北海道新聞 07/14 05:00
胆振管内白老町にある国のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が開業から1年を迎えた。
来場者数は約25万人と目標の4分の1だったが、コロナ禍を考えれば健闘したといえよう。
ただ、ウポポイについては「差別の歴史が十分に展示されていない」「観光に重点が置かれ過ぎている」などの意見もある。
こうした中、3月に日本テレビは情報番組でアイヌ民族に差別的な表現を放送した。また、インターネット上ではウポポイ職員に対する誹謗(ひぼう)中傷が続いた。
これらの背景には、明治以降の国の同化政策など負の歴史と先住民族への認識不足がある。
だからこそ正しい情報を発信し、アイヌ民族への理解を深める上でウポポイの役割は大きい。
国はアイヌ文化を学ぶ拠点として一層の充実を図るべきだ。
内閣府が昨年行った調査では9割以上がアイヌ民族を先住民族だと「知っている」と答えた。
一方で、明治以来の国の政策が厳しい生活を強いた歴史を理解している人は5割以下だった。
知ってはいても、認識が深まっていない状況だ。
修学旅行などで多くの小中高生がウポポイを訪れている。アイヌ民族の文化や世界観を学ぶには普段から教育現場での取り組みが欠かせない。教員対象の研修プログラムも重ねて進めてほしい。
ウポポイには道内各地からアイヌ民族の若者が集まり、働いている。将来を担う人材を育て地域へ還元する視点も持ちたい。
道内には他にもアイヌ文化などに関する博物館がある。互いに連携し、各地域の多様な文化を発信していくことも重要だろう。
ウポポイの「慰霊施設」には全国の大学で保管されていたアイヌ民族の遺骨が集約された。出土地域への返還を求める声も強く、国は積極的に解決を図るべきだ。
アイヌ民族を法律で初めて先住民族と位置づけ、差別を禁じたアイヌ施策推進法(アイヌ新法)の施行から2年がたった。
だが、アイヌ民族への差別的な言動は後をたたない。
議論すべき課題は多いが、政府はこの6月まで「アイヌ政策推進会議」を2年半も開いていなかった。アイヌ民族の出席者から国の真剣さを問う声が上がったのは当然である。
国にはアイヌ政策を担う責任をしっかりと自覚し、前進させていくことが求められる。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/566753
胆振管内白老町にある国のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が開業から1年を迎えた。
来場者数は約25万人と目標の4分の1だったが、コロナ禍を考えれば健闘したといえよう。
ただ、ウポポイについては「差別の歴史が十分に展示されていない」「観光に重点が置かれ過ぎている」などの意見もある。
こうした中、3月に日本テレビは情報番組でアイヌ民族に差別的な表現を放送した。また、インターネット上ではウポポイ職員に対する誹謗(ひぼう)中傷が続いた。
これらの背景には、明治以降の国の同化政策など負の歴史と先住民族への認識不足がある。
だからこそ正しい情報を発信し、アイヌ民族への理解を深める上でウポポイの役割は大きい。
国はアイヌ文化を学ぶ拠点として一層の充実を図るべきだ。
内閣府が昨年行った調査では9割以上がアイヌ民族を先住民族だと「知っている」と答えた。
一方で、明治以来の国の政策が厳しい生活を強いた歴史を理解している人は5割以下だった。
知ってはいても、認識が深まっていない状況だ。
修学旅行などで多くの小中高生がウポポイを訪れている。アイヌ民族の文化や世界観を学ぶには普段から教育現場での取り組みが欠かせない。教員対象の研修プログラムも重ねて進めてほしい。
ウポポイには道内各地からアイヌ民族の若者が集まり、働いている。将来を担う人材を育て地域へ還元する視点も持ちたい。
道内には他にもアイヌ文化などに関する博物館がある。互いに連携し、各地域の多様な文化を発信していくことも重要だろう。
ウポポイの「慰霊施設」には全国の大学で保管されていたアイヌ民族の遺骨が集約された。出土地域への返還を求める声も強く、国は積極的に解決を図るべきだ。
アイヌ民族を法律で初めて先住民族と位置づけ、差別を禁じたアイヌ施策推進法(アイヌ新法)の施行から2年がたった。
だが、アイヌ民族への差別的な言動は後をたたない。
議論すべき課題は多いが、政府はこの6月まで「アイヌ政策推進会議」を2年半も開いていなかった。アイヌ民族の出席者から国の真剣さを問う声が上がったのは当然である。
国にはアイヌ政策を担う責任をしっかりと自覚し、前進させていくことが求められる。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/566753