漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「皐月さつき」の「皐コウ」<ぬま・さわ>

2015年03月17日 | 漢字の音符
皐[皋] コウ  白部

解字 篆文は皋コウで、字の成り立ちは不明。一説に、「白(しろく光る)+大(おおきい)+十(多い)」からなり、太陽の光をうけて多くの沼が白く輝く大きな地の意で、沼沢や、水ぎわを表すという。皐コウは異体字で、皋の大⇒「二二」に変化した形。日本ではこの字が使われる。「皐月さつき」(陰暦5月)の意は、新暦の5月と異なり、旧暦5月は梅雨の季節なので沼沢を表す皐コウが使われたと思われる。なお、皐月にはサツキツツジの意もあるが、これは他のツツジに比べ1か月程度遅い、旧暦5月 (皐月)の頃に花が一斉に咲き揃うところからその名が付いた。
意味 (1)さわ(沢)。沼沢。水ぎわ。きし。「皐壌コウジョウ」(河や沼地)「江皐コウコウ」(川と、さわ。川べりの地) (2)水辺の高地。おか。高い地。「皐如コウジョ」(高いさま)(3)五月の別名。「皐月さつき・コウゲツ」(①陰暦5月の別名。②サツキツツジの略)
覚え方 しろににじゅう(白二二十)でコウ 

イメージ
 「ぬま・さわ」
(皐)
 「形声字」(槹)
音の変化 コウ:皐・槹

同音代替 
 コウ  木部
解字 「木(き)+皐(コウ)」の形声。コウは抗コウ(さからう・はりあう)に通じる。槹コウとは、張り合う木の意味で、「拮抗キッコウ」(勢力・力がほぼ等しいさま)の意味をしめす「桔槹キッコウ」(はねつるべ)に使われる。

撥ね釣瓶(桔槹)(「日本国語大辞典(和泉名所図会)」
意味 「桔槹キッコウ」とは、棒の一方の片端から縄で釣瓶(つるべ)を下げ、他端に石を巻きつけた、撥(は)ね釣瓶のこと。井戸の横の支柱に、木の棒を釣瓶と石が拮抗(力が等しい)する位置に取り付けた水汲み装置。井戸に釣瓶を下して水を入れてから、釣瓶をはねあげ、テコの原理で水をくむ。釣瓶を引き上げる距離は長いが、要する力は少なくてすむ。

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音符「冄ゼン」<柔らかいものが両側に垂れる>と「髯ゼン」「苒ゼン」

2015年03月17日 | 漢字の音符
冄[冉] ゼン  冂部

解字 柔らかいものが両側に垂れているさま。冉ゼンは異体字で、冄ゼンが音符となるとき、よく使われる。
意味 (1)しなやかで、やわらかいさま。(2)ゆっくり。徐々に。おだやか。(3)姓。

イメージ
 「やわらかいものが両側にたれる」
(髯・苒)
音の変化 ゼン:髯・苒

やわらかいものが両側にたれる
 ゼン・ほおひげ  髟部
解字 「髟(ながい毛)+冉(やわらかいものが両側にたれる)」の会意形声。顔の両側にたれたように生える頬のひげ。
意味 ひげ(髯)。ほおひげ。「頬髯ほおひげ」「紅髯コウゼン」(①紅いほおひげ。西洋人のひげ。また、西洋人。②エビの異称)「紫髯緑眼シゼンリョクガン」(赤みがかったほおひげと青い目。西洋人のこと)「鬚髯シュゼン」(あごひげと、ほおひげ)
 ゼン  艸部
解字 「艸(草)+冉(柔らかいものが垂れる)」の会意形声。草がしげってのび、垂れ下がるさま。
意味 (1)草がしげるさま。「苒苒ゼンゼン」(2)のびのびになる。「荏苒ジンゼン」(荏も苒も、のびのびになる意。なすことのないまま歳月が過ぎるさま。また、物事が延び延びになるさま)「荏苒として今日に至る」


<参考 冄ゼンが含まれる音符>

    ナ <花の美しく咲く里・地名>
 ナ・ダ 阝部  

解字 「冄ゼン+阝(=邑:まち)」の会意。冄ゼンは、毛状のやわらかなものや、花の咲いたしなやかな枝などが、たくさん垂れたさまをいう。これに阝(まち)がついた那は、中国・陝西の地名を表わすが、また、冄ゼンの意味である、美しくしなやかのイメージがある。仮借カシャ(当て字)され、疑問の助字や指示詞などに使われる。
意味 (1)なんぞ・いかんぞ (2)あれ・どこ・どれ「那辺ナヘン」(いずこ・どこ) (3)梵語の音訳に用いる。「旦那ダンナ」(仏家が財物を布施する信者を呼ぶ語。転じて、主人、得意客など)「刹那セツナ」(極めて短い時間)(4)地名「伊那 いな」(長野県の地名)「那智なち」(和歌山県の地名。那智の滝・那智大社がある)「那智黒なちぐろ」(那智地方に産した黒色の石。碁石・硯石などに用いる)
イメージ 
 「地名・仮借ほか」
(那)
 「美しくしなやか」(娜)
 「ダの音」(梛)
音の変化  ナ:那  ダ:娜・梛
音符「那ナ」を参照。

    スイ <みのに似た粗末な喪服>
 スイ・サイ・おとろえる  衣部
 
解字 篆文は「衣(ころも)+冄ゼン(毛状のものが垂れる形)」の会意。冄ゼンは、毛のようなものが垂れる形で、ここではシュロなどの毛状の繊維をさし、これに衣のついた「衣+冄ゼン」は、シュロなどで出来た雨具のミノをいう。蓑(みの)の原字。中国では葬式のとき親族は粗末な麻布を用いて、縁(へり)を縫わない喪服を作って着た。これが、へりがふさふさしているミノに似ていることから、衰サイと呼ばれ喪服の意味となった。のち、簡略化され白装束の胸の前に麻布を着けるだけのことが多い。葬礼や服喪の間すべて平生の礼を控えるので、へらす・衰える意となる。現代字は、冄ゼン⇒日の両側が突き出た形に変化した「衰」になった。
意味 (1)おとろえる(衰える)。「衰退スイタイ」「衰弱スイジャク」「衰微スイビ」 (2)葬衣。喪服。
イメージ 
 「みの・喪服」
(衰・蓑)
音の変化  スイ:衰  サ:蓑
音符「衰スイ」を参照。

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音符「尤ユウ」<あやまって指を切る> と 「肬ユウ」「疣ユウ」

2015年03月15日 | 漢字の音符
 ユウ・とが・とがめる・もっとも   尢部おうにょう 


[出典]李学勤主编;赵平安副主编·字源[M]:天津古籍出版社;辽宁人民出版社,2013.07
解字 甲骨文・金文は、又(て)の一端に、一線を引いて指が切れて傷を負うこと。とが・災いの意。篆文から形が変わり、現代字は犬に似た形の尤ユウになったが、犬との関連はない。また、優ユウ(すぐれる)に通じ、すぐれる意となる。
意味 (1)とが(尤)。あやまち。災い。失敗。「尤悔ユウカイ」(あやまちと後悔)「尤隙ユウゲキ」(あやまちで生じた隙間。仲たがい) (2)とがめる(尤める)。失敗を責める。「尤人ユウジン」(人をとがめる) (3)めだってすぐれる。「尤物ユウブツ」(すぐれたもの)「尤最ユウサイ」(もっともすぐれる) (4)もっとも(尤)。①道理にかなう。②そうではあるが。

イメージ 「わざわい」(尤・肬・疣)
音の変化  ユウ:尤・肬・疣

わざわい
 ユウ・いぼ  月部にく
解字 「月(からだ)+尤(わざわい)」の会意形声。身体の表面に生じた災いの意で、皮膚にできるイボをいう。
意味 いぼ(肬)。(=疣)。皮膚にできる固い小さな突起物。物の表面の突起。「肬贅ユウゼイ」(いぼとこぶ)「肬蛙いぼがえる」(身体の表面に肬のような突起が多数ある蛙)
 ユウ・いぼ  疒部
解字 「疒(症状)+尤(わざわい)」の会意形声。身体の表面に生じる、ちょっとした災いの症状。
意味 いぼ(疣)。(=肬)。皮膚にできる固い小さな突起物。「疣贅ユウゼイ」(いぼとこぶ)

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音符 「函カン」 <はこ> と 「涵カン」

2015年03月15日 | 漢字の音符
 カン・はこ  凵部

解字 甲骨文および金文は、矢が入っている矢筒のかたち。篆文から字形が変わり、現代字はさらに変化した函となった。意味は矢を収納することから、各種のはこ・いれる意。のち、よろいを収納する箱にもなったことから、よろいの意もある。
意味 (1)矢筒。「矢函シカン」 (2)はこ(函)。各種の収納箱。物を入れる蓋付きの容器。「剣函ケンカン」(剣をいれる箱)「函使カンシ」(手紙を入れた函を届ける使い)「函封カンプウ」(函に入れて封をする) (3)いれる。「函丈カンジョウ」(一丈の間を入れる。師と弟子の間に一丈の余地をおいて座る意。師への書状の宛名に添える語) (4)よろい。「函人カンジン」(よろいを作る職人) (5)地名。「函館はこだて」(北海道南端の港湾都市)「函谷関カンコクカン」(中国河南省北西部の交通の隘路。戦略上、重要な地であった)

イメージ 「はこ」(函・涵)
音の変化  カン:函・涵

はこ
 カン・うるおす・ひたす  氵部
解字 「氵(みず)+函(はこ)」の会意形成。はこに水をいれる意で、水でうるおす・ひたす意となる。
意味 うるおす(涵す)。ひたす(涵す)。「涵養カンヨウ」(自然に水がしみこむように養い育てること)「涵育カンイク」(うるおし育てる)「涵碧カンペキ」(水面や空の青々としたさま)

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音符「韭キュウ」<にら> と「蒜サン」<ひる>

2015年03月12日 | 漢字の音符
 キュウ・にら  韭部 jiǔ

解字 ニラの生えそろった形の象形。韮キュウの原字。ニラは枝分かれせず株から分立するので、この象形は少し違和感がある。中心から茎となる葉が分立するさまと考えたい。

ニラ(韭)(「みなとの野菜大辞典・ニラ」より)
意味 にら(韭)。ユリ科ネギ属の多年草。
参考 キュウは、部首「韭にら」になる。漢字の下部に付いてニラの意味を表す。この部首は非常に少なく主な字は、センしかない。センは音符となる。

イメージ 
 「にら」
(韭・韮・薤)
音の変化  キュウ:韭・韮  カイ:薤

にら
 キュウ・にら  艸部 jiǔ
解字 「艸(くさ)+韭(にら)」の会意形成。韭(にら)の意味を、艸をつけてはっきりさせた字。
意味 (1)にら(韮)。ユリ科ネギ属の多年草。葉は扁平で全体に強い臭気がある。日本各地で食用とされる。夏に紫色をおびた白い小花をつける。(2)地名。「韮山にらやま」(静岡県東部の伊豆半島に位置する町であったが、2005年に合併し伊豆の国市の一部になった)
 カイ・おおにら・らっきょう  艸部 
解字 「歹ガツ(残った骨)+韮(にら)」の会意。歹ガツは残骨で、動物の腐って残った形を示す。そこに草木を植えると腐蝕した屍骸を肥料として、よく育つ意味になる。薤カイは、よく育ったニラ。オオニラをいう。
 ラッキョウ
意味 (1)おおにら(薤)。らっきょう(薤)。ユリ科ネギ属の多年草。葉は細く秋に花茎をだし、その先に球状に集まった小花をつける。地下の鱗茎は漬けて食用とする。辣韭ラッキョウ・辣韮ラッキョウとも書く。「薤漬らっきょうづけ」「薤露カイロ」(葬送のときの挽歌の曲名。オオニラの上に降りた朝露の意で、人生のはかないことのたとえを述べたもので王侯貴族の葬式に歌った)「薤露蒿里カイロコウリ」(ともに挽歌の曲名で、人生のはかないことをいう)「薤白」

<参考 韭が含まれる音符>
 セン  韭部にら

解字 韭キョウはニラ。「人人(たくさんの人)+戈(ほこ)」は、戈で人をたくさん切る意。韱はニラのように細く切ること。
イメージ
 「ほそい」
(繊・籤) 
 「人人+戈」の意味である「たくさんの人を切る」(殲・懺)
音の変化  セン:繊・籤・殲  ザン:懺
音符「韱セン」 を参照。

    サン <算木>
 サン  示部

解字 横線二本とタテ線三本を描いた示と似た字を二組描いて、合計10本の算木を表した字。算木で数える・計算する意。算サンの古字。単独では使われない。
意味 かぞえる。計算する。(=算)

イメージ 「算木」(蒜)
音の変化  サン:蒜

算木
 サン・ひる  艸部
解字 「艸(くさ)+祘(算木)」の会意形声。算木のようにまとまって真っ直ぐ生える草。ネギ・ニンニク・ノビルなど、食用となるユリ科の多年草の総称。
 ノビル

②ニンニク
意味 ひる(蒜)。ネギ・ニンニク・ノビルなどの総称。①ノビル。「野蒜のびる」。ユリ科の多年草。広く山野に自生し、春に細く長い葉が林立して伸びる。葉および鱗茎を食用にする。夏に紫色を帯びた白い花をつける。「小蒜こびる」(野蒜の別称) ②ニンニク。「大蒜にんにく」。ユリ科の多年草。ネギ・ニラなどと同属。西アジア原産といわれ「葫」とも書く。強い臭気があり鱗茎は数個の小球から成り、食用・薬用となる。  

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音符「盈エイ」<みちる>

2015年03月11日 | 漢字の音符
 エイ・みちる  皿部

解字 甲骨文は、たらい(皿)の中に人が入っている形。中の点は水で、人の下部に足が描かれている。金文で水がとれ足の上に一が入ったが膝を曲げる意か。篆文は、「人のかたち+足+皿」に変化した。この字は、水浴でなく、人がたらいの中で膝を曲げたとき、水が器に満ち溢れる意で用いられる。現代字は、「乃(ひと)+又(て)+皿」の盈エイとなった。本来なら足は「夊スイ」であるが、画数が少ない又で代用したものと思われる。※盈の甲骨文字・金文の出典は、「象形字典」http://vividict.com/WordInfo.aspx?id=3941
お知らせ 盈の甲骨文字・金文の出典は上記の「象形字典」ですが、現在はネット上に存在していません。他の字典では篆文からの書体が掲載されています。なお、金文の書体は、[字統]では「石鼓文」(戦国時代)として掲載され、[字源(中国)]では、ほぼ同じ書体が「春秋[戦国編]」として掲載されています。甲骨文は他の図書での記載はありませんので、別の字体を取り違えた可能性があります。甲骨文字は以上の点をご留意ください。
意味 (1)みちる(盈ちる)。みたす。あふれる。「盈盈エイエイ」(水が満ちるさま。また、女性の姿の美しい様子)「盈月エイゲツ」(満月)「盈満エイマン」(①いっぱいになること。②冨や権力がきわめて大きいこと)「欠盈ケツエイ」(欠ける事と、みちること) (2)あまる。「盈余エイヨ」(余剰)

イメージ 「みちる」 (盈・楹)
音の変化  エイ:盈・楹 
 
みちる
 エイ・はしら  木部
解字 「木(はしら)+盈(みちる)」の会意形声。太さが十分にある丸い柱をいう。
意味 (1)はしら(楹)。まるく太いはしら。母屋の正面にある柱。「楹棟エイトウ」(①柱と棟木。②国の重臣)「楹書エイショ」(遺言書。斉の宰相が柱に穴をあけ遺言をしまい子に残した故事から)(2)家屋の並びを数える語。

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音符「巸イ」<赤子が乳をのむ> と「頤イ」「姫キ」「熙キ」

2015年03月09日 | 漢字の音符
 イ・キ  己部

解字 金文は「巳(赤子)+乳房」の会意形声。篆文は、乳房が一つになった形(𦣝)に巳がついた巸イ・キになった。婦人が赤子に授乳している形で、赤子が乳を飲んで、よろこぶ・おだやかの意。また、赤子に乳を飲ませて養育する意。単独で用いられることなく、養育する意は頤、よろこぶ・おだやかの意は熙で代用する。
意味 (1)養育する。育てる。(2)よろこぶ。おだやか。

イメージ 
 「赤子が乳をのむ」
(巸・頤・姫)
 「形声字」(熙)
音の変化 イ:巸・頤  キ:熙・姫

赤子が乳をのむ
 イ・おとがい・あご 頁部

解字 金文は乳房だけを描いた形。イの発音は、巸(赤子が乳をのむ)に通じ、子を養育する意でも使う。篆文で「乳房ひとつ+頁(かお)」になったが、乳房ひとつを、顔のあごが突き出た形と間違え頁(かお)を付けて、あご・おとがいの意とした。したがって、この字は、おとがいと、子を養育する意の二つがある。
意味 (1)おとがい(頤)。あご(頤)。「頤使イシ」(人をあごで使うこと)「朶頤ダイ」(朶は、たれる意、頤はあご。①あごを垂れる意で、あごを動かして物をたべる・食欲の盛んなこと。②転じて、強国が弱国を飲み込もうとすること) (2)養う。育てる。「頤身イシン」(身体を養生する)「頤志イシ」(志を養う)「頤養イヨウ」(育て養う) (3)「頤和園イワエン」とは、北京市西郊にある大庭園。「和やかに静養するための園(その)」の意。もと「清漪園セイイエン」(清らかな漪さざなみの園)といったが、第二次アヘン戦争で焼き討ちに遭っていたのを、その跡地に西太后が造営し、此処に隠居するつもりで名を頤和園と改めた。
 キ・ひめ  女部

解字 金文は「女(おんな)+ふたつの乳房」で、乳房の成熟した女を表す。篆文・旧字は乳房が一つになった「女+𦣝イ⇒キ」(現在形は姬)の形。成人の女の意から転じて君主の側妾や貴婦人の意。新字体は乳房が𦣝⇒臣に変化した姫になった。 
意味 (1)貴人のそばに仕える女性。高貴な女性。「寵姫チョウキ」(お気に入りの侍女)「姫妾キショウ」(中国における遊女もしくは芸妓のこと)(2)[国]ひめ(姫)。女性の美称。「歌姫うたひめ」「舞姫まいひめ
参考 なお、姫の本来の字である姫シンは、(女が)つつしむ意の別字であるが、ほとんど使われない字だったので、姬の代用字となった。

形声字
熙[煕] キ・・ひろい・やわらぐ・よろこぶ・あきらか  灬部 

解字 金文は巸の形。篆文は「灬(火⇒火の光)+巸(キ)」の形声。キは暉・輝(ひかり・かがやく)に通じ、灬(火⇒火の光)と合わせた煕は、ひかりかがやく意。また、光が遠くまでひろまる・ひろい意となる。現在は、新字体に準じた熙が使われる。また、巸(赤子が乳をのみ、よろこぶ・たのしむ)の意ともなる。
意味 (1)ひかる(煕る)。かがやく。光をはなつ。あきらか。「光熙コウキ」(光熙ともにひかる意。西晋の恵帝の治世に使われた元号) (2)ひろい(煕い)。ひろまる。 (3)よろこぶ。たのしむ。やわらぐ。「熙熙キキ」(楽しげなさま)「熙笑キショウ」(たのしげに笑う)「熙春キシュン」(やわらいだ春) (4)おこる。さかんにする。「熙隆キリュウ」(盛んにする)
<紫色は常用漢字>

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