漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「龠ヤク」<吹き口が複数あるたて笛> と 「籥ヤク」「鑰ヤク」

2015年03月30日 | 漢字の音符
 ヤク・ふえ  龠部

解字 甲骨文は吹き口のある竹二つを紐でくくった形。金文第一字は、「口口(くち二つ)+冊サク(竹を並べて結んだもの)」の会意。吹き口が複数ある竹の管を並べた笛の形。金文第二字は、上にA(あつまる)がつき、吹き口が集まった笛を表す。篆文は、口の数が三つになった龠ヤクとなった。吹き口が三つ、または複数ある竹製の笛。籥ヤクの原字。現物が残っていないので形は不明であるが、竹を丸く集めた笙(しょう)、または一列に並べた「排簫ハイショウ」と思われる。
 龠ヤクは、ふえの意で部首になる。一番画数が多いので漢和辞典の部首索引の最後「17画」にくる。
意味 (1)ふえ(龠)。ふえの一種。あなが三つある笛。(6つのものもある)(2)ふえの総称。
イメージ 
 「ふえ」
(龠・籥)
 「穴がある」(鑰)
音の変化 ヤク:龠・籥・鑰

ふえ
 ヤク・ふえ  竹部
解字 「竹(たけ)+龠(ふえ)」の会意形声。竹製のふえ。
意味 (1)ふえ(籥)。中国の古楽器の一。3または6孔の竹笛。(2)笛に似た、穴の開いた錠前。

穴がある
 ヤク・かぎ  金部
 閂(かんぬき)
解字 「金(金属)+龠(穴がある)」の会意形声。門扉の閂(かんぬき)の横木を差し込む四角い金具(穴がある)が原義。三~四個あり、ここに横木を通して門扉を固定する。のち、扉につけて戸締りとする錠前をいうようになった。鍵かぎを差し込んで開閉する。また、差し込む鍵を指して言うこともある。
意味 かぎ(鑰)。戸につけるかぎ。錠前。「鑰匙ヤクシ」(かぎ。錠前と穴にさす匙(さじ)のような鍵)「鍵鑰ケンヤク」(差し込む鍵と錠前。キーポイントとなるところ)「関鑰カンヤク」(①関はここで、かんぬき(扉の金具を貫いて門をしめる横棒)、鑰は門扉の金具。両者あわせて扉が閉まる。門戸の戸締り。②出入りの要所。枢要)

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音符「夷イ」<えびす>と「姨イ」「痍イ」「洟イ」

2015年03月30日 | 漢字の音符
 イ・えびす  大部 yí  

解字 甲骨文は、矢に紐がまいている形。獲物に矢が当たると、紐が獲物にからみつくように工夫された、「いぐるみ」という紐のついた矢を表す。金文も矢羽の部分が変化しているが同じ形。篆文は後漢の[説文解字]が、「大(大人)+弓(ゆみ)」と解釈し、弓を持つ東方の人とした。いずれも、弓矢をつかう未開の民族を指す。また、弓矢で平定する意がある。
意味 (1)えびす(夷)。東方の未開の異民族。「東夷トウイ」(東方の未開民族)「夷狄イテキ」(東方と北方の未開人。野蛮人。また、外国人をさげすんだ言い方)(2)たいらげる。平定する。たいらか。「夷滅イメツ」(逆らうものを平らげ滅ぼす)(3)[国]えみし。えびす。都(奈良・京都)から見て東方の未開人。「蝦夷えみし・えぞ」(北海道の呼称、蝦夷地。また、古代の奥羽から北海道にかけて住み、大和朝廷に従わなかった人々)。(4)[国]えびす(夷)。七福神の一つ。恵比寿・蛭子・戎とも書く。漁業と商業の神。「夷講えびすコウ」(えびすを祭り祝う行事)

周時代の東夷・西戎・南蛮・北狄(「春秋の五覇とは」より)

イメージ  弓矢を扱う「異民族」、紐をつけた矢から「矢を射る」イメージがある。
  「異民族」(夷・姨)
  「形声字」(痍・洟)
音の変化 イ:夷・姨・痍・洟

異民族
 イ・おば  女部 yí
解字 「女(おんな)+夷(異民族⇒姓が異なる)」の会意形声。夫からみて姓が異なる妻または母の姉妹をいう。中国では結婚しても妻は姓を変えない。
意味 (1)妻の姉妹。特に妻の妹をさす。「姨妹イマイ」(妻の妹)(2)おば(姨)。母の姉妹。「姨母イボ」(母の姉妹。おば)「姨捨山おばすてやま」(長野県北部にある山の名前。田毎(たごと)の月や、姨捨て伝説で有名)(3)自分の母と同年配の女性に対する呼称。「阿姨アイ」(おばさん)

形声字
 イ・きず  疒部 yí
解字 「疒(キズのやまい)+夷(イ)」の形声。刃物などでできた傷を痍という。[説文解字]は「傷也(なり)。疒に従い夷イの聲(声)」とする。
意味 きず(痍)。きずつく。刃物などでできた傷。「傷痍ショウイ」(きず・けが)「傷痍軍人ショウイグンジン」「創痍ソウイ」(創も痍も、きずの意。きずを負うこと)「満身創痍マンシンソウイ」(全身が傷だらけで痛手を負っている)
 イ・テイ・はなじる  氵部 yí
解字 「氵(みず)+夷(テイ・イ)」の形声。テイは涕テイ(なみだ)に通じ、洟イ・テイにも同じく、なみだの意味がある。また、涕テイには泣く意もある。一般に泣いて流す涙は量が非常に多い。まぶたの下には目から鼻に通じる鼻涙管ビルイカンがあり、涙の量が多いと目から溢れるとともに、鼻涙管にもたくさん流れ込み、これが鼻水としてそのまま流れ出す。そこで、洟イ・テイは、はなじるの意ともなり、この意味が中心になった。
意味 (1)はなみず。はなじる(洟)。はな(洟)。鼻汁をながす。すすばな。「涕洟テイイ」(なみだと鼻汁)「洟(はな)を啜(すす)る」(鼻水をすする)(2)なみだ。「洟泣テイキュウ」(なみだを流して泣く)

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