昔 セキ・シャク・むかし 日部
解字 甲骨文は、「キザキザ印二つ(水害)+日(日数)」の会意。キザキザ印の重なりは災の異体字で水害を表す。日は日数を意味し、これにギザギザ印を加えた「昔」は、水害のあった数日前のむかしの意。甲骨文字では数日から十数日前を指すという[甲骨文字辞典]。字形はほぼ同じ形を保って金文まで続き、篆文でギザギザ印がVの左右に横線がついた形2つになり、これが現代字では龷に変化し昔になった。意味は、甲骨文字の数日前から、過去・いにしえの意となった。
意味 (1)むかし(昔)。いにしえ。「今昔コンジャク」(今とむかし)「昔時セキジ」(いにしえ) (2)さきごろ。きのう。「昔日セキジツ」(①むかし。②昨日)「昔年セキネン」(①むかし。②前年。去年) (3)夜。「昔昔セキセキ」(夜ごと)
イメージ
「水害・洪水」(昔・借・惜・鵲)
水害で土砂が「かさなる」(錯・醋・措・耤・籍・藉)
音の変化 セキ:昔・惜・耤・籍・藉 サク:錯・醋 シャク:借 ジャク:鵲 ソ:措
水害・洪水
借 シャク・シャ・かりる イ部
解字 「イ(人)+昔(水害)」 の会意形声。水害にあい他人の力をかりること。
意味 かりる(借りる)。物や力をかりうける。「借金シャッキン」「拝借ハイシャク」「借財シャクザイ」「貸借タイシャク」(貸し借り)
惜 セキ・シャク・おしい・おしむ 忄部
解字 「忄(心)+昔(水害)」の会意形声。水害にあい失ったものを名残おしく思うこと。
意味 おしい(惜しい)。おしむ(惜しむ)。「惜別セキベツ」「哀惜アイセキ」(悲しみ惜しむ)「惜敗セキハイ」「不惜身命フシャクシンミョウ」(仏法のため身命を惜しまず、ささげる)
鵲 ジャク・かささぎ 鳥部
解字 「鳥(とり)+昔(洪水)」の会意形声。洪水で渡れない天の川に鳥の橋を掛け渡し織姫と彦星を会わせた伝説をもつ鳥。
意味 かささぎ(鵲)。スズメ目カラス科の鳥。烏鵲ウジャクともいう。「鵲かささぎの橋」(陰暦7月7日の夜、牽牛星と織女星を会わせるため、鵲が翼をならべて天の川に渡す伝説上の橋)
かさなる
錯 サク・シャク・あやまる・まじる 金部
解字 「金(金)+昔(かさねる)」の会意形声。清代の[説文解字通訓定聲]は「金を涂(=塗)る也。今のいわゆる(所謂)鍍金トキン(メッキ)。俗字は鍍に作る」とする。青銅などの器の表面に金メッキ(金の膜を塗る)をすること。金メッキをすると下地の金属が隠されるので見誤る意となる。また、金メッキは薄い膜なので、器が物に強く触れたときなどにメッキの一部がはがれるので、はがれた部分が、まじる意となる。
古代の金メッキはどのように行われたか。
メッキは水銀に金を溶かし(水銀の金アマルガム)それを表面に塗ったのち、熱によって水銀を蒸発させる方法で行われた。中国では、紀元前500年ごろに青銅器に「金めっき」を施したとされ、それ以降盛んに行われた。日本では奈良の大仏の造営で用いられた(この時、水銀中毒の可能性があることが研究者により指摘されている)。なお、メッキとは外来語ではなく、水銀に金がとけて消えることから「滅金メッキン」という言葉の省略語。
意味 (1)あやまる(錯まる)。まちがえる。「錯覚サッカク」「錯誤サクゴ」 (2)まじる(錯じる)。まざる。入り乱れる。「錯綜サクソウ」「交錯コウサク」「錯乱サクラン」 (3)「介錯カイシャク」とは、①付き添って世話をすること。②切腹する人のそばに付き添い、首を斬り落とすこと。
醋 サク・ソ・す 酉部
解字 「酉(さけ)+昔(時をかさねる)」の会意形声。できあがった酒に古い酢を種として少し入れ日をかさねて発酵させるとできる酸っぱい液体。また、「酉(さけ)+昔(かさねる)」で、酒の杯のやりとりをかさねる意から、むくいる意味となる。
意味 (1)す(醋)。日本では同音の酢サクを用いる。酸味のある液体の調味料。「醋酸サクサン」(臭気と酸味をもつ無色の液体。酢の酸味の主成分。=酢酸) (2)すい。すっぱい。 (3)むくいる。杯をやりとりする。「酬醋シュウサク」(酒杯のやりとり)
措 ソ・おく 扌部
解字 「扌(手)+昔(かさねる)」 の会意形声。かさねる動作を手をつけて表し、置く意。また置いたものをうまく配置すること。
意味 おく(措く)。すえおく。とりはからう。「措辞ソジ」(文字や言葉の配置のしかた)「措置ソチ」(うまく置く。とりはからう)「挙措キョソ」(挙は手をあげる、措は手をおく、手の動作から立ち居ふるまいをいう)
耤 セキ・ジャク 耒部
解字 「耒(スキ)+昔(かさねる)」の会意形声。スキで土を起こして重ねること。
意味 田畑をたがやす。「耤田セキデン」(耕作地)
籍 セキ・ジャク・ふみ 竹部
解字 「竹(竹簡)+耤(=昔。かさねる)」の会意形声。文字を書いた竹簡を重ねて保存すること。
意味 (1)ふみ(籍)。文書。「漢籍カンセキ」「書籍ショセキ」 (2)役所の人別・戸別の文書。「戸籍コセキ」「本籍ホンセキ」「入籍ニュウセキ」
藉 セキ・シャ・しく 艸部
解字 「艸(くさ)+耤(=昔。かさねる)」の会意形声。草をかさねるように編んだ敷物のゴザをいう。また、耤の本来の意である「耕す」に艸をつけて、特に天子が祭礼で自ら耕す意に用いる。
意味 (1)しきもの。草で編んだ敷物。(2)(敷物を)しく(藉く)。(敷物の上を)ふむ。(転じて)ふみにじる。「狼藉ロウゼキ」(狼がふみにじる意から、①乱雑なさま。②理不尽に暴行する) (2)天子が自らたがやす。「藉田セキデン」(天子が祖先の祭礼に用いる米をつくるため自ら耕す田。およびその儀式。=籍田) (3)(敷き物を敷いて相手を)いたわる。「慰藉イシャ」(なぐさめ、いたわる。=慰謝)
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
解字 甲骨文は、「キザキザ印二つ(水害)+日(日数)」の会意。キザキザ印の重なりは災の異体字で水害を表す。日は日数を意味し、これにギザギザ印を加えた「昔」は、水害のあった数日前のむかしの意。甲骨文字では数日から十数日前を指すという[甲骨文字辞典]。字形はほぼ同じ形を保って金文まで続き、篆文でギザギザ印がVの左右に横線がついた形2つになり、これが現代字では龷に変化し昔になった。意味は、甲骨文字の数日前から、過去・いにしえの意となった。
意味 (1)むかし(昔)。いにしえ。「今昔コンジャク」(今とむかし)「昔時セキジ」(いにしえ) (2)さきごろ。きのう。「昔日セキジツ」(①むかし。②昨日)「昔年セキネン」(①むかし。②前年。去年) (3)夜。「昔昔セキセキ」(夜ごと)
イメージ
「水害・洪水」(昔・借・惜・鵲)
水害で土砂が「かさなる」(錯・醋・措・耤・籍・藉)
音の変化 セキ:昔・惜・耤・籍・藉 サク:錯・醋 シャク:借 ジャク:鵲 ソ:措
水害・洪水
借 シャク・シャ・かりる イ部
解字 「イ(人)+昔(水害)」 の会意形声。水害にあい他人の力をかりること。
意味 かりる(借りる)。物や力をかりうける。「借金シャッキン」「拝借ハイシャク」「借財シャクザイ」「貸借タイシャク」(貸し借り)
惜 セキ・シャク・おしい・おしむ 忄部
解字 「忄(心)+昔(水害)」の会意形声。水害にあい失ったものを名残おしく思うこと。
意味 おしい(惜しい)。おしむ(惜しむ)。「惜別セキベツ」「哀惜アイセキ」(悲しみ惜しむ)「惜敗セキハイ」「不惜身命フシャクシンミョウ」(仏法のため身命を惜しまず、ささげる)
鵲 ジャク・かささぎ 鳥部
解字 「鳥(とり)+昔(洪水)」の会意形声。洪水で渡れない天の川に鳥の橋を掛け渡し織姫と彦星を会わせた伝説をもつ鳥。
意味 かささぎ(鵲)。スズメ目カラス科の鳥。烏鵲ウジャクともいう。「鵲かささぎの橋」(陰暦7月7日の夜、牽牛星と織女星を会わせるため、鵲が翼をならべて天の川に渡す伝説上の橋)
かさなる
錯 サク・シャク・あやまる・まじる 金部
解字 「金(金)+昔(かさねる)」の会意形声。清代の[説文解字通訓定聲]は「金を涂(=塗)る也。今のいわゆる(所謂)鍍金トキン(メッキ)。俗字は鍍に作る」とする。青銅などの器の表面に金メッキ(金の膜を塗る)をすること。金メッキをすると下地の金属が隠されるので見誤る意となる。また、金メッキは薄い膜なので、器が物に強く触れたときなどにメッキの一部がはがれるので、はがれた部分が、まじる意となる。
古代の金メッキはどのように行われたか。
メッキは水銀に金を溶かし(水銀の金アマルガム)それを表面に塗ったのち、熱によって水銀を蒸発させる方法で行われた。中国では、紀元前500年ごろに青銅器に「金めっき」を施したとされ、それ以降盛んに行われた。日本では奈良の大仏の造営で用いられた(この時、水銀中毒の可能性があることが研究者により指摘されている)。なお、メッキとは外来語ではなく、水銀に金がとけて消えることから「滅金メッキン」という言葉の省略語。
意味 (1)あやまる(錯まる)。まちがえる。「錯覚サッカク」「錯誤サクゴ」 (2)まじる(錯じる)。まざる。入り乱れる。「錯綜サクソウ」「交錯コウサク」「錯乱サクラン」 (3)「介錯カイシャク」とは、①付き添って世話をすること。②切腹する人のそばに付き添い、首を斬り落とすこと。
醋 サク・ソ・す 酉部
解字 「酉(さけ)+昔(時をかさねる)」の会意形声。できあがった酒に古い酢を種として少し入れ日をかさねて発酵させるとできる酸っぱい液体。また、「酉(さけ)+昔(かさねる)」で、酒の杯のやりとりをかさねる意から、むくいる意味となる。
意味 (1)す(醋)。日本では同音の酢サクを用いる。酸味のある液体の調味料。「醋酸サクサン」(臭気と酸味をもつ無色の液体。酢の酸味の主成分。=酢酸) (2)すい。すっぱい。 (3)むくいる。杯をやりとりする。「酬醋シュウサク」(酒杯のやりとり)
措 ソ・おく 扌部
解字 「扌(手)+昔(かさねる)」 の会意形声。かさねる動作を手をつけて表し、置く意。また置いたものをうまく配置すること。
意味 おく(措く)。すえおく。とりはからう。「措辞ソジ」(文字や言葉の配置のしかた)「措置ソチ」(うまく置く。とりはからう)「挙措キョソ」(挙は手をあげる、措は手をおく、手の動作から立ち居ふるまいをいう)
耤 セキ・ジャク 耒部
解字 「耒(スキ)+昔(かさねる)」の会意形声。スキで土を起こして重ねること。
意味 田畑をたがやす。「耤田セキデン」(耕作地)
籍 セキ・ジャク・ふみ 竹部
解字 「竹(竹簡)+耤(=昔。かさねる)」の会意形声。文字を書いた竹簡を重ねて保存すること。
意味 (1)ふみ(籍)。文書。「漢籍カンセキ」「書籍ショセキ」 (2)役所の人別・戸別の文書。「戸籍コセキ」「本籍ホンセキ」「入籍ニュウセキ」
藉 セキ・シャ・しく 艸部
解字 「艸(くさ)+耤(=昔。かさねる)」の会意形声。草をかさねるように編んだ敷物のゴザをいう。また、耤の本来の意である「耕す」に艸をつけて、特に天子が祭礼で自ら耕す意に用いる。
意味 (1)しきもの。草で編んだ敷物。(2)(敷物を)しく(藉く)。(敷物の上を)ふむ。(転じて)ふみにじる。「狼藉ロウゼキ」(狼がふみにじる意から、①乱雑なさま。②理不尽に暴行する) (2)天子が自らたがやす。「藉田セキデン」(天子が祖先の祭礼に用いる米をつくるため自ら耕す田。およびその儀式。=籍田) (3)(敷き物を敷いて相手を)いたわる。「慰藉イシャ」(なぐさめ、いたわる。=慰謝)
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。