(BNN+北海道365 09年11月13日(金) 15時39分)
生息数は増加の一途だが、ハンターの激減で捕獲数は頭打ち。
道内ではエゾシカが牧草、水稲、樹皮などを食い荒らす農林業被害が年間40億円規模に及んでいる。
増える一方のエゾシカとは裏腹に、狩猟を担うハンターは激減、食材利用も広がっておらず、生息数と被害額を減少させるための解決策を見出すには至っていない。
エゾシカは明治初期の乱獲と豪雪で、一時期は絶滅の危機に瀕した。1888年に全道一円での捕獲が禁止され、天敵だったニホノオオカミが絶滅、温暖化などの環境変化から生息数を増やしていった。
道は1998年度に「エゾシカ保護管理計画」を策定、メスの狩猟解禁や捕獲による個体調整を行ってきたが、繁殖力が強いため、すでに道内全域には52万頭以上が生息していると見られている。道では「1年間に少なくとも7万6000頭のメスを捕獲しないと、全体の個体数は減らない」としているが、メスの捕獲数は4万頭前後で推移している。
捕獲数が延びない理由は、ハンターの減少。ピークの78年に2万人だったハンターは、現在5700人まで激減している。さらに高齢化も進んでおり、運搬や解体にも大きな負担を強いられている。
ヨーロッパでは、シカや野ウサギ、マガモなど野生鳥獣の肉は「ジビエ」と呼ばれ、重宝される食材。一方、日本では狩猟後の解体や運搬、流通販路などに課題を残し、エゾシカ肉はごく一部のレストランなどで提供されているに過ぎない。
日高管内の新ひだか町で農林業被害の軽減とエゾシカ肉の安定供給に取り組む「ウタリ共同養鹿加工組合」は、生け捕りにしたエゾシカを肥育後、処理施設で解体、加工した肉を出荷している。
処理施設の建設費のうち3分の2は、アイヌ農林漁家の所得と生活水準の向上を図る目的で施設整備を支援する国の「アイヌ農林漁業対策事業」、20分の1は道のウタリ対策事業の補助を受け、残りを自己資金で賄った。
日高管内の農林業被害は年間約5億円。大川勝組合長(64)は「エゾシカの増加によって拡大する農林業被害を減らすと同時に、肉を加工して販売することで組合員の所得向上につながれば」との思いで、07年、町内の農家10戸で組合を設立した。
組合では囲い罠を用いてエゾシカを捕獲、麦などを食べさせて一定期間肥育し、解体した肉をステーキやジンギスカン、もみじ丼などに加工して販売している。現在の養鹿は約60頭。エゾシカは古来からアイヌ民族の貴重な食材。「シカ肉は脂身が少なくヘルシー、金属探知機にも反応するほど多くの鉄分を含んでいる。中でも日高のエゾシカは牧草の芽を食べることができるため、3月でも脂が乗っている。だが、北海道にはシカ肉を食べる文化がないことが課題」(大川組合長)。
狩猟で捕獲されて流通するエゾシカ肉は、一般にロースとモモ肉以外は捨てられてるケースが多い。加工する部位を増やし、消費を拡大させない限り、「エゾシカ問題」解決の糸口は見出せない。
組合は12月に新たな加工施設を建設し、ハムやソーセージ、ジャーキーなどを新たな商品に加え、エゾシカ肉の利用促進を図る計画だ。(文・東)
http://www.hokkaido-365.com/feature/2009/11/post-483.html
生息数は増加の一途だが、ハンターの激減で捕獲数は頭打ち。
道内ではエゾシカが牧草、水稲、樹皮などを食い荒らす農林業被害が年間40億円規模に及んでいる。
増える一方のエゾシカとは裏腹に、狩猟を担うハンターは激減、食材利用も広がっておらず、生息数と被害額を減少させるための解決策を見出すには至っていない。
エゾシカは明治初期の乱獲と豪雪で、一時期は絶滅の危機に瀕した。1888年に全道一円での捕獲が禁止され、天敵だったニホノオオカミが絶滅、温暖化などの環境変化から生息数を増やしていった。
道は1998年度に「エゾシカ保護管理計画」を策定、メスの狩猟解禁や捕獲による個体調整を行ってきたが、繁殖力が強いため、すでに道内全域には52万頭以上が生息していると見られている。道では「1年間に少なくとも7万6000頭のメスを捕獲しないと、全体の個体数は減らない」としているが、メスの捕獲数は4万頭前後で推移している。
捕獲数が延びない理由は、ハンターの減少。ピークの78年に2万人だったハンターは、現在5700人まで激減している。さらに高齢化も進んでおり、運搬や解体にも大きな負担を強いられている。
ヨーロッパでは、シカや野ウサギ、マガモなど野生鳥獣の肉は「ジビエ」と呼ばれ、重宝される食材。一方、日本では狩猟後の解体や運搬、流通販路などに課題を残し、エゾシカ肉はごく一部のレストランなどで提供されているに過ぎない。
日高管内の新ひだか町で農林業被害の軽減とエゾシカ肉の安定供給に取り組む「ウタリ共同養鹿加工組合」は、生け捕りにしたエゾシカを肥育後、処理施設で解体、加工した肉を出荷している。
処理施設の建設費のうち3分の2は、アイヌ農林漁家の所得と生活水準の向上を図る目的で施設整備を支援する国の「アイヌ農林漁業対策事業」、20分の1は道のウタリ対策事業の補助を受け、残りを自己資金で賄った。
日高管内の農林業被害は年間約5億円。大川勝組合長(64)は「エゾシカの増加によって拡大する農林業被害を減らすと同時に、肉を加工して販売することで組合員の所得向上につながれば」との思いで、07年、町内の農家10戸で組合を設立した。
組合では囲い罠を用いてエゾシカを捕獲、麦などを食べさせて一定期間肥育し、解体した肉をステーキやジンギスカン、もみじ丼などに加工して販売している。現在の養鹿は約60頭。エゾシカは古来からアイヌ民族の貴重な食材。「シカ肉は脂身が少なくヘルシー、金属探知機にも反応するほど多くの鉄分を含んでいる。中でも日高のエゾシカは牧草の芽を食べることができるため、3月でも脂が乗っている。だが、北海道にはシカ肉を食べる文化がないことが課題」(大川組合長)。
狩猟で捕獲されて流通するエゾシカ肉は、一般にロースとモモ肉以外は捨てられてるケースが多い。加工する部位を増やし、消費を拡大させない限り、「エゾシカ問題」解決の糸口は見出せない。
組合は12月に新たな加工施設を建設し、ハムやソーセージ、ジャーキーなどを新たな商品に加え、エゾシカ肉の利用促進を図る計画だ。(文・東)
http://www.hokkaido-365.com/feature/2009/11/post-483.html