漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「臼キュウ」<うす> と 「旧キュウ」「舅キュウ」

2020年05月23日 | 漢字の音符
 キュウ・うす  臼部             
 けやき臼

解字 中に穀物をいれて搗く器である臼うすの字が単独で使われるのは篆文から。金文は舂ショウ(杵で臼をつく形)から臼の部分を抜き出した。この臼はくぼんだ容器に二本の線が突き出た形をしている(なお、甲骨文の臼は凵カンで表される)。篆文は突起が左右二本になり上の口も丸みを持たせた。隷書レイショ(漢代)は全体に角張り、突起も左右に一本となった。現代字は最初の画がノに変化した臼。
 ところで臼は落とし穴の形としても使われた。陥[陷]カン(おちいる)の原字である臽カンは、上の人が下の落とし穴に落ちる形である。この場合、突き出た突起は落とし穴の底に打ち込んだ尖ったクイと思われる。
意味 (1)うす(臼)。うすつく。「石臼いしうす」「茶臼ちゃうす」「唐臼からうす」(臼を半分土に埋め、固定した横杵を足で踏んで搗く臼。踏み臼) (2)うすの形をしたもの。「臼歯キュウシ」(表面がくぼんだような形の奥歯)「臼砲キュウホウ」(砲身が短く臼の形をした大砲。射角が大きく城攻めなどに用いた)
参考 キュウは、部首「臼うす」になる。常用漢字は臼1字のみだが、便宜的に臼部に属する字として、興コウ・臿ソウ(さしこむ)がある(左右にある𦥑キョク(両手)が臼キュウと似ていることから)。常用漢字以外では、舀ヨウ(臼から手で米をとりだす)・舂ショウ(杵で臼をつく)・臽カン(人が穴におちる)があるが、これらはすべて音符となる。舅キュウは、男が部首にないため臼が便宜的に部首となる。

イメージ 
 「うす」
(臼・旧) 
 「キュウの音」(舅)
音の変化  キュウ:臼・旧・舅

うす(落とし穴)
[舊] キュウ・ふるい  日部
 
舊はワナにかかったフクロウ
解字 金文から旧字まで舊キュウで「雈カン(フクロウなどの耳状羽毛のある鳥)+臼キュウ(落とし穴)」の会意形声。臼キュウは陥[陷]カン(おちいる)の臽カンでは、人が落とし穴におちる形で、ここでは落とし穴の意で使われている。舊キュウは、鳥がワナにかかった形であろう。この鳥は囮(おとり)にする鳥らしい。舊キュウが囮(おとり)の鳥という説は[字統]が古書「淮南万畢術わいなんまんひつじゅつ」(西漢淮南王・刘安(BC179年—BC122年)の著書)を引用して紹介している。それによると「鴟鵂(=舊)シキュウ(ミミズク・頭部に耳状の羽毛をもつフクロウ)を取り、其の大羽を折り、その両足を絆(つな)ぎ、以って媒(おとり)と為し、羅(あみ)を其の傍らに張れば則ち鳥聚(あつま)る」としている。
フクロウを囮(おとり)にして何をつかまえた?
 囮の舊はフクロウである。フクロウは梟キョウとも書き、鳥を木にさらした形。農民がフクロウの死骸を木にさらして穀物を食べる小鳥を追い払う形である。フクロウを囮にしたら近寄ってくる鳥はフクロウの仲間しかいない。この囮を利用して近づいた新しいフクロウをかすみ網(羅)などで捕まえた。したがって囮の鳥は、新しい鳥に対し、もとの・ふるい意となる。金文から舊友キュウユウ(旧友)という使用例がある。新字体は、舊の臼を抜き出し臼⇒旧とした。
フクロウを捕まえてどうした?
 囮を用いてフクロウを捕まえ、何に使ったのだろうか。ペット(愛玩動物)にしたのだろうか。中国のウィキペディアである百度百科をみると、ペットとは逆にフクロウは縁起の悪い鳥とされていた。その鳴き声が恐れられ、フクロウが鳴くと病人が死ぬという迷信があったという。一方、フクロウは漢方薬として使われた。喘息ゼンソクや眼疾、瘧(おこり)の治療に効果のある薬剤とされ値段が高かったという。また料理店ではフクロウのスープを出すところもあったという。おそらく囮で捕まえたフクロウは漢方薬として使われたのであろう。
意味 (1)ふるい(旧い)。もとの。「新旧シンキュウ」「旧暦キュウレキ」 (2)もと。むかし。過去。「懐旧カイキュウ」「復旧フッキュウ」 (3)古いなじみ。「旧友キュウユウ

キュウの音
 キュウ・しゅうと  臼部
解字 「男(おとこ)+臼(キュウ)」の形声。キュウは久キュウ(ひさしい・長い時間)に通じ、年上の男の意。夫または妻の父、また、母の男兄弟に当てる。この字は臼キュウが音符なので部首は男となるはずであるが、男は部首字でないので音符の臼が部首を兼ねている。
意味 (1)しゅうと(舅)。夫または妻の父。「外舅ガイキュウ」(妻の父。文語の表現) (2)おじ。母の男兄弟。
<紫色は常用漢字>

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