漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「盍コウ」<おおう> と 「闔コウ」「瞌コウ」「溘コウ」「蓋ガイ」

2024年12月13日 | 漢字の音符
 増訂しました。
 コウ・なんぞ  皿部 hé

解字 篆文は、もの(一印)が入っている皿(うつわ)に大の字型のふたをした形。現代字は「去+皿」の形に変化している。去キョは去る意味でなく皿をおおうフタの象形といえる。おおう・ふたをする意味を表わす。しかし、おおう・ふたの意味は草かんむりをつけた蓋ガイが受け持つので、疑問詞・反語に用いる。
意味 (1)おおう。ふたをする。(=蓋)(2)疑問詞・反語に用いる。なんぞ(盍ぞ)。なんぞ(盍ぞ)~ざる。「盍ガイシュツジュウ」「盍(なん)ぞ出(いで)て従(したが)わ不(ざ)る乎(か)」(どうして出て行って従わないのか)

イメージ 
 「おおう」
(盍・蓋・闔・瞌・溘)
音の変化  コウ:盍・闔・瞌・溘  ガイ:蓋

おおう
 ガイ・コウ・ふた・おおう・けだし  艸部 gài・gě・hé・hài
解字 「艸(くさ)+盍(おおう)」の会意形声。草などを編んで作ったおおいをいう。盍コウが「なんぞ」の意味に使われたので、ふた・おおう意として用いる。
覚え方 くさ()を、さ()り、さら()のうえに(ふた)をする。
意味 (1)おおう(蓋う)。かぶせる。「頭蓋骨ズガイコツ」「蓋世ガイセイ」(世の中をおおいつくす)(2)ふた(蓋)。「火蓋ひぶた」(火縄銃の火口をおおう蓋)「火蓋を切る」(戦闘行動を開始する)(3)かさ。笠。「天蓋テンガイ」(①仏像などの上にかざす笠状の装飾、②虚無僧の用いる藺草製の深編笠)(4)(助字の用法)けだし(蓋し)。たぶん。思うに。「蓋然性ガイゼンセイ」(何かが起こる確実性の度合い)
原義(草を編んだおおい)を残す虚無僧笠の「天蓋」

イグサを編んでつくる虚無僧笠の天蓋(「竹虎・虚無僧笠」より)

仏像などの上に飾る天蓋テンガイ(「仏壇店のHP」から)
 コウ・とびら・とじる  門部 hé
解字 「門(もん)+盍(おおう)」の会意形声。門をおおうとびらを云う。

コウ(阖)は門をおおう左右の闔(とびら)(中国ネットから。上の字は開、下の字は枢)
意味 とびら()。門のとびら。とじる(じる)。「コウモン」(門をとじる)「コウキョウ」(国境をとじた内側。全国)「闔郡コウグン」(郡内全部)「コウユウ」(村内の全部。村じゅう)「開カイコウ」(=開閉)
 コウ  目部 kē
解字 「目(め)+盍(おおう)」の会意形声。目をまぶたがおおうこと。
意味 眠気がする。居眠りする。「瞌然コウゼン」(眠そうな様子)「瞌睡コウスイ」(居眠りする)
 コウ・たちまち  氵部 kè
解字 「氵(みず)+盍(おおう)」の会意形声。水があふれて、にわかに辺りをおおうこと。たちまち・にわかにの意を表す。
意味 (1)たちまち(溘ち)。にわか(溘か)。「溘死コウシ」(にわかに死ぬ)「溘然コウゼン」(にわかなさま)「溘焉コウエン」(にわかなさま)(2)水の流れるさまの形容。「溘溘コウコウ」(水がにわかに流れるさま)
<紫色は常用漢字>

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