増訂しました。
夨 ショク・ソク 大部 cè
解字 大の字形の人が左に頭をかたむけたかたちの象形。[説文解字]は「頭を傾ける也(なり)。大に従う。象形」とする。
意味 あたまをかたむける。かたむく。
呉[吳] ゴ・くれ 口部 wú
解字 「口(くち)+夨(頭をかたむける)」の会意。人が頭をかたむけて口をあけた形。呉は金文から、姓や人名および官名(山林開発・漁労担当)に用いられた[簡明金文詞典]が、後漢の[説文解字]は「姓也(なり)。亦(また)郡也(なり)」と姓や郡の名に用いるほか、一曰(一説に)呉は大言(大きな声)也(なり)。夨ショクと口コウに従う」と、大きな声の意があるとする。しかし、この解釈には疑問がある。というのは現在、ほとんど使われることない字だが、呉の音符字に「口+呉」の𠱐ゴという字があるからだ。543年の[玉篇]は「笑わんと欲する也(なり)」とし笑う意としている。呉に口を加えたのは、呉の意味が 姓や郡名になったので、本来の意味を表すために口をつけた形であり(そのため、この字には口が二つある)、呉のもとの意味は「わらう」と考えられる。そこで、私は音符イメージとして「わらう」を挙げることとしたい。なお、吳は旧字。呉の音符字は常用漢字で「呉」と表記され、それ以外は「吳」になる。
中国語スクリプト(「呉越同舟」より)
意味 (1)昔の中国の国名。長江下流の蘇州や南京を都とした国。「呉越同舟ゴエツドウシュウ」(反目している呉と越の人が同じ船に乗る)「呉姫ゴキ」(呉の美しい女性)(2)中国の長江下流地域の総称。「呉音ゴオン」(日本漢字音の一つ。南北朝時代の南方方言をもとにしている)(4)姓のひとつ。「呉子ゴシ」(兵法家で「呉起ゴキ」という名の兵法書を出した)(5)[国]くれ(呉)。古く日本で中国を指した呼称。日が暮れる方角に当たるからと言われる。「呉竹くれたけ」(呉くれから渡来した竹、①淡竹ハチクの異称、②真竹の異称)「呉織くれはとり」(大和朝廷に仕えた渡来系の機織りの技術者、また、その織物。はとりは、はたおりの略)(6)[国]くれる(呉れる)。与える。
イメージ
「仮借(当て字)」(呉)
「わらう」(娯)
「形声字」(誤・虞・蜈・茣)
音の変化 ゴ:呉・娯・誤・蜈 グ:虞
わらう
娯 ゴ・たのしむ 女部 yú
解字 「女(おんな)+呉(わらう)」の会意形声。女がわらい、たのしむさまを娯ゴという。[説文解字]は「楽(たのし)む也(なり)。女に従い呉ゴの聲(声)」とする。
意味 たのしむ(娯しむ)。たのしみ。「娯楽ゴラク」「歓娯カンゴ」(よろこびたのしむ)「娯喜ゴキ」(よろこんでたのしむ)
形声字
誤 ゴ・あやまる 言部 wù
解字 「言(いう)+呉(ゴ)」の形声。言いまちがえることを誤ゴという。[説文解字]は「謬(あやま)る也(なり)。言に従い吳ゴ聲(声)」とする。
意味 あやまる(誤る)。あやまり。まちがい。「誤報ゴホウ」「誤解ゴカイ」「錯誤サクゴ」(①あやまり。まちがい。②現実と思っていることが一致しない。時代錯誤)
虞 グ・おそれ・おもんばかる 虍部 yú
解字 「虍(虎の頭)+呉(ゴ⇒グ)」の形声。虎の頭をかぶって踊る神楽舞を虞グという。虎のように踊るのでおそれる意となり、また、おもんばかる意となる。
意味 (1)おそれ(虞)。おそれる。うれえる。「憂虞ユウグ」(うれえおそれる)(2)おもんばかる(虞る)。前もって考える。「不虞フグ」(①思いがけない出来事。②先のことを前もって考えない)「虞グを以て不虞フグを待つ者は勝つ<孫子>」(注意深く準備した上で、準備の足りない敵を待ち受ける者は勝つ)(3)中国古代の王朝名。舜が帝位にあった期間。「虞舜グシュン」(舜が帝王であった王朝の名)(4)人名。「虞美人グビジン」(秦末の武将・項羽の愛人=虞姫グキ)「虞美人草グビジンソウ」(ひなげしの別名)
蜈 ゴ 虫部 wú
解字 「虫(むし)+吳(ゴ)」の形声。ゴという名の虫。「蜈蚣ゴコウ」に用いられる。ムカデ科の節足動物をいう。
意味 「蜈蚣ゴコウ・むかで」に用いられる字。蜈蚣とは、ムカデ科の節足動物の総称。多数の足があり身をくねらせて進む。蚣コウもむかでの意。百足とも書く。
茣 ゴ 艸部 wú
解字 「艸(くさ)+吳(ゴ)」の形声。ゴという名の艸(草)。「茣蓙ゴザ」に用いる。
意味 「茣蓙ゴザ」とは、藺草で編んだ縁つきの筵むしろ。
麌 ゴ・おじか 鹿部 yǔ
解字 「鹿(しか)+吳(ゴ)」の形声。牡(おす)の鹿を麌ゴという。
意味 (1)おじか(麌)。(2)「麌麌ゴゴ」とは、群がり集まるさま。
<紫色は常用漢字>
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※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
夨 ショク・ソク 大部 cè
解字 大の字形の人が左に頭をかたむけたかたちの象形。[説文解字]は「頭を傾ける也(なり)。大に従う。象形」とする。
意味 あたまをかたむける。かたむく。
呉[吳] ゴ・くれ 口部 wú
解字 「口(くち)+夨(頭をかたむける)」の会意。人が頭をかたむけて口をあけた形。呉は金文から、姓や人名および官名(山林開発・漁労担当)に用いられた[簡明金文詞典]が、後漢の[説文解字]は「姓也(なり)。亦(また)郡也(なり)」と姓や郡の名に用いるほか、一曰(一説に)呉は大言(大きな声)也(なり)。夨ショクと口コウに従う」と、大きな声の意があるとする。しかし、この解釈には疑問がある。というのは現在、ほとんど使われることない字だが、呉の音符字に「口+呉」の𠱐ゴという字があるからだ。543年の[玉篇]は「笑わんと欲する也(なり)」とし笑う意としている。呉に口を加えたのは、呉の意味が 姓や郡名になったので、本来の意味を表すために口をつけた形であり(そのため、この字には口が二つある)、呉のもとの意味は「わらう」と考えられる。そこで、私は音符イメージとして「わらう」を挙げることとしたい。なお、吳は旧字。呉の音符字は常用漢字で「呉」と表記され、それ以外は「吳」になる。
中国語スクリプト(「呉越同舟」より)
意味 (1)昔の中国の国名。長江下流の蘇州や南京を都とした国。「呉越同舟ゴエツドウシュウ」(反目している呉と越の人が同じ船に乗る)「呉姫ゴキ」(呉の美しい女性)(2)中国の長江下流地域の総称。「呉音ゴオン」(日本漢字音の一つ。南北朝時代の南方方言をもとにしている)(4)姓のひとつ。「呉子ゴシ」(兵法家で「呉起ゴキ」という名の兵法書を出した)(5)[国]くれ(呉)。古く日本で中国を指した呼称。日が暮れる方角に当たるからと言われる。「呉竹くれたけ」(呉くれから渡来した竹、①淡竹ハチクの異称、②真竹の異称)「呉織くれはとり」(大和朝廷に仕えた渡来系の機織りの技術者、また、その織物。はとりは、はたおりの略)(6)[国]くれる(呉れる)。与える。
イメージ
「仮借(当て字)」(呉)
「わらう」(娯)
「形声字」(誤・虞・蜈・茣)
音の変化 ゴ:呉・娯・誤・蜈 グ:虞
わらう
娯 ゴ・たのしむ 女部 yú
解字 「女(おんな)+呉(わらう)」の会意形声。女がわらい、たのしむさまを娯ゴという。[説文解字]は「楽(たのし)む也(なり)。女に従い呉ゴの聲(声)」とする。
意味 たのしむ(娯しむ)。たのしみ。「娯楽ゴラク」「歓娯カンゴ」(よろこびたのしむ)「娯喜ゴキ」(よろこんでたのしむ)
形声字
誤 ゴ・あやまる 言部 wù
解字 「言(いう)+呉(ゴ)」の形声。言いまちがえることを誤ゴという。[説文解字]は「謬(あやま)る也(なり)。言に従い吳ゴ聲(声)」とする。
意味 あやまる(誤る)。あやまり。まちがい。「誤報ゴホウ」「誤解ゴカイ」「錯誤サクゴ」(①あやまり。まちがい。②現実と思っていることが一致しない。時代錯誤)
虞 グ・おそれ・おもんばかる 虍部 yú
解字 「虍(虎の頭)+呉(ゴ⇒グ)」の形声。虎の頭をかぶって踊る神楽舞を虞グという。虎のように踊るのでおそれる意となり、また、おもんばかる意となる。
意味 (1)おそれ(虞)。おそれる。うれえる。「憂虞ユウグ」(うれえおそれる)(2)おもんばかる(虞る)。前もって考える。「不虞フグ」(①思いがけない出来事。②先のことを前もって考えない)「虞グを以て不虞フグを待つ者は勝つ<孫子>」(注意深く準備した上で、準備の足りない敵を待ち受ける者は勝つ)(3)中国古代の王朝名。舜が帝位にあった期間。「虞舜グシュン」(舜が帝王であった王朝の名)(4)人名。「虞美人グビジン」(秦末の武将・項羽の愛人=虞姫グキ)「虞美人草グビジンソウ」(ひなげしの別名)
蜈 ゴ 虫部 wú
解字 「虫(むし)+吳(ゴ)」の形声。ゴという名の虫。「蜈蚣ゴコウ」に用いられる。ムカデ科の節足動物をいう。
意味 「蜈蚣ゴコウ・むかで」に用いられる字。蜈蚣とは、ムカデ科の節足動物の総称。多数の足があり身をくねらせて進む。蚣コウもむかでの意。百足とも書く。
茣 ゴ 艸部 wú
解字 「艸(くさ)+吳(ゴ)」の形声。ゴという名の艸(草)。「茣蓙ゴザ」に用いる。
意味 「茣蓙ゴザ」とは、藺草で編んだ縁つきの筵むしろ。
麌 ゴ・おじか 鹿部 yǔ
解字 「鹿(しか)+吳(ゴ)」の形声。牡(おす)の鹿を麌ゴという。
意味 (1)おじか(麌)。(2)「麌麌ゴゴ」とは、群がり集まるさま。
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