漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「良リョウ」<よい> と 「郎ロウ」「朗ロウ」「琅ロウ」「浪ロウ」「狼ロウ」「廊ロウ」「莨ロウ」「榔ロウ」「螂ロウ」「娘ジョウ」

2024年11月19日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 リョウ・ロウ・よい  艮部こん liáng

解字 良の解釈については諸説があり定まっていない。甲骨文字は口に短線が入った形から上下に二本の線がのびた形が基本になっている(しかし、単線が入らない形も多い)。意味は、①地名またはその長、①祭祀名。[甲骨文字辞典]。金文は甲骨文字と似た形であるが、すでに「良い」意味となっており、[簡明金文詞典]には、良人(好人、善人)・良女(善良な女子)・良臣(忠で賢い臣下)・良佐(すぐれた輔佐)・良金(銅の意)・良馬の記載がある。篆文は[説文解字]が「善也(なり)。(発音は)呂張切(リョウ)」とする。口に短線が入った形は歴代の字にひきつがれ現代の良にもある。新字体の左辺になるとき、良⇒郎の左辺に簡略化される。 
意味 (1)よい(良い)。すぐれている。好ましい。「良心リョウシン」「良否リョウヒ」「良薬リョウヤク」「良好リョウコウ」(2)善良な人。立派な人。「良人リョウジン」「良士リョウシ」(3)よく(良く)。できる。

イメージ  
 「よい」(良・郎・朗・娘・琅)
 「形声字」(浪・狼・莨・廊・榔・螂)

音の変化  リョウ:良  ロウ:郎・朗・琅・浪・狼・莨・廊・榔・螂  ジョウ:娘

よ い
 ロウ  阝部 láng・làng 
解字 「阝(邑:まち)+良の略体(よい)」の会意形声。まちに住む教育や地位のある人(良士)が原義。転じて、若い男の意を中心に使われる。
意味 (1)おとこ。若い男。「新郎シンロウ」(結婚したばかりの男性)「野郎ヤロウ」(田舎者。若い男)(2)けらい。主人に仕えるもの。「郎党ロウトウ」(従者)「下郎ゲロウ」(使われている身分の卑しい男)(3)男子の名前に用いる。「太郎」「次郎」
 ロウ・ほがらか  月部 lǎng
解字 「月(つき)+良の略体(よい )」の会意形声。よい月、すなわち明るい月の意。きよらかで曇りがないことを性格に転じて、ほがらかの意を持つ。
意味 (1)あかるい。よい。「清朗セイロウ」「朗報ロウホウ」(2)ほがらか(朗らか)。「明朗メイロウ」(3)たからか。声たかく。「朗読ロウドク」「朗詠ロウエイ」(声高くうたうこと)
 ジョウ・むすめ  女部 niáng
解字 「女(おんな)+良(よい)」の会意形声。よい女の意。若い女のほか、母親の意もある。
意味 (1)むすめ(娘)。おとめ。未婚の女性。「娘盛(むすめざか)り」「娘婿むすめむこ」「看板娘かんばんむすめ」「娘子ジョウシ」(①少女、②[俗]母。妻。)(2)はは(母)「娘娘ジョウジョウ」(もと母。中国の民間信仰の女性神。中国語で、ニャンニャン)「娘娘廟ニャンニャンビョウ」(道教の、女神を祀(まつ)る廟)
 ロウ  王部 láng
解字 「王(玉)+良(すばらしい)」の会意形声。すばらしい玉石。
意味 (1)美しい玉石。「琳琅リンロウ」(美しい玉。美しい詩文)(2)玉や金属が触れ合って鳴る音。「琅琅ロウロウ」「琅然ロウゼン」(①玉の鳴る音、②美しい水の音)

形声字
 ロウ・ラン・なみ  氵部 làng
解字 「氵(水)+良(リョウ⇒ロウ)」の形声。古くはロウという名の川を言った。[説文解字]は「滄浪ソウロウ水也(なり)。南で江(揚子江)に入る。水に従い良の聲(声)。発音は來宕切(ロウ)」とする。滄浪ソウロウは、古くは川の名であり、この川の流れから転じて、波浪ハロウ(なみ)の意味に用いる。さらに、さすらう(放浪)・みだりに(浪費)の意味になった。
意味 (1)なみ(浪)。おおなみ。「波浪ハロウ」「激浪ゲキロウ」(激しい浪)(2)さすらう。さまよう。「放浪ホウロウ」「流浪ルロウ」(さまようこと)「浪人ロウニン」(①仕事を持たない人、②卒業し、さらに上の学校をめざす受験生)(3)みだりに。ほしいままに。「浪費ロウヒ
 ロウ・おおかみ  犭部 láng
解字 「犭(いぬ)+良(リョウ⇒ロウ)の形声。ロウという名の犬に似た凶暴な獣を狼ロウという。[説文解字]は「犬に似る。頭が鋭く頬が白く、前が高く後ろが広い。犬に従い良の聲(声)。発音は魯當切(ロウ)」とする。

犬と狼の違い」(ワンコnowa)より)
意味 (1)おおかみ(狼)。イヌ科の哺乳動物。集団で生活する。日本ではヤマイヌとも呼ばれたが絶滅した。「狼煙ロウエン」(のろし。狼のフンを混ぜて燃やした煙)(2)狼のように凶暴で無慈悲。「狼心ロウシン」(狼のように欲深い心)「狼虎ロウコ」(残忍で欲深いものの例え)(3)みだれる。「狼藉ロウゼキ」(乱暴なこと)(4)うろたえる。「狼狽ロウバイ」(狼は前足が長く後足は短いのに対し、狽はその逆。両者はいつも共に行動し、離れると倒れて、うろたえることから、あわてふためくこと[広辞苑])
 ロウ・たばこ  艸部 làng・liáng
解字 「艸(くさ)+良(ロウ)」の形声。ロウは狼ロウ(おおかみ)に通じ、中国で狼尾草という狼の尾のような穂をつける禾本科の多年草をいう。このほか莨のつく植物にナス科の「莨菪ロウトウ」がある。これは全草に毒があるが特に根に毒性が強く嘔吐や、めまい、幻覚、異常興奮などを起こす。日本ではハシリドコロとよばれ山間に自生する。のち、南アメリカの原産で桃山時代に日本に移入された煙草に莨の字を当てた。
意味 (1)中国で狼尾草ロウビソウというススキに似た多年生禾本科植物。また「莨菪ロウトウ」という毒性のある草の名。(2)[国] たばこ(莨)。=煙草。烟草。ナス科の多年草である煙草をいう。日本では一年草。高さ約2メートルになり、大きい楕円形の葉が互生する。葉にニコチンを含み喫煙用に加工する。南アメリカの原産で、桃山時代に移入された。また、タバコの葉を乾燥・加工したものをいう。「莨入たばこいれ」(刻みタバコを入れる携帯用の容器。=煙草入)
 ロウ  广部 láng
解字 「广(やね)+郎(ロウ)」の形声。ロウは梁ロウ・リョウ(両岸をわたす)に通じ、建物の両側を渡す屋根のある通路の意。漢代の[説文解字]は「東西の序(堂の前の廂(ひさし)のある通路)也(なり)」とする。梁代(543年)の[玉篇]は「廡下(のきした)也(なり)」。宋代の[廣韻]は「殿下の外の屋也(なり)」とする。

法隆寺回廊(「WANDER国宝・建築」より)
意味 (1)宮殿の回りにめぐらした張り出しの通路。わたどの。「回廊カイロウ」(中庭や建物を囲む屋根のある通路)「廊宇ロウウ」(回廊のある大きな屋敷)「廊廟ロウビョウ」(表御殿。政治を行う建物)(2)建物の中に作られた細長い通路。「廊下ロウカ」「廊下橋ロウカばし」(廊下のように屋根を設けた橋)
 ロウ  木部 láng
解字 「木(き)+郎(ロウ)」の形声。ロウという名の木。檳榔ビンロウに用いられる字。
意味 檳榔ビンロウとは、ヤシ科の常緑高木で、果実は鶏卵大の大きさ、キンマの葉に包んで噛む嗜好品。(=檳榔樹)。「檳榔子ビンロウジ」(檳榔樹の果実)
 ロウ  虫部 láng
解字 「虫(むし)+郎(ロウ)」の形声。ロウという名の昆虫。蟷螂トウロウに使われる。

カマキリ(ウィキペディアより)
意味 蟷螂トウロウとは、カマキリのこと。蟷トウはトウ(刀)に通じ、刀のような前脚をもつ虫。螂ロウは郎(若者)に通じる。蟷螂は、刀を持った若者に虫をつけ、勇気ある若者が虫になった形。螳螂トウロウとも書く。「螳螂の斧おの」(中国の故事。斉国王の荘公が馬車で出かけると、道に一匹のカマキリがいて、逃げださず前足をふりあげて馬車に向かってきた。荘公はその勇気を賞して、わざわざ車の向きを変えさせたという。)
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする