらには米国に密入国していた新島襄が、木戸に見出され、通訳として随行することになる。【佐藤】
 新島はいわばもう一つの明治維新を生きた人物だった。幕末、日本が列強に滅ぼされるかもしれないという状況の中で、米国の内部に入り込んで、その内在的論理を学ぶしかない、と命懸けで米国に渡った。その結果、新島が出した結論とは、欧米と遜色ない人文系に強い大学をつくらなければならない、ということだった。それもミッションスクールは欧米の植民地化になってしまう。あくまでキリスト教の精神を持った日本人を育てるのだ、と日本語での教育にこだわった。【佐藤】
 エリート集団の育成に最も熱心だった明治のリーダーは、伊藤博文。彼は帝国憲法と帝国議会をつくり、政党まで立ち上げた。しかし、それらと同じくらい力を注いだのは、帝国大学など大学制度の確立だ。国家のシステム、ステートクラフト(国政術)とは何かを勉強した伊藤は、憲法や議会を維持運営できる人材が最も重要だと気づいた。【山内】
 そこで行われたのはいわばエリートの促成栽培だ。日本中からとにかく記憶力のいい若い人材を集めてきて、法律を覚えさせる。そして、行政や司法の現場に次々と送り込んだ。ちなみに、明治14年の政変で失脚した大隈が、翌年設立したのが東京専門学校、後の早稲田大学。福澤諭吉の慶應義塾、新島の同志社とともに、政府以外のエリート養成機関ができたことは、日本の「民間」を育てる上でとても大きかった。たとえば中国にも私立大学はあるが、エリート養成は圧倒的に官立が担っている。「誰がエリートを育てるか?」は国家にとって重大な問題だ。【佐藤】

 (4)アジアの開発独裁と明治維新には、大きな違いがもうひとつある。リー・クワン・ユーにしても鄧小平にしても、アジアにおいてはとにかく経済成長だけが目標とされ、経済発展によってすべてが正当化された。【山内】
 鄧小平の有名な白猫黒猫理論。「白い猫でも黒い猫でも鼠をとってくる猫がいい猫だ」。【佐藤】
 しかし、明治維新の目的は最初からひとつではない。
   ①「富国強兵」
   ②「公議輿論」
の二つが最初から目標として掲げられていた。①はそのまま開発独裁のスローガンだが、その一方で広く議論を興していく②は、帝国議会設立の要求につながり、大きくいえば人々の政治参加、いわゆる民主化を志向するものでもある。これが、木戸孝允ら長州派によって早い段階から唱えられている。【山内】
 帝国議会を開こうという流れと、帝国憲法をつくろうという流れは、本来、別々に存在した、ということ。これは明治政府のもうひとつの大目標である不平等条約改正を考えてみるとわかりやすい。日本と条約を結びたい諸外国にとって、議会があろうがなかろうが関係ない。しかし、憲法制定は決定的に条約改正と関係する。それは法治国家である証拠だから。つまり欧米諸国からすると、アジアの開発独裁下で民主化なんて進んでいない国でも、きちんと国際的なルールを守って、法律にしたがって商売してくれればいいわけだ。【佐藤】
 条約改正を行うために、当時の日本に課せられたのは三つの改革だった。すなわち、行政改革、税制改革、法制改革。これが果たせてはじめて国際社会のメンバーとして認められ、治外法権が撤廃されて関税自主権が戻ってくるわけだ。【山内】
 しかも関税自主権の獲得は、自国経済に直結している。税率を自分で定められなければ、自国産業の保護もできない。そう考えると、憲法制定はまさに①と結びついた話だった。かつて故吉野文六・元外務省アメリカ局長が面白いことを言っていた。「そもそも議員会館なんて、当時はなかった。あれは戦後になってできたんだ」と。官僚が議員会館に説明に行くこともなかった。戦前の国会、国会議員の存在感のなさをよく表している。【佐藤】
 かつては宮中序列にしても、親任官、勅任官の序列が高い。親任官は、文官なら大臣以上、大審院長(いまの最高裁長官)、特命全権大使、東京都長官、朝鮮総督、台湾総督など。帝国大学総長は低くて、せいぜい親任官待遇として扱われることもあった。陸海軍の武官なら大将以上。中将、少将は勅任官。もし中将が参謀総長や軍令部総長、師団長、司令長官などにつけば、役職に就いている間は親任官として遇されるが、国会議員はそれよりも低かった。皇室儀制令による宮中席次は面白い。貴族院と衆議院の議長でさえ、第1階第12で、大将や大臣の下にくる。国会議員はもっとひどく、第4階第39で、男爵や本省次官・局長の下に来る。今の国会議員なら、宮中で目をむいて怒り出すだろう(笑)。【山内】
 簡単にいうと、下に「閣下」がつくのが親任官。 【佐藤】
 実は戦前には特命全権大使というのが10人いるかいないか。あとは基本的には公使。中国でさせ途中までは中華民国公使だった。戦後は大使の数がインフレになるが、最近まで外国で自分を「閣下」と呼ばせていた大使や総領事もいた(笑)。【山内】
 今は変わったが、佐藤優が外務省に在籍した当時、便宜供与表によれば国会議員は中央官庁の局長と同格だった。県知事に至っては、官庁でいうと課長級。これは戦前、知事は任命制で、内務省の課長のポジションだった名残だ。最近改められて国会議員が上になったが。 【佐藤】
 いずれにしても、明治維新では富国強兵、議会と政党の設立、憲法制定などの複数の目標を同時に追求しつつ、政策の重点や情勢の変化に応じて、その時々のリーダーが入れ替わり、柔軟に対応できた。それがあの時期を生き抜けた大きな要因だった。【山内】

□山内昌之×佐藤優『大日本史』(文春新書、2017)
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 【参考】
【佐藤優】岩倉使節団が使った費用、100億円 ~明治初期~
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【佐藤優】岩倉使節団が使った費用、100億円 ~明治初期~

2017年12月26日 | ●佐藤優
 (1)明治初期は、複数の大きな転機を迎えた重要な時期だった。明治後期に日本は世界史を大きく変える戦争(日清戦争・日露戦争)に関わっているが、そこに至る諸問題は明治初期にすでにあらわれている。【山内】
 明治と年号が改まり、翌2年に戊辰戦争が終結、版籍奉還。4年に廃藩置県の断行、日清修好条約の締結、岩倉使節団の派遣。【佐藤】
 ことに岩倉使節団は、特命全権大使の岩倉具視以下、木戸孝允、大久保利通、伊藤博文といった維新政府の首脳陣が2年近くも米欧に外遊するという極めて特異なプロジェクトだった。【山内】
 革命政権のトップが革命後まもなくこぞって国を空けること自体、あまり例がない。【佐藤】
 それは重要な論点。ピョートル1世によるアムステルダムでの船大工修行など後進国のキャッチ・アップへの努力はあるが、岩倉使節団はまったく違う。使節団が帰国した明治6年、留守政府を仕切っていた西郷隆盛が朝鮮政策を巡って下野するという大問題もある。それが明治10年の西南戦争につながっていく。ここまで含めて岩倉使節団のインパクトを考えるべきだ。近代の形成という点で、明治14年までをひとつの区切りとする一部学界の見方に賛成したい。【山内】
 この年、憲法制定論議をめぐって、立憲君主制のプロシア型を支持する伊藤博文と、議院内閣制のイギリス型を推す大隈重信が対立、大隈一派が政権から追放される(明治14年の政変)。この年は同時に、国会開設が約束され、国営企業が民営化に舵を切った年。財政面で松方デフレが始まり、金融の要となる日本銀行が開設された年でもある。【山内】
 つまり、憲法、議会、中央銀行、民間経済といった近代的な国家の形がこの時期に立ち上がってくる。そこでもうひとつ重要なのは明治12の琉球処分。これは沖縄を日本の国家体制の中に取り込んだばかりでなく、その後の朝鮮、台湾、中国との関係とも深く結びついていく。【佐藤】
 幕末以来の変革期から、内外政策に均衡のとれた安定期に入っていく。それが明治14年だ。【山内】

 (2)岩倉使節団を論じるに、お金という切り口から入っていきたい。使節団は、使節46名、随員18名、留学生43名、総勢107名という大所帯で米国に8ヵ月、英国、仏国、独国、露国など欧州12ヵ国をまわり、インド、シンガポール、上海を通って1年10ヵ月後に帰国した。彼らはどのくらいの費用を使ったのか。当時の日本は、国家としてはまだ非常に弱い状態にあった。財政的にもとても余裕があると思えないのに、当時の資料によれば、使節団はほぼ青天井のお金を持っている印象なのだ。【佐藤】
 使節団に同行した久米邦武の『特命全権大使米欧回覧実記』によると、およそ50万ドル。明治政府は明治4年に金本位制に基づく新貨条例を定め、かつての1両を1円、かつ1円=1米ドル、1ポンド=5円と定めている。米価などの推移をもとに貨幣価値を比較すると、おおざっぱにいって当時の1円は今の2万円、つまり50万ドル(当時)=50万円(当時)=100億円(現在)。当時の国家予算が3,309円だから1.5%をあてたことになる。【山内】
 しかも、当時はまだ貨幣価値が浸透していないから、いまより皮膚感覚ではもっと大きなはず。岩倉使節団があれだけの仕事を残したのは、相当金をばらまいたからに違いない。いま東京に駐在する主要国のインテリジェンスオフィサーは一人あたりだいたい年間3千万円の予算枠を与えられている。基本的には3千万円を細かい決裁をとらずに個人の裁量で使っていい。特別なオペレーションの場合は、また別途与えられる。情報関係で一定の仕事をしようとすると、どうしても費用がかかってしまう。 【佐藤】
 使節団がニューヨークに行ったとき、高杉晋作のいとこを名乗る南貞助の斡旋で米国人から投資話をもちかけられた。結局、金を預かっていた田中光顕が反対したので旅費の50万ドルは無事だったが、何人かは個人で投資して、資本主義の冷酷な詐欺・騙しの手口をいやというほど知らされた(笑)。久米邦武もその一人で、100ポンド(当時)=1,000万円(現在)をすってしまう。【山内】
 個人レベルでもそれだけの金を用意していった、ということ。【佐藤】
 使節団が留まったホテルは、ロンドンならマジェスティックホテルなど、ファーストではなくもうひとつ上のデラックス・ホテルに留まっている。【山内】
 使節団に「安いホテルに泊まるとなめられるぞ」とアドバイスしてくれる人間がいたのだろう。これは外交の世界の常識だ。相手方は、泊まるホテル、使うレストラン、身なりなどで「格」を判定するから。【佐藤】

 (3)使節団に進言したのは、幕末にすでに欧米でさまざまな交渉に当たった旧幕使節経験者だろう。福沢諭吉など幕末期に欧米へ3回行っている。先人たちが身にしみて経験した欧米の差別的な扱いが、岩倉使節団に生かされたのだろう。実際、書記官として派遣された田辺太一や福地源一郎(桜痴)、林薫三郎らの書記官の面々は、みな幕臣として海外を経験している。田辺は横浜鎖港を目指す文久4年の遣仏使節団の一員で、維新後も日清外交などで活躍、文久元年の遣欧使節団に参加した福地はジャーナリストとしても名を馳せ、慶応2年の英国留学組の林は後に日英同盟の立役者となる林薫(ただす)だ。幕府の分厚い人材が、明治政府を実務面でいかに支えたかをよくあらわしている。【山内】

□山内昌之×佐藤優『大日本史』(文春新書、2017)
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【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

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【本】朝日新聞・書評委員が選ぶ「今年の3点」(抄)

2017年12月25日 | 批評・思想
★加藤出 (東短リサーチチーフエコノミスト)
(1)サザビーズで朝食を(フィリップ・フック著、中山ゆかり訳、フィルムアート社・3240円)
 ダビンチの絵が先日、500億円超で落札されたように、美術市場に巨額の資金が流入している。その知られざる内幕を(1)は軽妙洒脱(しゃだつ)な語り口で描く。競売のグローバル化や所得格差拡大が同市場にも影響を与えてきたことが分かる。
(2)かくて行動経済学は生まれり(マイケル・ルイス著、渡会圭子訳、文芸春秋・1944円)
 独創的な2人の天才心理学者、カーネマンとトヴェルスキーの波瀾(はらん)万丈の人生を描いた本が(2)。忖度(そんたく)とは対極の彼らの反骨精神が作った理論はR・セイヤーの行動経済学に受け継がれ、彼の今年のノーベル経済学賞受賞につながっている。

★柄谷行人(哲学者)
(1)宣教師ザビエルと被差別民(沖浦和光著、筑摩選書・1620円)
 (1)宣教師ザビエルに関する研究は数多いが、著者のように、日本における被差別民の歴史から見た人はいない。ザビエルはとりわけハンセン病者の救済を考えていた。この時期の日本の仏教では、ハンセン病者は前世の報いで仏の慈悲も及ばないと考えられていた。そこから見ると、彼の言動がいかに衝撃的であったかがわかる。
(2)虜囚 一六〇〇~一八五〇年のイギリス、帝国、そして世界(リンダ・コリー著、中村裕子ほか訳、法政大学出版局・8424円)
 (2)小さな島国のイギリス人がいかにして世界帝国を築きえたのか。その秘密を、輝かしい軍事的・政治的勝利からではなく、海外で虜囚となった多くの惨めなイギリス人の体験記から照明した。

★齋藤純一(早稲田大学教授)
(2)神と革命 ロシア革命の知られざる真実(下斗米伸夫著、筑摩選書・1944円)
 今年は、ロシア革命から100年の年でもあった。(2)は、共産主義イデオロギーのもとで覆われてきたロシア社会の宗教的な要素に光を当てる。ロシア正教の少数派が革命に深く関与した事実など、新鮮な指摘にとむ。

★斎藤美奈子(文芸評論家)
(1)日本キリスト教史 年表で読む(鈴木範久著、教文館・4968円)
 潜伏キリシタンが発見された1867年から150年に当たる今年は関連出版が相次いだ。(1)はキリスト教の伝来から現代までの500年余を概観した通史。キリスト教が日本の文化や教育、社会運動に与えた影響の大きさを痛感。
(2)守教 上・下(帚木蓬生著、新潮社・各1728円)
 (2)は久留米藩のある村を舞台に、キリシタンの民衆たちを描いた歴史小説。宣教師との出会いから禁教、弾圧、潜伏期を経た江戸末期まで300年。天正の少年使節の後日談も含め、通史に血肉を与えてくれる。

★椹木野衣(美術批評家)
(3)テトリス・エフェクト(ダン・アッカーマン著、小林啓倫訳、白揚社・2484円)
 (3)は過ぎゆくロシア革命百年から。世界を席巻したテトリスというゲームの誕生と普及の背後に、消え行く超大国の渦中でこんな攻防があったとは。

★野矢茂樹(東京大学教授)
(1)中動態の世界 意志と責任の考古学(國分功一郎著、医学書院・2160円)
 鷲田清一さんが私の仕事を、「中動相」という言葉を使って紹介してくださったことがある。私はそのとき中動相(中動態)ということをちゃんと理解していなかった。だけど、それと知らず私は中動態の世界に踏み込んでいたらしい。だから、(1)に強く反応したんだな。能動でもなく受動でもない、(2)と(3)はまさにそんな中動態の世界が示されている。
(2)湯殿山の哲学 修験と花と存在と(山内志朗著、ぷねうま舎・2700円)
 (2)では、山内さんが彼の故郷湯殿山を語るのでも、語らされるのでもなく、山内さんのもとに湯殿山の語りが立ち現われてくる。
(3)無くならない アートとデザインの間(佐藤直樹著、晶文社・2700円)
 (3)は、本よりもその頃開かれていた佐藤さんの個展に圧倒された。ここにも、描くのでも描かされるのでもない世界が、いつ果てることもなく出現している。この三冊は、いわば本の方が私を呼び寄せたのだろう。

★保阪正康(ノンフィクション作家)
(3)軍法会議のない「軍隊」 自衛隊に軍法会議は不要か(霞信彦著、慶応義塾大学出版会・1944円)
 (3)は今もっとも読まれるべき書と思う。軍法規の知識もなしに憲法改正論議を進めるのは笑止のことだ。

★宮田珠己(エッセイスト)
(3)〈アゼルバイジャン人〉の創出(塩野崎信也著、京都大学学術出版会・5400円)
 (3)アゼルバイジャン建国に際し、知識人たちによってアゼルバイジャン人という民族が創出され、それがやがてナショナリズムを生み、イラン領土の一部は歴史上自分たちのものと主張し始める。民族の伝統なんてそんなものかも。

★市田隆(本社編集委員)
(1)名誉と恍惚(松浦寿輝著、新潮社・5400円)
 (1)は、日中戦争時の上海で巧妙な陰謀に巻き込まれ、逃亡者となった日本人警官をめぐる物語。純文学作品として既に高い評価を得ているが、エンターテインメントとしても出色の出来栄え。幅広い読者に手にとってもらいたい小説だ。

□「書評委員が選ぶ「今年の3点」」(朝日新聞 2017年12月25日)
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 【参考】
【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』

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【佐藤優】巨大さを追求する近代的思考

2017年12月25日 | ●佐藤優
 ①齋藤孝『齋藤孝の一気読み! 日本近現代史』(東京堂出版 1,600円)
 ②藤原辰史『トラクターの世界史』(中公新書 860円)
 ③金革(金善和・訳)『自由を盗んだ少年』(太田出版 1,400円)

 (1)①を読み、戦争を阻止する知恵を歴史から学ばなくてはならないと痛感する。
 <では、何が戦争の抑止力になるのか。
 現実的な話をすれば、一つには国際協調や集団安全保障体制の維持が欠かせません。それに加えて、これまで見てきたような歴史から学ぶ姿勢も重要でしょう。
 そしてもう一つ、実際に戦争の惨禍に遭った人々の声に耳を傾け、後世に伝えることも、その当事者を両親や祖父母、曾祖父母に持つ私たちの責務ではないでしょうか>
 との齋藤氏の呼び掛けに全面的に共感する。

 (2)②は、トラクターという農業機械の歴史を通して人間と自然の関係について考察した力作だ。
 <わたしたちの食と農の世界は、現在、機械のみならず、種子、肥料、農薬、流通小売などさまざまな分野が、巨大で少数の企業の力に覆われている。巨大さを求める思考形態は、二〇世紀を支配した考え方の一つであった。その一つの兆候は農業機械化にあった。
 トラクターは、社会主義陣営にせよ、資本主義陣営にせよ、農場を巨大化し、自身も大きくしていった。R・C・ウィリアムズが、アメリカのトラクター史の最後に、「トラクターは、ジェファーソンの小農主義とは相容れない。むしろ、レーニンの考えとマッチしている」と述べたのも、あながち誇張ではない>
 との藤原氏の指摘の通り、「巨大さを求める思考形態」が近代の特徴だ。超高層ビルやタワー、大型タンカーなどと同じ発想でトラクターも発展してきたのである。このタイタニズム(巨大さを追求する発想)の結果、人間のこまやかさが忘れられる危機があるが、農業に関しては土と触れる人間の本能が、巨大化を追求する合理主義の歯止めになると思う。

 (3)③は、北朝鮮から中国経由で韓国に亡命した経験をつづった当事者手記だ。少年時代、北朝鮮の清津で、一人暮らしの老婦人を殺した双子の兄弟が公開処刑された場に立ち会った。
 <人が死ぬ瞬間を初めて見たその日の場面は、幼いぼくには十分衝撃的だったし、今でも脳裏に焼き付いている。しかし、九歳のぼくにとって、死刑囚たちの死は単に他人の死でしかなかった。恐怖を全身で感じるにはあまりに幼かった。当時、その場面を一緒に目撃した他の少年たちにとっても、双子の兄弟の死は自分たちとは何の関係もない事件にすぎなかっただろう>
 公開処刑のように暴力をむき出しにする全体主義体制の下では、人間の命の価値がそれほど重要に思えなくなってくる。自国民の生命を消耗品としか考えない思想がシステムに組み込まれた社会の恐ろしさが伝わってくる。

□佐藤優「巨大さを追求する近代的思考 ~知を磨く読書 第229回~」(「週刊ダイヤモンド」2017年12月30日/2018年1月6日号)
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 【参考】
【佐藤優】アナキズムという思考実験
【佐藤優】AIとの付き合い方を知る手引、宗教と国体論の危険な関係、若手官僚の思想の底の浅さ
【佐藤優】伊藤博文の天皇観と合理主義、歴史の戦略的奇襲から得る教訓、「知の巨人」井筒俊彦
【佐藤優】教育費の財源問題で政局化か
【佐藤優】ホワイトカラーの労働者化
【佐藤優】指導者たちの内在的論理を知る
【佐藤優】世界規模のポストモダン現象
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~
【佐藤優】カネとの付き合い方の秘訣、野外で生きる雑種ネコの魅力、前科者に冷たい日本社会
【佐藤優】着目すべき北極海の重要性、日本の政治文化に構造的に組み込まれている「甘え」、文明論と地政学を踏まえた時局評論
【佐藤優】リーダーが知るべき文明観、資本主義後の社会構想、刑務所暮らし経験者の本音
【佐藤優】地図から浮かぶ歴史のリアル、平成不況は金融政策のミス、実証的データに基づく貧困対策
【佐藤優】ケータイによる日本語の乱れ、翻訳の技術、ロシア人の内在的論理
【佐藤優】武蔵中高の教育、ルター宗教改革の根幹、獣医師にもっと競争原理を導入
【佐藤優】社会に活力をもたらす政策、具体的生活の上に立つ民族国家、開発至上主義が破壊する永久凍土の生態系
【佐藤優】日本のフリーメイソン陰謀論、ユニークな働き方改革、自衛隊元陸将によるリーダーシップ論
【佐藤優】ハプスブルク帝国史の「もし」、最新の進化論、神童の軌跡
【佐藤優】知識を本当に身に付けるには、テロ戦争におけるドローンの重要な役割、帰宅恐怖症
【佐藤優】北朝鮮との緊張の高まりに対して必要な姿勢、時間管理と量子力学、時間がかかるのは損
【佐藤優】川喜田二郎『発想法』 ~総合的思考と英国経験論哲学~
【佐藤優】日本の思想状況の貧しさ、頑丈にできている戦闘機、東方正教会に関する概説書
【佐藤優】資本主義の根底にある「勤勉さ」という美徳の淵源 ~『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』~
【佐藤優】手ごわいフェイクニュース、国を動かす政治エリートの意志、欧州内部における紛争
【佐藤優】×奥野長衛『JAに何ができるのか』
【佐藤優】『戦争論』をビジネスに活かす、現実社会の悪と闘う、ロシア人の意識と使命感
【佐藤優】面白い数学啓発書、日本人の思考の鋳型、攻める農業への転換
【佐藤優】総合的思考と英国経験論哲学(2) ~川喜田二郎『発想法』~
【佐藤優】総合的思考と英国経験論哲学 ~川喜田二郎『発想法』~
【佐藤優】保守論客が見た明治憲法、軍事産業にシフトしていく電機メーカー、安全と安心を強化する過程に入り込む犯罪者
【佐藤優】就活におけるネット社会の落とし穴、裁判官の資質、象徴天皇制と生前退位問題
【佐藤優】痛みを無視しない、前大戦で「前線」と「銃後」の区別がなくなった、情報を扱う仕事の最大の武器
【佐藤優】海上権力を維持するために必要な要素 ~イギリスの興亡の歴史を通して~
【佐藤優】女性の貧困を追跡したノンフィクション、師弟関係こそ教育の神髄、イランは国際基準から逸脱した国
【佐藤優】2000年の時を経て今なお変わらないインテリジェンスの「真髄」 ~孫子~
【佐藤優】財政から読みとく日本社会、ラジオの魅力、高校レベルの基礎の大切さ
【佐藤優】嫌韓本と一線を画す韓国ルポ、セカンドパートナーの実態、日本人の死生観
【佐藤優】人間にとって「影」とは何か ~シャミッソー『影をなくした男』~
【佐藤優】文部省の歴史と現状、経済実務家のロシア情勢分析、中国の対日観
【佐藤優】学習効果が上がる「入門書」、応用地政学で見る日本、権力による輿論のコントロールを脱構築
【佐藤優】大川周明『復興亜細亜の諸問題』 ~イスラーム世界のルール~
【佐藤優】女性と話すのが怖くなる本、ネット情報から真実をつかみ取る技法、ソ連とロシアに共通する民族問題
【佐藤優】ヨーロッパ宗教改革の本質、相手にわかるように説明するトレーニング、ロシア・エリートの欧米観
【佐藤優】なぜ神父は独身で牧師は結婚できるのか? 500周年の「革命」を知る ~マルティン・ルター『キリスト者の自由』~
【佐藤優】政界汚職を描いた古典 ~石川達三『金環蝕』~
【佐藤優】生きた経済の教科書、バチカンというインテリジェンス機関、正しかった「型」の教育
【佐藤優】誰かを袋だたきにしたい欲望、正統派の書評家・武田鉄矢、追い込まれつつある正社員
【佐藤優】発達障害とどう向き合うか、アドルノ哲学の知的刺激、インターネットと「情報犯罪」
【佐藤優】後醍醐天皇の力の源 「異形の輩」とは--日本の暗部を突く思考
【佐藤優】実用的な会話術、ユーラシア地域の通史、宇宙ロケットを生んだ珍妙な思想
【佐藤優】キブ・アンド・テイクが成功の秘訣、キリスト教文化圏の悪と悪魔、理系・文系の区別を捨てよ
【佐藤優】企業インテリジェンス小説 ~梶山季之『黒の試走車』~
【佐藤優】中東複合危機、金正恩の行動を読み解く鍵、「型破り」は「型」を踏まえて
【佐藤優】後世に名を残す村上春樹新作、気象災害対策の基本書、神学の処世術的応用
【佐藤優】地学の魅力、自分の頭で徹底的に考える、高等教育と短期の利潤追求
【佐藤優】日本人の特徴的な行動 ~日本礼賛ではない『ジャパン・アズ・ナンバーワン』~
【佐藤優】知を扱う基本的技法、ソ連人はあまり読まなかった『資本論』、自由に耐えるたくましさ
【佐藤優】後知恵上手が出世する? ~ビジネスに役立つ「哲学の巨人」読解法~
【佐藤優】トランプ政権の安保政策、「生きた言葉」という虚妄、キリスト教の開祖パウロ
【佐藤優】「暴君」のような上司のホンネとは? ~メロスのビジネス心理学~
【佐藤優】物まね芸人とスパイの共通点、新版太平記の完成、対戦型AIの原理
【佐藤優】トランプ側近が考える「恐怖のシナリオ」 ~日本も敵になる?~
【佐藤優】弱まる日本社会の知力、実践的ディベート術、受けるより与えるほうが幸い
【佐藤優】トランプの「会話力」を知る ~ワシントンポスト取材班『トランプ』~
【佐藤優】「不可能の可能性」に挑む、言語の果たす役割の大きさ、NYタイムズ紙コラムニストの人生論
【佐藤優】人生は実家の収入ですべて決まる? ~「下流」を脱する方法~
【佐藤優】ソ連崩壊後の労働者福祉軽視、現代も強い力を持つ観念論、孤独死予備軍と宗教
【佐藤優】米国のキリスト教的価値観、サイバー戦争論、日本会議
【佐藤優】『失敗の本質』/日本型組織の長所と短所
【佐藤優】世界を知る「最重要書物」 ~クラウゼヴィッツ『戦争論』~
【佐藤優】現代ロシアに関する教科書、ネコ問題はヒト問題、トランプ氏の顧問が見る中国
【佐藤優】日本には「物語の復権」が必要である ~反知性主義批判~
【佐藤優】サイコパス、新訳で甦る千年前の魂、長寿化に伴うライフスタイルの変化
【佐藤優】イラクの地政学、誠実なヒューマニスト、全ての人が受益者となる社会の構築
【佐藤優】外交に決定的に重要なタイミング、他人の気持ちになって考える力、科学と職人芸が融合した食品
【佐藤優】『ゼロからわかるキリスト教』の著者インタビュー ~「神」を論じる不可能に挑む~
【佐藤優】組織の非情さが骨身に沁みる ~新田次郎『八甲田山死の彷徨』~
【佐藤優】プーチン政権の本質、2017年の論点、ロシアと欧州
【佐藤優】国際人になるための教科書、ストレスが人間を強くする、日本に易姓革命はない
【佐藤優】ロシアでも愛された知識人の必読書 ~安部公房『砂の女』~
【佐藤優】トランプ当選予言の根拠、猫の絵本の哲学、人間関係で認知症を予防
【佐藤優】モンロー主義とトランプ次期大統領、官僚は二流の社会学者、プロのスパイの手口
【佐藤優】トランプを包括的に扱う好著、現代日本外交史、独自の民間外交
【佐藤優】デモや抗議活動のサブカルチャー化、グローバル化に対する反発を日露が共有、グローバル化に対する反発が国家機能を強化
【佐藤優】国際社会で日本が生き抜く条件、ルネサンスを準備したもの、理系情報の伝え方
【佐藤優】人生を豊かにする本、猫も人もカロリー過剰、度外れなロシア的天性
【佐藤優】テロリズム思想の変遷を学ぶ ~沢木耕太郎『テロルの決算』~
【佐藤優】住所格差と人生格差、人材育成で企業復活、教科書レベルの知識が必要
【佐藤優】数学嫌いのための数学入門、西欧的思考にわかりやすい浄土思想解釈、非共産主義的なロシア帝国
【佐藤優】ウラジオストク日本人居留民、辺野古移設反対を掲げる公明党沖縄県本部、偶然歴史に登場した労働力の商品化
【佐藤優】「21世紀の優生学」の危険、闇金ウシジマくんvs.ホリエモン、仔猫の救い方
【佐藤優】大学にも外務省にもいる「サンカク人間」 ~『文学部唯野教授』~
【佐藤優】訳・解説『貧乏物語 現代語訳』の目次
【佐藤優】「イスラム国」をつくった米大統領、強制収容所文学、「空気」による支配を脱構築
【佐藤優】トランプの対外観、米国のインターネット戦略、中国流の華夷秩序
【佐藤優】元モサド長官回想録、舌禍の原因、灘高生との対話
【佐藤優】孤立主義の米国外交、少子化対策における産まない自由、健康食品のウソ・ホント
【佐藤優】アフリカを収奪する中国、二種類の組織者、日本的ナルシシズムの成熟
【佐藤優】キリスト教徒として読む資本論 ~宇野弘蔵『経済原論』~
【佐藤優】未来の選択肢二つ、優れた文章作法の指南書、人間が変化させた生態系
【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方
【佐藤優】人びとの認識を操作する法 ~ゴルバチョフに会いに行く~
【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人
【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
【佐藤優】原油暴落の謎解き、沖縄を代表する詩人、安倍晋三のリアリズム
【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄 ~網野善彦『異形の王権』~
【佐藤優】新しい帝国主義時代、地図の「四色問題」、ベストセラー候補の研究書
【佐藤優】ねこはすごい、アゼルバイジャン、クンデラの官僚を描く小説
【佐藤優】外交官の論理力、安倍政権と共産党、研究不正が起きるシステム
【佐藤優】遅読家のための読書術、電気の構造、本屋大賞
【佐藤優】外山滋比古/思考の整理学
【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~
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【南雲つぐみ】シュンギク ~冬の食材~

2017年12月24日 | 医療・保健・福祉・介護
 キクの花は一般的に秋に咲くのだが、シュンギクは同じキク科でも春に花が咲く。それで「春菊」と呼ばれると聞いた。
 野菜としての旬は花が咲く前の秋から冬で、ブロッコリーなどと同じ。植物は花を咲かせるために栄養を使い果たしてしまうのだ。
 冬のシュンギクはすき焼きなどの鍋物には定番。天ぷらのタネにも重宝する。店舗では「サラダ春菊」をよく見かけるようになった。この食材は「オオバシュンギク」と」いって、九州地方では古くから食されていたという。
 葉が柔らかく、あくが少ないが、独特の香りはあるので、ゴマ油やキムチなど、個性の強いドレッシングや食材にも負けない。パクチーと合わせたサラダなども、エスニック好きな人にはたまらない。
 栄養も豊富で、葉酸や鉄、カリウムが多く、抗酸化物質であるベータカロテンの含有量はカボチャの4倍もあるとされる。
 スパイシーな香りはα-ピネンやカンフェンという成分で、胃腸の調子を整えるとされている。

□南雲つぐみ(医学ライター)「シュンギク ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年12月16日)を引用
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【佐藤優】京都の共産党 ~「暴走する」世界の正体(3)~

2017年12月24日 | ●佐藤優
佐藤/日本の革命を考える場合、やはり日本共産党は大きなテーマです。宮崎さんの世代で圧倒的に人気があったのは新左翼だったのに、宮崎さんが左翼の本家本元である日共に行ったのは面白いです。家庭教師が党員だったとか、いろいろつながりもあるんでしょうけれど、そういう縁は誰にでもあったはずですしね。

宮崎/それは、何というんでしょうかね・・・・。問題意識を持ち始めた頃の自分の周りにいた党員の影響というのは当然あります。1950年代の後半から60年代に入るか入らないかぐらいの頃ですからね。
 やっぱり六全協(1955年の日本共産党第6全国協議会)以前の、非合法時代の党員たちが地下に潜った武装闘争時代の体験談なんかを聞いていましたから、影響はかなり大きいと思います。いかんせんガキでしたから、素直に話を聞くんですよ。

佐藤/同じ日共でも、国際派と所感派ではかなりイメージが違いますよね。当時の東京は国際派が強かったけど、東京以外は宮崎さんの周囲を含めて所感派が多かったと思うんです。
 1951年の日共の分裂で、執行部で武装闘争をやって北京へ逃げた徳田球一(初代書記長)などが所感派で、これにつかなかったのが宮本顕治(のちの議長)ら国際派でした。
 六全協は「国際派の勝利」として総括されていますから、その後の日共の幹部はほぼ例外なく国際派ですね。例外は吉岡吉典(元参議院議員団長、元赤旗編集局長)さんぐらいでしょうかね。彼は所感派ですからね。

宮崎/そうですね。吉岡さんも昔は中央委員会のゴリゴリでしたが、佐藤さんは外交官として議員時代の吉岡さんに便宜供与していますね。
 ただ京都は最初から国際派が強かったんです。幹部は京都大学が多いですから。国際派は宮本以下インテリばかりでした。
 一方で、京都は革新系の蜷川虎三が約30年にわたって知事を務めるなど、共産党の存在感が強かったですね。中選挙区時代の旧衆議院京都2区は定員5人のうち2人を共産党が取れていたこともありました。
 なぜそんなに強かったのかは今もよくわからないんですけれど、やはり所感派が労働の現場でがんばったからかなとも考えています。土木建築業から西陣織の工房まで小さな企業がほとんどですから、そういうところでは国際派のインテリでは無理だと思います。

□宮崎学×佐藤優『「暴走する」世界の正体』(SB新書、2017)の「第2章 平和なき世界での革命の可能性」
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 【参考】
【佐藤優】やくざとサイコパス ~「暴走する」世界の正体(2)~
【佐藤優】サイコパスと革命家 ~「暴走する」世界の正体~
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【高橋克彦】の立石寺 ~広重殺人事件~

2017年12月23日 | □旅
【高橋克彦】の立石寺 ~広重殺人事件~

 12月24日。クリスマス・イブの日。
 仙台から山形に繋がる仙山線。県境にゆったりとした稜線を見せる面白山(おもしろやま)の麓近くにある山寺駅。その駅のホームに、冷たい風を庇(かば)い合い寄り添った二人の男女が下り立った。想像していたよりも雪は少ない。今年は記録的な暖冬だ。二人の暮らしている盛岡にも、まだ雪らしい雪は一度も降っていない。それでも、やはり寒さは相当なものだった。真正面に巨大な烏帽子の形をして聳えている宝珠山(ほうじゅさん)から、夕日を受けて砕けたガラスのように輝いた霙(みぞれ)が二人に襲いかかってきた。山が黒いせいで、そこにだけ霙がはっきりと見えるのだ。二人の吐く息も白く流れる。
 津田良平と冴子はしばらく山を眺めた。
「まるでブラック・ホールだな」
 実際は霙が山に吸い込まれて行くのではなく、その反対なのだが・・・・
「ここに芭蕉が来たのね」
 威圧された顔で冴子は山を見上げた。この宝珠山は全山が一つの寺の境内となっている。正式名は立石寺(りっしゃくじ)。一般には山寺の名で親しまれている、東北きっての名刹だ。およそ三百年前に松尾芭蕉がこの山寺を訪れ--閑(しず)かさや岩にしみ入る蝉の声--の句を詠んだことで記憶している人間も多いだろう。山そのものが修行の場であるとは耳にしていた冴子だったが、そのあまりにも険(けわ)しい山容にたじろぎを覚えた。太い蝋燭(ろうそく)が地上に突き立てられているという形容が当たっている。霙と夕陽が加わって、まるで山水画の世界だと冴子は感じた。

□高橋克彦『広重殺人事件』(講談社、1989/後に講談社文庫、1992)最初の章「赤い糸」から引用
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【南雲つぐみ】誤嚥性肺炎 ~早い人は40代から~

2017年12月23日 | 医療・保健・福祉・介護
 「誤嚥(ごえん)」は、水や食べ物、唾液などが誤って気管に入ってしまうことだ。喉は、食道と気管(気道)が隣り合っている。水や食べ物を口に入れると、顎や舌が消化のために動く。その働きに合わせて、喉にある喉頭蓋(がい)などが動いて気管がふさがれ、飲み込んだときに食べ物が気管に行かない仕組みになっている。この「嚥下(えんげ)反射」が少しでもずれると、気管が閉じるのが遅れて、誤嚥が起こってしまう。
 呼吸器科専門の大谷義夫医師(池袋大谷クリニック院長)は、「誤嚥性肺炎は高齢期に始まるのではなく、中年期から繰り返し起こる中で次第に悪化していく」という。同医師による「65歳からの誤嚥性肺炎のケアと予防 9割の人は持病でしなない!」(法研=1,728円)によれば、初期の誤嚥は、食べ物ではなく、就寝時の唾液の飲み込みから始まるそうだ。早い人は40代から、口の中の雑菌の交じった唾液が何度も肺に入ることで、次第に肺炎になりやすくなる。肺機能を高める呼吸法や歯みがきなどが、若い時期からの予防になるという。

□南雲つぐみ(医学ライター)「誤嚥性肺炎 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年12月14日)を引用
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【佐藤優】やくざとサイコパス ~「暴走する」世界の正体(2)~

2017年12月23日 | ●佐藤優
佐藤/ヤクザ、自分たちの共同体に対する「愛情」や家族的な絆とかはありますよね。サイコパスは、そういうのがないんです。

宮崎/ヤクザになるのは、生育環境に問題のある「寂しがり屋」が大半ですね。
 その一方で、たしかに人を殺すことを何とも思っていない人間も一定程度います。同じヤクザでも、情のある人と、そうでない人がいるということです。
 私が子どもの頃は、旧日本軍の銃もまだたくさんあって、簡単に手に入りますから、父の若い衆の中には射撃の名手もいました。でも、そんな彼らでも、やはり抗争事件で殺しに行く前は緊張すると言ってました。
 刑罰も今ほど厳しくなかったから、懲役もそれほど長くないのですが、人を殺すことにやはり躊躇や迷いがあるんですね。
 でも、何人かに一人は人殺しがまったく平気なヤツがいるんです。殺してきたあとも平然とメシを食っていたりね。
 貧困と差別の中で親に愛されずに育った子どもたちが「思いやりのある大人」になれるわけがないのですが、それとは違う次元ですよね。サイコパスは生まれつきでしょう。

佐藤/中野信子さんによると、サイコパスみたいな人はアメリカ国内で総人口の4%程度いるそうです。3億2,000万人の4%【注】ですから、けっこうな人数ですね。それだけいるというのは、多分そのサイコパスがいないと、「同質化現象」みたいなのが起きて、人類は滅びるのだと思います。

 【注】約1,280万人。

□宮崎学×佐藤優『「暴走する」世界の正体』(SB新書、2017)の「第2章 平和なき世界での革命の可能性」
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 【参考】
【佐藤優】サイコパスと革命家 ~「暴走する」世界の正体~
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【佐藤優】サイコパスと革命家 ~「暴走する」世界の正体~

2017年12月23日 | ●佐藤優
佐藤/(前略)ヒトラーが絶大な支持を得ることができたのは、サイコパスだったからだと思います。
 私は、この「サイコパス」(Psychopath)たちによる革命にも注目しています。脳外科学者の中野信子さんんの著書『サイコパス』(2016年、文春新書)はサイコパスについて総合分析していて、とても面白いです。
 サイコパスとは、たとえば「(反社会的または暴力的傾向をもつ)精神病質者」(研究者『新英和辞典』)と定義されます。
 しかし、実態は、この定義よりも、人の気持ちの「ある部分」が理解できない人と考えた方がいい。痛みや哀しみ、切なさなどですね。特に痛みに関する感覚が鈍感なんです。そして、こういう人はエリートの中にもいるんです。
 サイコパスも自分が孤独であることは感じて、「偉くなりたい」などとは思うそうです。だから、サイコパスの政治家や企業経営者はプレゼンテーションが異常にうまく、説得力があります。その一方で、平気で矛盾したようなことも言う。それがサイコパスというわけです。

宮崎/サイコパスというと、たとえばレーニンなど「弁舌さわやかな人殺し」のようなイメージがあります。

佐藤/サイコパスの例は、聖書にもあります。新約聖書「ルカによる福音書」には「不正な管理人」の話があります。
 この解釈は難しいと言われていますが、主人のカネを使い込んだ管理人の「抜け目のないやり方」を主人は褒めて、「この世の子らは、自分の仲間に対して、光の子らよりも賢くふるまっている」と言います。
 現代社会で「光の子ら」というのは、何らかの理想を持つ献身的な人たち、「闇の子」とは、自分の利益だけを考える人たちですね。これがサイコパスです。
 そして、イエスは「不正にまみれた富で友だちを作りなさい」と謎めいたことを言います。「不正にまみれた富について忠実でなければ、誰があなたがたに本当に値あるものを任せるだろうか」と。
 ここでの「不正」とは、神の国における「正義」の反対語といわれています。つまり正義である神の国に対して、この世はすべて「不正」であり、「この世の富」とは私たちが今与えられているすべての物ということです。
 ここで言う「友だち」とは、イエス・キリストのことです。この世のあらゆるものを使ってキリストの意に適った人になれと言っているのでしょう。

□宮崎学×佐藤優『「暴走する」世界の正体』(SB新書、2017)の「第2章 平和なき世界での革命の可能性」
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 【参考】
【佐藤優】ISが狙うエジプトの大混乱 ~コプト教徒攻撃の目的~
【佐藤優】『悪の指導者(リーダー)論 』
【佐藤優】資本主義の先にある社会の展望とその可能性 ~労働時間の短縮と人間関係の強化~
【佐藤優】米ロ首脳会談でみえたトランプ氏の外交手腕
【佐藤優】【加計学園疑惑】官邸最高レベル指示を「闇文書」にした理由
【佐藤優】「入口論」から完全に訣別した首相と外務省 ~北方領土~
【佐藤優】「イスラム国」の延命 ~米軍のシリア攻撃が可能にした~
【佐藤優】又吉進外務省参与は沖縄史の汚点になる
【佐藤優】トランプ大統領とロシアなら取引は可能だ ~ロシア~
【佐藤優】金正恩はなぜ金正男を殺したのか? ~その「内在論理」~
【佐藤優】盤石な北朝鮮の権力基盤を弱める ~金正男暗殺~
【佐藤優】沖縄報道の植民地主義的な認識 ~朝日新聞~
【佐藤優】マティス国防長官来日/尖閣は安保適用の範囲/北方領土との整合性は
【佐藤優】露外交官の追放問題に見るトランプ氏の能力
【佐藤優】北方領土交渉に必要な反日ロビー活動の封印
【佐藤優】沖縄に対する構造的差別 ~「土人」発言~
【佐藤優】尖閣諸島から米国が手を引く可能性 ~北方領土交渉と日米安保~
【佐藤優】ウズベキスタンにIS流入の危険 ~カリモフ大統領死去~
【佐藤優】国後島で日本人通訳拘束/首脳会談への影響は ~実践ニュース塾~
【佐藤優】モサド長官から学んだインテリジェンスの技術
【佐藤優】ロシア大統領府長官にワイノ氏就任の意味 ~北方領土交渉~
【佐藤優】西郷と大久保はなぜ決裂したのか ~征韓論争~
【佐藤優】開発独裁とは違う明治維新 ~目的は複数、リーダーも複数~
【佐藤優】岩倉使節団が使った費用、100億円 ~明治初期~
【佐藤優】反省より不快示すロシア ~五輪ドーピング問題~
【佐藤優】 改憲を語るリスクと語らないリスク ~改憲問題~
【佐藤優】+池上彰 エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】スコットランドの動静と沖縄の日本離れの加速
【佐藤優】沖縄の全基地閉鎖要求・・・・を待ち望む中央官僚の策謀
【佐藤優】ナチスドイツ・ロシア・中国・北朝鮮 ~世界の独裁者~
【佐藤優】急進展する日露関係 ~安倍首相が取り組むべき宿題~
【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 ~北方領土返還の可能性~
【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~
【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが ~辺野古新基地建設~
【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~
【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~
【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ
【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 ~日本政府が怒った「強硬発言」~
【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? ~英報告書の波紋~
【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題
【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 ~ニムル師~

【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 ~島尻安伊子~
【佐藤優】陰険で根暗な前任、人柄が悪くて能力のある新任 ~駐露大使~
【佐藤優】世界史の基礎を身につける法、決断力の磨き方
【佐藤優】国内で育ったテロリストは潰せない ~米国の排外主義的気運~
【佐藤優】沖縄が敗訴したら起きること ~辺野古代執行訴訟~
【佐藤優】知を身につける ~行為から思考へ~
【佐藤優】プーチンの「外交ゲーム」に呑まれて
【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~
【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 ~日本でテロ(2)~
【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~
【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス ~知の武装・抄~
【佐藤優】分析力の鍛錬、事例、実践例 ~知の教室・抄(3)~
【佐藤優】武器としての教養、闘い方、対話の技術 ~知の教室・抄(2)~
【佐藤優】知的技術、情報を拾う・使う、知をビジネスに ~知の教室・抄(1)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(1)~
【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 ~知の教室~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
 ★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数
【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 ~知を磨く読書~
【佐藤優】すべては国益のため--冷徹な「計算」 ~プーチン~
【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 ~ソ連の手口と酷似~
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書
【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 ~日本でも衝突~
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 ~激変する国際秩序~
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 ~昭和史(10)~
【佐藤優】地政学の目で中国を読む ~昭和史(9)~
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 ~昭和史(8)~
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 ~昭和史(7)~
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない ~昭和史(6)~
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ ~昭和史(5)~
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ ~昭和史(4)~
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ ~昭和史(3)~
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 ~昭和史(2)~
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する ~昭和史(1)~
【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 ~同性愛~
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 ~公約撤回~
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 ~ノーベル文学賞~
【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム ~「疑わしきは殺す」~
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 ~翁長国連演説~
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 ~知を磨く読書~
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 ~イランが怒る理由~
【佐藤優】テロ対策、特高の現実 ~知を磨く読書~
【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 ~『服従』~
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 ~知を磨く読書~
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 ~対日関係悪化~
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 ~ロシア首相の北方領土訪問~
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 ~北方領土問題~
【佐藤優】基地への見解違いすぎる ~沖縄と政府の集中協議~
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない ~翁長雄志~
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 ~ロシア~
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか ~イランの核問題~
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 ~安倍“暴走”内閣(10)~
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(9)~
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 ~安倍“暴走”内閣(8)~
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 ~安倍“暴走”内閣(7)~
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 ~安倍“暴走”内閣(6)~
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 ~安倍“暴走”内閣(5)~
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 ~安倍“暴走”内閣(4)~
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 ~安倍“暴走”内閣(3)~
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン ~安倍“暴走”内閣(2)~
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 ~安倍“暴走”内閣(1)~
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 ~藤崎一郎・元駐米大使~
【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 ~超したたか勉強術(2)~
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【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
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【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
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【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
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【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
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【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
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【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
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【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
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【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
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【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
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【佐藤優】ISが狙うエジプトの大混乱 ~コプト教徒攻撃の目的~

2017年12月22日 | ●佐藤優
 (1)エジプトが非常に重要であるのは、現在の人口の約1割が非カルケドン派キリスト教徒であるということだ。
 非カルケドン派とは、カルケドン公会議の決議を拒絶して成立した諸教会のことだ。カルケドン公会議とは、451年にカルケドン、現在のイスタンブールのアジア側あたりで行われたキリスト教の公会議のことだ。
 この公会議で、イエス・キリストは真の神で真の人であるという両性論が確認された。この両性論に反対したのが非カルケドン派の諸教会だ。アルメニア使徒教会、エチオピア教会、コプト教会、シリア教会などがある。
 エジプトの非カルケドン派のキリスト教徒の9割はコプト教会だが、コプトを含めて非カルケドン派のキリスト教徒が人口全体の約1割もいるわけだ。すなわちエジプトは純粋なムスリムの国ではなく、イスラミズムとナショナリズムの要素が複雑に入り込んでいる。
 その中においてキリスト教徒がそれなりの役割を持っており、同時に西側の窓になる。

 (2)一昔前までは、コプト教会や非カルケドン派の教会は異端という言い方をされていた。しかし、神学的な研究が進んでくると、非カルケドン派の教会というのは、カルケドン派の教会と距離はそう遠くないということになった。ここでは詳しくは触れないが、公会議の中でも381年の1回目に定められた信条である、ニカイヤ・コンスタンティノポリス信条までは両派は一緒であると考えられるようになった。
 日本にもコプト教会の信者が何人かいるのだが、前述の流れを受けてコプト教会ではなくコプト正教会と名乗りを上げている。
 エジプトから帰ってきて改宗したような人が多いようだ。教会堂もある。ホームページも持っている。京都の木津川市にある。すでに開堂式を行い、教会も持っていてコミュニティができはじめている。

 (3)世界的な動きとして、キリスト教の正統派であるかどうかの基準が、今やカルケドン信条ではなく、ニカイヤ・コンスタンティノポリス信条に戻っている感じだ。

 (4)エジプトのキリスト教に触れるのは、ISとの関係で、今後エジプトがどのようになっていくかが重要だからだ。
 ここでISが勧めている作戦は、コプト教徒への攻撃だ。コプトしか載っていないバスを襲撃したり、最も弱い子どもを狙ったりしている。コプト教徒を攻撃すると、エジプトのシーシー政権としては、コプトを守らざるを得ない。
 そうすると、「なんだ、シーシー政権は異教徒であるキリスト教徒を守っているじゃないか」とエジプト国内のイスラム教徒から批判が出てくる。おそらくISはそのような計算をしている。ゆえに、これからも集中的にエジプト国内のコプト教徒を狙ってくる。
 そのような状況が続けば、ヨーロッパのキリスト教社会が反応する。エジプトは一体どうなっているのだという、国際的な圧力が強まる。それによって、人口の9割がイスラム教スンナ派であるエジプトと、キリスト教圏との対立が激しくなる。これはISにとってプラスだ。実によく考えられている。
 エジプト国内を割って、エジプトの中にあるエジプト人というアイデンティティを崩壊させる。そしてイスラム主義によるアイデンティティに転換していこうとしている。ISが考えているこの作戦が成功すれば、エジプトは大混乱に陥る。

□山内昌之×佐藤優『悪の指導者(リーダー)論 』(小学館新書、2017)の「第4章 軍を排除する男 レジェップ・タイイイップ・エルドアン(トルコ)、終身最高指導者 アリー・ハメネイ(イラン)」
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 【参考】
【佐藤優】『悪の指導者(リーダー)論 』
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【佐藤優】『悪の指導者(リーダー)論 』

2017年12月21日 | ●佐藤優
 
 まえがき 佐藤優
 序 章  ミサイルパニックの何が問題か
 第1章  歴史の「必然」が生んだ大統領
       ドナルド・トランプ(アメリカ)
 第2章  祖父と父の呪縛をはねのけた指導者(リーダー)
       金正恩(北朝鮮)
 第3章  歴史家にして稀代の語り手
       ウラジーミル・プーチン(ロシア)
 第4章  軍を排除する男 レジェップ・タイイイップ・エルドアン(トルコ)、
       終身最高指導者 アリー・ハメネイ(イラン)
 終 章  核を持つ北朝鮮と日本 
 あとがき 山内昌之

□山内昌之×佐藤優『悪の指導者(リーダー)論 』(小学館新書、2017)
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【南雲つぐみ】長寿の人たち

2017年12月21日 | 医療・保健・福祉・介護
 江戸時代の元祖健康本「養生訓」の著者、貝原益軒(えきけん)【注】は、幼少期から50歳ぐらいまでは体が弱く、むしろ病気がちだったそうだ。自分で学んだ医薬と健康の知識をもとに、長年かけて病弱な体質を克服し、84歳で「養生訓」を書いたという。
 2013年に107歳で没した昇地(しょうち)三郎氏(福岡教育大学名誉教授)は、亡くなる直前まで講演活動などで世界各地を飛び回り、106歳で「公共交通機関を利用して世界一周をした最高齢者」としてギネス世界記録に認定されている。私は昇地氏が100歳を超えてからの講演を拝聴したことがあるが、子ども時代は非常に病弱で、母の一口30回かみなさい」という教えを守ってきたといっておられた。また、70代から総入れ歯にされたというが「自分に合う入れ歯にすれば何でもかめます」といっていたのも印象に残っている。
 このような人たちは特別なのかもしれない。若い頃から病弱でも長生きができるということは、多くの人を勇気づけるのではないだろうか。

 【注】
【健康】ウォーキング

□南雲つぐみ(医学ライター)「長寿の人たち ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年9月12日)を引用
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【保健】米砂糖業界の苦々しいお話 ~不利なデータを半世紀も隠蔽?~

2017年12月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)2017年11月、生物学の専門誌に約50年前、米砂糖業界が砂糖の健康リスクに関する研究を闇に葬った、との論文が掲載された。
 米UCLAの研究チームが当時の米砂糖研究財団(SRF、現砂糖協会)の内部文書を調べ、明らかにしたもの。
 それによると、SRFは自ら資金提供した動物実験で「砂糖は冠動脈疾患リスクにつながり、ぼうこうがんリスクを上昇させる」という結果が出たことを嫌い、研究助成を打ち切り、動物実験の結果を公表しなかった、というのだ。
 SRFの後継団体である砂糖協会は、葬られた研究の存在を認めた。一方で、「研究費助成の打ち切りは、資金が乏しかったからだ」というコメントを出している。

 (2)実はこのUCLAの研究チーム、2016年も同様の手法で米砂糖業界の闇を暴露している。
 1950年代の米国では心筋梗塞や狭心症など冠動脈疾患による死亡率が急上昇し、社会問題になっていた。60年代に入ると、冠動脈疾患のリスクを高める食品に注目が集まる。
 このとき、主犯格として疑われたのは「脂質・コレステロール」と「砂糖」の二つ。医学的な研究で危険となれば、売り上げに響く。関連業界はせめて従犯格を勝ち取るため躍起となった。
 その過程でSRFから著名なレビュワーに資金が流れ、脂質を主犯とする研究の真偽判定には手心を加え、砂糖を主犯とする研究は徹底的に批判するよう依頼があった、というのだ。
 実際、67年に世界で最も影響力がある総合医学誌「NEJM」に掲載された同研究者のレビューは、「冠動脈疾患の予防は、コレステロールを減らし、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に替えることのみでよく、砂糖の関与はわずかである」と結論している。
 結局、これが決め手となり米国では「脂肪=悪玉」「砂糖=善玉」の図式が定着する。
 再び砂糖の健康リスクが注目され始めたのは、つい最近だ。

 (3)半世紀以上の時を経て、今度は「砂糖=悪玉」が流行の米国。
 実際は脂質も砂糖も「過剰摂取」で悪になる、だけのことだ。

□井出ゆきえ(医学ライター)「米砂糖業界の苦々しいお話/不利なデータを半世紀も隠蔽? ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.379~」(「週刊ダイヤモンド」2017年12月23日号)
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 【参考】
【保健】対人過敏は早く老ける? ~遺伝子レベルに影響~
【保健】慢性便秘に「考える人」 ~全国1,000万人のお悩みに~

【保健】ストレスでがんリスク上昇 ~ただし、男性に限る~
【保健】死亡率が最大5倍超に ~がん代替療法の選択で~
【保健】認知症と性格の関係 ~責任感は予防的に働く~
【保健】手洗い励行の季節 ~CDC推奨の方法は~
【保健】何を食べていましたか? ~認知良好な69~71歳の場合~
【保健】SNSに投稿した写真が鬱病診断の手がかりに?
【保健】もし妻が乳がんに罹患したら ~10月はピンクリボン月間~
【保健】ダイエット法の新説は最大18時間の絶食 ~朝・昼2食でBMI低下~
【保健】秋の登山でも水分補給を ~脱水係数で消費量を把握~
【保健】歯周病と全身疾患との関係
【保健】尿のpHで糖尿病の発症予測 ~酸性度が高いとリスクが上昇~
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【保健】長距離タイムは血液型しだいか ~影響は普段の練習に匹敵~
【保健】活動格差が肥満を招く ~72万人に対する調査で判明~
【保健】認知症の発症を予防する/10代から意識すべき9因子
【保健】10代の望まない妊娠を防ぐ ~長期間効果がある避妊法を選択~
【保健】糖尿病網膜症リスクを軽減 ~26メッツ・時/週以上の運動~
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【保健】狩猟・採集民族のチマネの人々に学ぶ ~現代的な生活は健康リスク~
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【保健】電子たばこで禁煙補助? ~英米で見解の相違~
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【保健】子供の感染性急性胃腸炎に ~家庭でできる経口補水療法を~
【保健】痛風発作の薬は低用量で/米国のガイドラインが推奨
【保健】社会文化的伝統は肥満のもと ~年末~春は危険だらけ~
【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~
【保健】子どもの砂糖摂取量は1日25g以下に ~肥満症対策のため清涼飲料より水~
【保健】偽薬効果は学習効果? ~慢性的な腰痛が軽減~
【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
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【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
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【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
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【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
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【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
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【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

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【本】著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書 ~『「地政心理」で語る半島と列島』~

2017年12月19日 | 批評・思想
★ロー・ダニエル『「地政心理」で語る半島と列島』(藤原書店 3,600円)

 (1)「韓国は許せない」と怒っている人が、あなたの周りにもいるだろう。あなた自身がすでにそうかもしれない。慰安婦問題から竹島における領土問題、北朝鮮への対応まで、怒りのポイントは無数にある。
 しかし、日本の外から見れば、「日本と韓国は世界で最もよく似た国」同士だ。相違点よりも、共通点の方がはるかに多い。なぜ、両国はかくも分かり合えないのか。

 (2)この問題を「地政心理」という概念を用いて、朝鮮半島と日本列島の関係を読み解こうとしたのが本書だ。地理や風土を比べると、日本列島は自然災害が極めて多く、逆に朝鮮半島には火山や地震の恐れがほとんどない。自然を畏敬する日本は欲望抑制型、韓国では欲望発散型の文明が育った。また、日本では「イエ」を基本とする小家族が、韓国では「血」に基づく大家族が共同体を作った。
 それを踏まえて、「度重なる侵略を受けた朝鮮民族には生まれた土地への帰属意識が希薄で、代わりに政治的共同体への執着が強くなる」と指摘されると、大きな謎がひとつ解けた気がしてくる。

 (3)こんな両国民が問題を抱えると、日本側の機能主義(デジュリ)と韓国側の当為主義(デファクト)は、なるほど噛み合わない。慰安婦問題などでの韓国側の主張には確かに無理なところがあるが、日本側の杓子定規な対応もやや奇異なものに思えてくる。
 本書の「社会のエリート層が市民社会を先導する知的・道徳的権威を失った」という嘆きは、日韓の双方が共有できるものではないか。

 (4)著者のロー・ダニエルは、韓国のソウル生まれ。「冷戦の子供」を自称する世代だが、米マサチューセッツ工科大学で博士号を取得し、中国や香港、日本でも研究生活を送ったユニークな経歴を持つ。前作の『竹島密約』(草思社)では、1965年の日韓基本条約締結の際に、竹島問題については「解決せざるをもって解決と見なす」との付属文書があったことを発掘し、アジア・太平洋賞を受賞した。
 日韓問題を客観的に語りつつ、知的誠実さを持続している。丁寧な注の付け方も含めて信頼に足る。「怒り」を乗り越える勇気を持つ方にお薦めしたい。
 本書は「半島と列島」がテーマなので、第3部では北朝鮮の地政心理も取り上げる。韓国の「同胞」の眼に映る北朝鮮のグロテスクな姿に驚かされる。特に「金正恩には日本への甘えがある」との指摘にも。
 嫌いな相手、許せない相手などとは言っていられない。今ほど、日韓のコミュニケーションが求められている時期はないはずだ。

□吉崎達彦(双日総合研究所チーフエコノミスト)「著者の知的誠実さに打たれる日韓問題を深く理解できる書  ~私の「イチオシ収穫本」~」(「週刊ダイヤモンド」2017年12月23日号)
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 【参考】
【本】人の判断はなぜ歪むのか/2人の研究者の友情物語 ~『かくて行動経済学は生まれり』~ 
【本】エネルギーの本質を学ぶ ~『エネルギーを選びなおす』~
【本】JR九州の勢いの秘密を凝縮 ~読んで元気が出る人間の物語~
【本】日本は英国の経験に学べ ~『イギリス近代史講義』~
【本】噴火の時待つ巨額損失のマグマ ~『異次元緩
【本】“立憲主義”の由来を知る ~『立憲非立憲』~
【本】日本語特殊論に与せず ~『英語にも主語はなかった』~
【本】小国の視点で歴史を学ぶ ~『石油に浮かぶ国/クウェートの歴史と現実』~
【本】日本における婚姻を考える ~『婚姻の話』~
【本】元財務官僚のエコノミストが日本経済復活の処方箋を説く ~『日本を救う最強の経済論』~
【本】歴史を知らずに大人になる不幸 ~『戦争の大問題 それでも戦争を選ぶのか。』~
【本】私たちの食卓はどうなるのか ~工業化された食糧生産の脆さ~
【本】歪み増殖していく物語に迷う ~『森へ行きましょう』~
【本】加工食品はどこから来たのか ~軍隊と科学の密な関係~
【本】80年代中世ブームの傑作 ~『一揆』~
【本】万華鏡のように迫る名著 ~『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』~
『【本】『世界をまどわせた地図』
【本】率直過ぎる米情報将校の直言 ~『戦場 -元国家安全保障担当補佐官による告発』~
【佐藤優】宗教改革の物語 ~近代、民族、国家の起源~」」
【本】舌鋒鋭く世の中の本質に迫る/地球規模で読まれた洞察の書 ~『反脆弱性』~
【本】【神戸】「自己満足」による過剰開発のツケ ~『神戸百年の大計と未来』~
【本】英国は“対岸の火事”にあらず ~新自由主義による悲惨な末路~
【本】人材開発でもPDCAを回す ~戦略的に人事を考える必読書~
【本】仮想通貨が通用する理屈 ~『経済ってそういうことだったのか会議』~
【本】進化認知学の世界への招待 ~『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』『動物になって生きてみた』~
【本】「戦争がつくっった現代の食卓」 ~ネイティック研究所~
【本】IT革命、コミュニケーションの変容、家族の繋がりが希薄化 ~『「サル化」する人間社会』~
【本】生命はいかに「調節」されるかを豊富な事例で解き明かす ~『セレンゲティ・ルール』~
【本】メディアの問題点をえぐる ~『勝負の分かれ目 メディアの生き残りに賭けた男たちの物語』~
【本】テイラー・J・マッツェオ『歴史の証人 ホテル・リッツ』
【本】中国から見た邪馬台国とは
【本】核兵器は世界を平和にするか ~著名学者2人がガチンコ対決~
【本】『戦争がつくった現代の食卓 軍と加工食品の知られざる関係』
【本】梅原猛『梅原猛の授業 仏教』
【本】東芝が危機に陥った原因は「サラリーマン全体主義」 ~『東芝 原子力敗戦』~
【本】バブル崩壊後の経済を総括 ~『日本の「失われた20年」』~
【本】20世紀英国は実は軍事色が濃厚 ~通念を覆す『戦争国家イギリス』
【本】時代による変化、方言など ~『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』~
【本】冷笑的な気分に喝を入れる警告と啓発に満ちた本 ~『日本中枢の狂謀』~
【本】物質至上主義批判の古典 ~『スモール イズ ビューティフル』~
【本】日本近現代史を学び直す ~『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』~
【本】精神の自由掲げた9人の輝き ~『暗い時代の人々』~
【本】遊牧民は「野蛮」ではなかった ~俗説を覆すユーラシアの通史~
【本】いつも同じ、ブレないのだ ~『ブラタモリ』(1~8)~
【本】分裂する米国を論じた労作 ~『階級 「断絶」社会 アメリカ』~
【本】否応なきグローバル化、つながることの有用性 ~「接続性」の地政学~
【本】読書の効用、ゆっくり丹念な ~より速く成果を出すメソッド~
【本】国谷裕子『キャスターという仕事』

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