爰 エン・オン 爪部 yuán
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解字 甲骨文は一本の綱(または棒)を上と下から手で引いている形。甲骨文字では「たすける」意味になっている。これは上の手が下の手を引き上げる形となり援エンの原字。金文は両方の綱のあいだにVを横にした形が入り、篆文は両手の間が于の変形になり現在に続く。金文と篆文で上下の両手のあいだに入った「横のV」や、「于の変形」は何を意味するのか? 私は間をおく記号だと思う。つまり上の手と下の手の間に空間があるが、綱で間接的につながっている形だと思う。転じて、ゆるい・ゆるやかの意となる。
爰の意味は、甲骨文字が示す「ひく」意。および、ゆるい・ゆるやかの意。また、本来の形とは関係のない指示詞の「ここに」「そこで」などとして用いられる。新字体の音符になるとき、爰の上部の爫⇒「ノ+ツ」の形になる。
意味 (1)ひく。たすける(甲骨文)=援。 (2)ゆるい。ゆるやか。(=緩)「爰爰エンエン」(ゆったりと、ゆとりのあるさま) (3)ここに(爰に)。そこで。「爰許ここもと」(①ここ。このあたり。②自分をへりくだる言い方)
イメージ
「引く」(爰・援・猨)
「間をおく」(緩・媛・瑗)
「同音代替」(暖・煖)
音の変化 エン:爰・援・媛・猨・瑗 カン:緩 ダン:暖・煖
引く
援 エン・たすける 扌部 yuán
解字 「扌(手)+爰(ひく)」の会意形声。相手を手でひきよせて助けること。
意味 (1)たすける(援ける)。「援助エンジョ」「援護エンゴ」 (2)ひく。「援用エンヨウ」(自分の説の援けとして他の文献などを引用する)
猨 エン・さる 犭部 yuán
解字 「犭(けもの)+爰(ひく)」の会意形声。木の上で枝をひき実などを食べるサル。
意味 さる(猨)。同音の猿の正字。漢・魏の頃まで使われ、唐・宋、以後は猿を使う。現在は猿の異体字になっている。
間をおく
緩 カン・ゆるい・ゆるやか・ゆるむ 糸部 huǎn
解字 「糸(ひも・ころも)+爰(間をおく)」の会意形声。糸を紐(ひも)と解釈すると、紐をきつく縛るのでなく、ゆるやかに縛る意となり、糸を衣とすると、衣服がゆったりとした意となる。転じて、動作や状況が、ゆるやか・ゆるい意ともなる。
意味 (1)ゆるい(緩い)。ゆるやか(緩やか)。ゆるめる。「緩和カンワ」「緩衝カンショウ」(衝突を和らげる)「緩急カンキュウ」(ゆるやかなことと、急なこと)「緩刑カンケイ」(刑を軽くする) (2)ゆったりしている。「緩服カンフク」(ゆったりした服。平服) (3)ゆっくり。おそい。「緩慢カンマン」(動作がおそい。手ぬるい)「緩行カンコウ」(ゆっくり歩く)
媛 エン・ひめ 女部 yuàn・yuán
解字 「女(おんな)+爰(=緩。ゆったりしている)」の会意形声。ゆったりとした衣装の、しとやかな女性。
意味 うつくしい女性。たおやかな女性。ひめ(媛)。「才媛サイエン」「名媛メイエン」「媛女エンジョ」 (2)地名。「愛媛県えひめケン」(四国の県)
瑗 エン 王部 yuàn
玉瑗
解字 「王(玉)+爰(間をおく)」の会意形声。中央にまるい穴のある輪の形をした玉。中央に大きな穴のある言われについては次のような説がある。君主が階段を登るとき臣下が直接手を引くのは畏れ多いので、君主と臣下がこの玉を手に持ち(間をおく)、臣下が引き上げ、君主が引き揚げてもらう。瑗エンを用いて引く形の玉が元になっているとされる。[説文解字]は「大孔璧。人君上除陛以相引。从玉爰聲」とする。
意味 璧ヘキ(中央に穴のある円板状の玉)の一種。中央に大きな穴のある平らな輪のかたちの玉。
形声字
暖 ダン・あたたか・あたたかい・あたたまる・あたためる 日部 nuǎn
解字 「日(日光)+爰(ダン)」の形声。ダンは煗ダン(あたたかい)に通じ、日の光であたたかいこと。煗ダンは、「火+耎ゼン(やわらかい・よわい)」の会意で、よわい火⇒あたたかい意。
意味 あたたかい(暖かい)。あたたまる(暖まる)。「暖房ダンボウ」「暖流ダンリュウ」「暖簾のれん」(店の軒先に垂らす日よけや仕切りの布。もと、冬の隙間風を防ぐ垂れ布。)
煖 ダン・ナン・あたたかい・あたためる 火部 xuān・nuǎn
解字 「火(ひ)+爰(=暖。あたたかい)」の会意形声。火の熱であたたかい意。常用漢字でないため、暖に書き換えることが多い。
意味 あたたかい(煖かい)。あたためる(煖める)。「煖房ダンボウ」(=暖房)「煖炉ダンロ」(=暖炉)
湲 エン・カン 氵部 yuán
解字 「氵(水)+爰(エン・カン)」の形声。水のゆるやかに流れるようすを湲エン・カンという。[説文解字]は「潺湲センカン。水の聲(声・おと)。水に従い爰聲(声)」とする。潺湲センカンは意味(1)を参照。
意味 (1)水がゆるやかにめぐる。「湲湲エンエン」(さらさらと水の流れるさま)「潺湲センカン」(水の流れる様子、またはせせらぎの音)「潺湲亭センカンテイ」(谷崎純一郎が書斎として使用していた建物の名)
<紫色は常用漢字>
お知らせ
主要な漢字をすべて音符順にならべた、『音符順 精選漢字学習字典 ネット連動版』石沢書店(2020年)発売中です。
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解字 甲骨文は一本の綱(または棒)を上と下から手で引いている形。甲骨文字では「たすける」意味になっている。これは上の手が下の手を引き上げる形となり援エンの原字。金文は両方の綱のあいだにVを横にした形が入り、篆文は両手の間が于の変形になり現在に続く。金文と篆文で上下の両手のあいだに入った「横のV」や、「于の変形」は何を意味するのか? 私は間をおく記号だと思う。つまり上の手と下の手の間に空間があるが、綱で間接的につながっている形だと思う。転じて、ゆるい・ゆるやかの意となる。
爰の意味は、甲骨文字が示す「ひく」意。および、ゆるい・ゆるやかの意。また、本来の形とは関係のない指示詞の「ここに」「そこで」などとして用いられる。新字体の音符になるとき、爰の上部の爫⇒「ノ+ツ」の形になる。
意味 (1)ひく。たすける(甲骨文)=援。 (2)ゆるい。ゆるやか。(=緩)「爰爰エンエン」(ゆったりと、ゆとりのあるさま) (3)ここに(爰に)。そこで。「爰許ここもと」(①ここ。このあたり。②自分をへりくだる言い方)
イメージ
「引く」(爰・援・猨)
「間をおく」(緩・媛・瑗)
「同音代替」(暖・煖)
音の変化 エン:爰・援・媛・猨・瑗 カン:緩 ダン:暖・煖
引く
援 エン・たすける 扌部 yuán
解字 「扌(手)+爰(ひく)」の会意形声。相手を手でひきよせて助けること。
意味 (1)たすける(援ける)。「援助エンジョ」「援護エンゴ」 (2)ひく。「援用エンヨウ」(自分の説の援けとして他の文献などを引用する)
猨 エン・さる 犭部 yuán
解字 「犭(けもの)+爰(ひく)」の会意形声。木の上で枝をひき実などを食べるサル。
意味 さる(猨)。同音の猿の正字。漢・魏の頃まで使われ、唐・宋、以後は猿を使う。現在は猿の異体字になっている。
間をおく
緩 カン・ゆるい・ゆるやか・ゆるむ 糸部 huǎn
解字 「糸(ひも・ころも)+爰(間をおく)」の会意形声。糸を紐(ひも)と解釈すると、紐をきつく縛るのでなく、ゆるやかに縛る意となり、糸を衣とすると、衣服がゆったりとした意となる。転じて、動作や状況が、ゆるやか・ゆるい意ともなる。
意味 (1)ゆるい(緩い)。ゆるやか(緩やか)。ゆるめる。「緩和カンワ」「緩衝カンショウ」(衝突を和らげる)「緩急カンキュウ」(ゆるやかなことと、急なこと)「緩刑カンケイ」(刑を軽くする) (2)ゆったりしている。「緩服カンフク」(ゆったりした服。平服) (3)ゆっくり。おそい。「緩慢カンマン」(動作がおそい。手ぬるい)「緩行カンコウ」(ゆっくり歩く)
媛 エン・ひめ 女部 yuàn・yuán
解字 「女(おんな)+爰(=緩。ゆったりしている)」の会意形声。ゆったりとした衣装の、しとやかな女性。
意味 うつくしい女性。たおやかな女性。ひめ(媛)。「才媛サイエン」「名媛メイエン」「媛女エンジョ」 (2)地名。「愛媛県えひめケン」(四国の県)
瑗 エン 王部 yuàn
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解字 「王(玉)+爰(間をおく)」の会意形声。中央にまるい穴のある輪の形をした玉。中央に大きな穴のある言われについては次のような説がある。君主が階段を登るとき臣下が直接手を引くのは畏れ多いので、君主と臣下がこの玉を手に持ち(間をおく)、臣下が引き上げ、君主が引き揚げてもらう。瑗エンを用いて引く形の玉が元になっているとされる。[説文解字]は「大孔璧。人君上除陛以相引。从玉爰聲」とする。
意味 璧ヘキ(中央に穴のある円板状の玉)の一種。中央に大きな穴のある平らな輪のかたちの玉。
形声字
暖 ダン・あたたか・あたたかい・あたたまる・あたためる 日部 nuǎn
解字 「日(日光)+爰(ダン)」の形声。ダンは煗ダン(あたたかい)に通じ、日の光であたたかいこと。煗ダンは、「火+耎ゼン(やわらかい・よわい)」の会意で、よわい火⇒あたたかい意。
意味 あたたかい(暖かい)。あたたまる(暖まる)。「暖房ダンボウ」「暖流ダンリュウ」「暖簾のれん」(店の軒先に垂らす日よけや仕切りの布。もと、冬の隙間風を防ぐ垂れ布。)
煖 ダン・ナン・あたたかい・あたためる 火部 xuān・nuǎn
解字 「火(ひ)+爰(=暖。あたたかい)」の会意形声。火の熱であたたかい意。常用漢字でないため、暖に書き換えることが多い。
意味 あたたかい(煖かい)。あたためる(煖める)。「煖房ダンボウ」(=暖房)「煖炉ダンロ」(=暖炉)
湲 エン・カン 氵部 yuán
解字 「氵(水)+爰(エン・カン)」の形声。水のゆるやかに流れるようすを湲エン・カンという。[説文解字]は「潺湲センカン。水の聲(声・おと)。水に従い爰聲(声)」とする。潺湲センカンは意味(1)を参照。
意味 (1)水がゆるやかにめぐる。「湲湲エンエン」(さらさらと水の流れるさま)「潺湲センカン」(水の流れる様子、またはせせらぎの音)「潺湲亭センカンテイ」(谷崎純一郎が書斎として使用していた建物の名)
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