読売新聞 2018年09月09日 13時24分
国際忍者学会の第2回大会が8日、佐賀県嬉野市の市公会堂で「幕末の忍者」をテーマに開かれた。三重大を始め全国の学者や観光関係者ら約70人が出席。「佐賀戦国研究会」代表の深川直也さんが、「佐賀藩における忍者」と題して基調講演し、最近の研究で発見された“佐賀忍者”について語った。
学会は、全国初の「忍者・忍術学講座」を設けた三重大の主導で、今年2月に発足。従来は学問の対象にならなかった「忍者」を、会員たちが実像と虚像(フィクション)両面から多角的に研究している。設立総会は伊賀市で開かれ、今回は忍者を通じてまちおこしに取り組む嬉野市が、会場に選ばれた。
深川さんは6年前に研究会を創設。昨年、山田雄司・三重大教授らとの共同研究で、佐賀に残る忍者の“足跡”を発見した。講演では、武将・空閑くが光家が筑前・安楽平あらひら城攻めで忍びの者を使ったことや、佐賀藩祖・鍋島直茂が忍びを運用した事例を紹介した。
また、嬉野に住んで忍法を極めた山伏・弁慶夢想や、佐賀藩の支藩・蓮池藩の「細作さいさく」(忍者)として働いた田原良重、長崎に来航した外国船を2度も情報探索した幕末の蓮池藩士・古賀源太夫らを紹介。「佐賀だけでなく、全国各地に忍者の記録が残っているはず。学会を挙げて忍者の“足跡”を探そう」と呼びかけた。
この後、三重大准教授の吉丸雄哉さんは、紙とペン、サイコロを使って遊ぶ海外のロールプレイングゲーム(RPG)で、忍者がどう扱われているかを解説。「魔法的なものは少なく、物理的に説明できるリアルな忍術で表現されている」とした。
ほかに、清川繁人・青森大教授は「早道之者はやみちのもの」と呼ばれた弘前藩の忍者について、主に蝦夷地えぞち(北海道)のアイヌに対する監視や情報収集に当たったとし、「江戸時代から幕末まで約200年間働いた。弘前市内で忍者屋敷も忍術書も見つかった」と説明した。
熊本県合志市でマンガミュージアムを営む橋本博さんは、大柿ロクロウ著「シノビノ」(小学館)について、「消えゆく忍者の一人・澤村甚三郎をヒーローに、坂本龍馬をテロリストとして描いた斬新な試み」と紹介。「幕末の忍者を扱った作品は珍しく、この“実験”が成功するか、ラストシーンに注目したい」と述べた。
大阪大大学院2年、稲本紀佳さんは、忍者の一般的なイメージとして定着した「黒装束」について考察。「歌舞伎で黒装束を着た忍者が登場する演目がいくつもあり、次第に定着した」と主張した。(山本哲生)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20180909-OYT1T50019.html
国際忍者学会の第2回大会が8日、佐賀県嬉野市の市公会堂で「幕末の忍者」をテーマに開かれた。三重大を始め全国の学者や観光関係者ら約70人が出席。「佐賀戦国研究会」代表の深川直也さんが、「佐賀藩における忍者」と題して基調講演し、最近の研究で発見された“佐賀忍者”について語った。
学会は、全国初の「忍者・忍術学講座」を設けた三重大の主導で、今年2月に発足。従来は学問の対象にならなかった「忍者」を、会員たちが実像と虚像(フィクション)両面から多角的に研究している。設立総会は伊賀市で開かれ、今回は忍者を通じてまちおこしに取り組む嬉野市が、会場に選ばれた。
深川さんは6年前に研究会を創設。昨年、山田雄司・三重大教授らとの共同研究で、佐賀に残る忍者の“足跡”を発見した。講演では、武将・空閑くが光家が筑前・安楽平あらひら城攻めで忍びの者を使ったことや、佐賀藩祖・鍋島直茂が忍びを運用した事例を紹介した。
また、嬉野に住んで忍法を極めた山伏・弁慶夢想や、佐賀藩の支藩・蓮池藩の「細作さいさく」(忍者)として働いた田原良重、長崎に来航した外国船を2度も情報探索した幕末の蓮池藩士・古賀源太夫らを紹介。「佐賀だけでなく、全国各地に忍者の記録が残っているはず。学会を挙げて忍者の“足跡”を探そう」と呼びかけた。
この後、三重大准教授の吉丸雄哉さんは、紙とペン、サイコロを使って遊ぶ海外のロールプレイングゲーム(RPG)で、忍者がどう扱われているかを解説。「魔法的なものは少なく、物理的に説明できるリアルな忍術で表現されている」とした。
ほかに、清川繁人・青森大教授は「早道之者はやみちのもの」と呼ばれた弘前藩の忍者について、主に蝦夷地えぞち(北海道)のアイヌに対する監視や情報収集に当たったとし、「江戸時代から幕末まで約200年間働いた。弘前市内で忍者屋敷も忍術書も見つかった」と説明した。
熊本県合志市でマンガミュージアムを営む橋本博さんは、大柿ロクロウ著「シノビノ」(小学館)について、「消えゆく忍者の一人・澤村甚三郎をヒーローに、坂本龍馬をテロリストとして描いた斬新な試み」と紹介。「幕末の忍者を扱った作品は珍しく、この“実験”が成功するか、ラストシーンに注目したい」と述べた。
大阪大大学院2年、稲本紀佳さんは、忍者の一般的なイメージとして定着した「黒装束」について考察。「歌舞伎で黒装束を着た忍者が登場する演目がいくつもあり、次第に定着した」と主張した。(山本哲生)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20180909-OYT1T50019.html