漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「兎ト」 <うさぎ> と 「菟ト」「逸イツ」「冤エン」

2024年11月02日 | 漢字の音符
[兔] ト・うさぎ  儿部 


 上は兎、下は免メン
解字 甲骨文はうさぎの形の象形。金文からかなり変形した。篆文第1字は春秋期の字で金文とのつながりがある、篆文第2字は[説文解字]だが、子を分娩する形の免に尻尾をつけた形。旧字は兔となったが、上が刀のうさぎ(ネットででない)もあるのは免の旧字に対応している。新字体は兎となった。旧字と新字体のうさぎの点は尻尾を表している。
意味 (1)うさぎ(兎)。「脱兎ダットの如く」(逃げ出す兎のように)(2)月の異称。月に兎がすむという伝説から。「玉兎ギョクト」(中国古代の伝説で月にすむウサギ。玉は満月の意。臼と杵で薬草をつく(日本では餅をつく)という。転じて、月のたとえ)「金烏玉兎キンウギョクト」(太陽と月。また、日月のたとえ。金烏は太陽にすむ三本足のカラス。転じて太陽のたとえ)

玉兎(兎の餅つき
うさぎの字三種 現代字は、ノが上に着くので「野(ノ)兎」と覚える。兎を含む字は、旧字のクうさぎ(兔)刀(かたな)うさぎ(冤エンに含まれる)がある。

イメージ 
 「うさぎ」
(兎・逸・冤)
 「形声字」(菟)
音の変化  ト:兎・菟  イツ:逸  エン:冤

うさぎ
 イツ・はしる・それる  辶部

解字 篆文は「辵チャク(すすむ)+兔(クうさぎ)」の会意。はしる・のがれる・かくれる・足がはやい等、兎の動くさまをいう。旧字は「辶+兔」となり、新字体で逸となった。新字体では、兔の丶(点)がない。
意味 (1)はしる(逸る)。のがれる。にがす。「逸機イッキ」(機会をのがす)「後逸コウイツ」(後ろにそらす)(2)かくれる。うしなう。「逸史イッシ」(書きもらされた歴史上の事実)(3)それる(逸れる)。そらす(逸らす)。はずれる。「逸脱イツダツ」「見逸(みそ)れる」(うっかり見落とす)「御見逸(おみそ)れしました」(①気付かなかった。②相手を見直した)(4)足がはやい。抜きんでる。「逸材イツザイ」(5)気楽に楽しむ。「逸楽イツラク」「安逸アンイツ」(6)[国]はやる(逸る)。はぐれる(逸れる)。
 エン  冖部
解字 「冖(おおい)+刀うさぎ」の会意。覆いをかぶせられ外にでることができない兎。動き回ってのがれた兎の「逸イツ」に対して、不幸にしてつかまった兎を「冤エン」という。ウ冠の寃エンは異体字。
意味 (1)ぬれぎぬ。無実の罪をうける。「冤罪エンザイ」「冤獄エンゴク」(無実の罪で牢獄につながれる)「雪冤セツエン」(無実の罪を明らかにしてはらす。雪は、すすぐ・ぬぐう意。=雪辱)(2)うらみ。服従を強いられたうらみ。「讐冤シュウエン」(うらみをはらす)「冤家エンカ」(かたきの家)
覚え方 ワ(ナ(わな)にはまった刀うさぎエンザイ。なお、スマホでは「クうさぎ」で表示されている。

形声字
 ト  艸部
解字 「艸(くさ)+兔(ト)」の形声。トという名のつる草の一種である「菟糸トシ」に用いられる。

菟糸トシ(中国ネットから)
意味 (1)「菟糸トシ」は、ねなしかずら。寄生するつる草で、種子は「菟糸子トシシ」という。「菟糸燕麦トシエンバク」(菟糸は糸がついていても織ることができず、燕麦は麦がついていても食べることができない。有名無実の例え。燕麦は主に馬の飼料だった)(2)「菟糸子トシシ」(菟糸トシの成熟した種子を乾燥した漢方薬。用途は強精や強壮薬で、茯菟丸ブクトガンという漢方に配合されている)(3)兔に通じうさぎ。菟[=兎](4)「於菟オト」(虎。楚の方言)「木菟ずく」とはミミズクの古名。古くは「ツク」。フクロウ科の鳥のうち、頭に耳のような羽毛をもつものの総称。 
<紫色は常用漢字>


参考音符
 ザン <ずるくはしこいウサギ>



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