日本経済新聞 2016/10/21付 夕刊
東京・渋谷のシアター・イメージ フォーラムで29日公開(C)Ciudad Lunar Producciones
世界最大の河川、アマゾン川は南米大陸のほぼ中央を横断し、その広大な流域はブラジルをはじめ各国に跨がり、今なお未知の大地があるという。そんな知られざるコロンビア・アマゾンを舞台に、20世紀の2つの時代から物語を紡いだコロンビア映画である。
物語の主人公は、先住民族のシャーマンであるカラマカテ(青年期はニルビオ・トーレス、老年期はアントニオ・ボリバル・サルバドール)。侵略した白人に滅ぼされた村で唯一生き残り、ジャングルの中で孤独に生きている。
そんなカラマカテが20世紀初めに出会ったのは、ドイツ人民族学者テオ(ヤン・ベイヴート)。テオはアマゾン探検の途上で病気に罹(かか)ってカラマカテを頼る。白人を嫌うカラマカテは最初断るが、唯一の治療薬である聖なる植物ヤクルナを求めて一緒に旅に出る。
数十年後、孤独な生活を送る老いたカラマカテは、アメリカ人植物学者エヴァン(ブリオン・デイビス)と出会う。エヴァンはヤクルナを探し求めているが、米国政府の依頼で野生のゴムノキの標本採取も行っている。そんなエヴァンとカラマカテは再び旅に出る。
この2人の学者には実在したモデルがいる。映画は2人の手記から得た着想を基に、カラマカテの若き日の過去の旅と老いた現在の旅を交叉(こうさ)させながら、先住民の目からとらえたアマゾンの知られざる歴史を幻想的に浮き彫りにする。
老いたカラマカテがジャングル深くのキリスト教の共同体を再び訪れると、以前と違って先住民族の宇宙観に浸された姿に変わっている。そこには現代文明から遠く離れたアマゾンの大自然が秘める異界の支配力を見るようで面白い。
アマゾンに生きる先住民族の未知の世界を、現実と虚構を混在させながら描き出したのは、コロンビア出身のシーロ・ゲーラ監督。2時間4分。
★★★★
(映画評論家 村山 匡一郎)

世界最大の河川、アマゾン川は南米大陸のほぼ中央を横断し、その広大な流域はブラジルをはじめ各国に跨がり、今なお未知の大地があるという。そんな知られざるコロンビア・アマゾンを舞台に、20世紀の2つの時代から物語を紡いだコロンビア映画である。
物語の主人公は、先住民族のシャーマンであるカラマカテ(青年期はニルビオ・トーレス、老年期はアントニオ・ボリバル・サルバドール)。侵略した白人に滅ぼされた村で唯一生き残り、ジャングルの中で孤独に生きている。
そんなカラマカテが20世紀初めに出会ったのは、ドイツ人民族学者テオ(ヤン・ベイヴート)。テオはアマゾン探検の途上で病気に罹(かか)ってカラマカテを頼る。白人を嫌うカラマカテは最初断るが、唯一の治療薬である聖なる植物ヤクルナを求めて一緒に旅に出る。
数十年後、孤独な生活を送る老いたカラマカテは、アメリカ人植物学者エヴァン(ブリオン・デイビス)と出会う。エヴァンはヤクルナを探し求めているが、米国政府の依頼で野生のゴムノキの標本採取も行っている。そんなエヴァンとカラマカテは再び旅に出る。
この2人の学者には実在したモデルがいる。映画は2人の手記から得た着想を基に、カラマカテの若き日の過去の旅と老いた現在の旅を交叉(こうさ)させながら、先住民の目からとらえたアマゾンの知られざる歴史を幻想的に浮き彫りにする。
老いたカラマカテがジャングル深くのキリスト教の共同体を再び訪れると、以前と違って先住民族の宇宙観に浸された姿に変わっている。そこには現代文明から遠く離れたアマゾンの大自然が秘める異界の支配力を見るようで面白い。
アマゾンに生きる先住民族の未知の世界を、現実と虚構を混在させながら描き出したのは、コロンビア出身のシーロ・ゲーラ監督。2時間4分。
★★★★
(映画評論家 村山 匡一郎)